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第4章:ふたりの想い、消えゆく笑顔
168話
しおりを挟む「分かっている」
重みがあるアキの言葉に、ルカが唇を噛みしめた。
「セリ。龍司様に肌身離さず持っていただくように言っていた、専用発信機での観察は頼んだ」
ゼロが真剣な眼差しをセリに向ければ、深海のような美しい青色の瞳を瞬かせ、ふわりと微笑んだ。
「誰に言っているの?そんなことは分かっているわ。じゃあ、私はそろそろ仕事に戻るわね。今日はいつも以上にやる事があるから」
セリはゼロを一瞥すると、エレベーターの方向へと歩き出す。
「ゼロ、ルカ。私達も仕事に戻りますよ?こんな所でいつまでも油を売っている暇はないんです。今日は特に――」
「わーってるよ。そんなことは」
「分かってる…」
セリに続くように3人もエレベーターへと歩き始めた。
すでにエレベーターに乗り込んだセリは、扉を閉じようとした所でアキが歩いてくるのが視界に入ってきて、エレベーターが閉じないように【開】ボタンを押したまま待っていた。
エレベーターへ向かいながら、ルカはふと湊の表情を思い出していた。
湊様と初めてお会いした時に、部屋で話した時とは表情が全く違った様に感じた…。
湊様のことを知らない人が見れば、もしかしたら変化に気付かない人もいただろう。
でも…
なんだろう。
身に纏っている雰囲気とでも言うのだろうか?
なにかを隠しているような…言いたいことがあるけど言えない…そんな表情をされていた。
そして、一番印象に残っていたのは
「声が泣いていた…」
さっきゼロが言っていた”湊様が泣いてる”という言葉は、涙を流して泣いてるという事ではなく、恐らく俺が思っていることと同じ”声が泣いていた”という意味だと思う。
ゼロや俺、そしてセリやアキも、仕事柄人の感情の変化、表情の変化や相手が身に纏っている雰囲気の変化はすぐに分かってしまう。
それは、龍司様の所に来る前、孤児院にいる時からだったが、龍司様の所に来てから更に敏感になったように感じる。
「おい、ルカ。なにやってんだよ。置いてくぞ?」
最後にエレベーターに乗り込んだゼロが、開いたままの扉を押さえながらルカへと声をかけて来た。
「あ、あぁ!今行く…!」
――少しだけ様子を見るか…
ルカは急ぎ足でエレベーターへと乗り込んだ。
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