Last Smile

神坂ろん

文字の大きさ
上 下
180 / 196
第4章:ふたりの想い、消えゆく笑顔

178話

しおりを挟む


「なんだ…とッ」

「でも、貴方は私を好きになって下さるどころか、興味すら持って下さることはなかった。当時の私の辛くて悲しい気持ち、貴方に分かりますか?…分かりませんよね?私を好きになることはないと分かっていて、あんな条件を提示してきた貴方には」


(こいつ…)


「……」


「だから決めたの。私を好きになって下さらないのなら、強制的に好きにさせれば……私のモノにさせればいいのだと」


恐ろしい笑みを浮かべる七瀬に全身の鳥肌が立った。


「なん…だと…ッ?」


うっとりとした表情をした七瀬がゆっくりと近づいてくる。


(チッ…!)

(まさか七瀬がこんな手を使ってくるとは思わなかった)

(症状を見て推測すると、恐らく食べ物か飲み物に何かを盛られている)

(今回の仕事がきな臭いことは最初から気付いていた。何か仕掛けてくるだろうとは考えてはいたが、仕掛けてくる相手がまさか七瀬本人だとは…)



(油断した。こいつがここまで動くとは…ッ)



『社長、充分にお気を付けください』




地下牢へ呼び出された時のゼロの言葉が頭を過る。


(あいつらの予感は見事的中と言うわけか)

(ゼロが朋也から聞いた言葉の意味…もしかして最初から朋也はこうなることを分かっていた?)

(だからあえて隠さずにゼロに言ったという訳か?)

(もし七瀬のこの依頼に朋也が絡んでいるとすれば…。予め七瀬に計画の内容を共有し、あいつら2人がグルになってこの計画を実行していたとしたら…)


百合亜を亡くした今、朋也が今一番手に入れたいのは湊だ。
だが、湊の傍には常に龍司がいる。
龍司のことを良く知っている朋也なら、龍司が傍に付いている湊を簡単に手に入れることはできないと分かっているはず。
朋也が自ら動くにしても、龍司の周りには常にアキ達が付いているから下手に動くことは出来ないし、何よりも朋也は今地下牢に収容され、ゼロという逃れられない監視の目がある。


(そこで、俺を湊から遠ざけるために浮かんできた人物が七瀬と言った所か?)



(朋也は、七瀬が俺の事を好いていることを知っているはずだ。自分は湊を手に入れるため、七瀬は俺を手に入れるため…あの二人にとって、これは云わば二人の目標を達成するために訪れたチャンスと言っても過言ではない)

(朋也は、俺のことを諦められない七瀬の心を利用したということか…つくづく腐った考えしか出来ない奴だ)


「ふふっ。なにを考えてるのかしら?…私が龍司様の考えてることを当てましょうか?そうですね…私がここまでするとは思わなかった。お兄様と予め計画をたてていたのか…こんな所でしょうか」


「……」


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

【完結】俺はずっと、おまえのお嫁さんになりたかったんだ。

ペガサスサクラ
BL
※あらすじ、後半の内容にやや二章のネタバレを含みます。 幼なじみの悠也に、恋心を抱くことに罪悪感を持ち続ける楓。 逃げるように東京の大学に行き、田舎故郷に二度と帰るつもりもなかったが、大学三年の夏休みに母親からの電話をきっかけに帰省することになる。 見慣れた駅のホームには、悠也が待っていた。あの頃と変わらない無邪気な笑顔のままー。 何年もずっと連絡をとらずにいた自分を笑って許す悠也に、楓は戸惑いながらも、そばにいたい、という気持ちを抑えられず一緒に過ごすようになる。もう少し今だけ、この夏が終わったら今度こそ悠也のもとを去るのだと言い聞かせながら。 しかしある夜、悠也が、「ずっと親友だ」と自分に無邪気に伝えてくることに耐えきれなくなった楓は…。 お互いを大切に思いながらも、「すき」の色が違うこととうまく向き合えない、不器用な少年二人の物語。 主人公楓目線の、片思いBL。 プラトニックラブ。 いいね、感想大変励みになっています!読んでくださって本当にありがとうございます。 2024.11.27 無事本編完結しました。感謝。 最終章投稿後、第四章 3.5話を追記しています。 (この回は箸休めのようなものなので、読まなくても次の章に差し支えはないです。) 番外編は、2人の高校時代のお話。

秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~

めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆ ―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。― モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。 だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。 そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

カテーテルの使い方

真城詩
BL
短編読みきりです。

指導係は捕食者でした

でみず
BL
新入社員の氷鷹(ひだか)は、強面で寡黙な先輩・獅堂(しどう)のもとで研修を受けることになり、毎日緊張しながら業務をこなしていた。厳しい指導に怯えながらも、彼の的確なアドバイスに助けられ、少しずつ成長を実感していく。しかしある日、退社後に突然食事に誘われ、予想もしなかった告白を受ける。動揺しながらも彼との時間を重ねるうちに、氷鷹は獅堂の不器用な優しさに触れ、次第に恐怖とは異なる感情を抱くようになる。やがて二人の関係は、秘密のキスと触れ合いを交わすものへと変化していく。冷徹な猛獣のような男に捕らえられ、臆病な草食動物のように縮こまっていた氷鷹は、やがてその腕の中で溶かされるのだった――。

処理中です...