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第4章:ふたりの想い、消えゆく笑顔
164話
しおりを挟む「申し訳ありません湊様。仕事が終わり次第、すぐに湊様の所へ行くと龍司様が仰ってましたわ。だからどうか、仕事が終わるまでお待ちいただけませんか?」
「セリさん…。いえいえ!龍司もみんなも忙しいのに無理言ってすみません!大丈夫です。龍司の仕事に比べたら―――大した用じゃないですから」
ぶんぶんと音が鳴りそうなほど横に首を横に振った湊が、辛そうな表情で言った。
「湊様…?」
湊の様子に違和感を感じたセリが、不思議そうに湊の顔を覗き込む。
しかし、すぐにいつものような笑顔に戻った。
そして、ここでようやくルカとセリ以外に見慣れない人達がいる事に気付く。
「セリさん、ルカ…この人達は?」
「あら?ルカか龍司様にゼロとアキの紹介をしてもらっていなかったのですか?」
「はい…。すみません…」
なにも悪いことはしていないのに、なんだか知らないことが申し訳ない気がして謝ってしまった。
セリが困ったように笑う。
「なぜ、湊様が謝るのですか?あなたが謝ることなどなにもございません。社長もお忙しい方ですし、きっと紹介する事を忘れてしまっていたのでしょう。例の事がありましたので、湊様の体調が何よりも最優先でしたから。紹介などいつでもできます、どうか謝らないでくださいませ…」
「そうです。湊様が謝る必要など何ひとつございません!湊様、紹介が遅くなって申し訳ありませんが、二人を紹介させていただいてもよろしいですか?」
セリの言葉に頷いたルカが申し訳なさそうに言った。
「うん」
「ゼロ、アキ。湊様に紹介するからこっちに来てくれるか?」
ルカが2人に声をかけると、状況を察した2人が湊の前の前まで近づき跪いた。
最初に出会った時にセリとルカがしていた行動と同じで困惑してしまう。
跪かれる経験なんてそうあることではないため、何度されても慣れない。
「湊様、改めて紹介させていただきます。―――ゼロ、アキ…頼む。」
ルカが跪いたままの2人に声を掛ければ、2人は下げていた頭をより深く下げる。
「湊様、初めまして。社長の秘書をしておりますA01ことアキと申します。お気軽にアキ、とお呼びくださいませ。私の業務内容としては、基本的に社長の秘書として社長をサポートしつつ、社長をお守りしておりますので、今後会う機会が増えるかと存じます。改めまして、よろしくお願いいたします」
綺麗な顔をしたアキが湊を見上げると、アキは優しく微笑んだ。
「あ…は、はい!初めまして!月嶋湊って言います!」
アキの綺麗な笑顔に、思わず顔が赤くなってしまう。
中性的なのに女性らしさを感じないアキを、純粋に美人だと思ってしまった。
そんな赤くなった顔を隠すため、湊はドキドキしながらも頭を下げた。
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