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第4章:ふたりの想い、消えゆく笑顔
149話
しおりを挟む「――なるほど。全てはあいつの計画通りだったって事か。ゼロは地下牢を離れられない。これまでの経緯を含めて、湊を危険から守るために護衛の仕事をメインとしてるルカが湊の護衛に付き、本来護衛の仕事をするはずのルカの代わりに急遽明日に入った護衛の仕事でアキを付かせる…。セリはもちろん医療研究室から離れる事は出来ない…そうすれば必然的に俺の側近は誰一人いなくなるからな。狙いやすいという訳だ」
「――恐らく、今回トモヤが狙っているのはそこかと」
「そんなっ…!」
顔面蒼白になったルカが龍司を心配そうに見つめて声を漏らした。
そんなルカの反応に龍司は口端をあげて小さく笑みを浮かべる。
「心配するな。…まだ確信を得ている話じゃない…。あくまで憶測の話だ」
「…ですが、社長の周りの人間を遠ざけているのは今の段階ですでに分かります!今、社長が仰った憶測の話が真実でもそうじゃなくても――…社長、充分にお気を付けください!」
「あぁ、分かっている」
「社長!やっぱり自分が社長をお守り致します!!」
「お前は湊の護衛があるだろう?俺の事は気にするな。そんなに弱くはないつもりだ。ルカ、お前が湊ではなく俺に付けば今度は湊の身に危険が及ぶだろう…湊に危険が及ぶくらいなら俺が引き受ける。…どっちにしろ、朋也の計画通りなのは変わりない」
「しかし…っ!!」
悔しそうなルカの声が静寂の部屋へと落とされた。やりきれない感情をどこにもぶつけられず、拳を強く握りしめた。
やっぱり昔から、朋也という人間は好きになれない。
今までは笑顔の気味悪さや、不快感…それが朋也に対する感情だった。
しかし、次第に変わりつつあった。
沸々と湧き上がってくるこの感情はなんだろう…握ったままの拳に視線を落としたまま唇を噛みしめた。
「俺達も出来るだけ社長に付くようにし、お守りします。ですが、何かあったらすぐにご連絡ください―――龍司様」
ゼロは、その深紅の瞳に龍司の姿を映しながら、心配そうな表情を向けたまま告げた。
ゼロとて龍司を心配する気持ちは変わらない。
ルカと同じくらいに龍司の事が心配なのだ。
ゼロ達にとって龍司という人間は、ただの恩人では済まされない程大切な存在で、龍司の為であれば自分の命を捧げる―――その覚悟は龍司に救われた時に4人みんな揃って誓った事だった。
しかし、そんな大切な存在である龍司が更に大切にしている存在が湊なのだ。
龍司を守り、湊を危険に晒す事などできる訳がないし、しようとも思わない。
本当ならば、2人同時に守りたい…それがゼロの心の中に隠していた本音だった。だけど、それぞれ与えられた役目と言うのがある。
今は、与えられた自分の仕事をやるしかなかった。
「分かった」
不安げな声色で言ったゼロの言葉が、やけに重く感じたのは気のせいだろう。
胸の中で渦巻くような“なにか”に気づかないふりをして龍司は静かに返事をした。
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