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第4章:ふたりの想い、消えゆく笑顔
157話
しおりを挟むしかし、考えれば考えるほど七瀬に対して浮かんでくる感情は怪しさだけだ。
七瀬の笑顔には、どこか朋也と似た所がある…以前からなんとなく感じてはいた。
だから七瀬の笑顔は好きじゃない。
もしかして、七瀬さんは何か良からぬことを企んでいるんじゃ…?
「アキ!」
「ッ!!は、はいっ!申し訳ありません!少し…考え事をしていました…」
龍司の声にハッとして顔を上げる。
顔をあげた瞬間に龍司の鋭い瞳と目が合って、慌てて頭を下げた。
「別に構わないが…なにを考えていた?俺との会話中に考え事なんて珍しい」
「…いえ…」
これはあくまでも私の勝手な推測。
七瀬さんが龍司様になにかをするなどと…龍司様との会話中に私はなんて物騒なことを考えているんだ。
そんなこと、絶対に出来る訳がないのに。
「―なんでもございません…」
「……そうか」
なにか言いたそうな表情でアキを見ながら、龍司が答える。
「なんでもないなら構わない。…じゃあ俺は、一度マンションに必要なものを取りに行く。いろいろやることがあるから、今日から明日の仕事が終わるまで湊の所には行けそうにない。湊には、仕事が忙しくて湊の所に行けるのは明日以降になると言っておいてくれ。…くれぐれも湊にこの事は言わないように。――頼むぞ、アキ」
「はい…かしこまりました」
すれ違いざまに肩を叩かれ反射的に頭を下げる。
ふわりと香ってきたムスクの匂いに、大人の男を感じる。
それと同時に言い知れぬ不安が込みあげてきた。
龍司に限って、最悪な事などある訳がない…そう信じたいのに、不安は払拭されない。
扉が閉まる音が聞こえて、下げていた頭をあげる。
龍司の後ろ姿が残像の様に扉に映る。
「龍司様…」
胸元に添えられた手は不安を隠しきれないようにアキは衣服を握りしめた。
「どうか…どうかご無事で―――」
後々、まさかこの時の不安が的中することになるとは思わなかった。
アキも、龍司本人も。
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