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第4章:ふたりの想い、消えゆく笑顔
148話
しおりを挟む『朋也がなにか考えていると言ったな?どういう事だ?』
最奥にある見慣れたゼロの部屋に入ると、応接スペースのソファへ腰を下ろす。
龍司が座ったのを確認してから、ルカが龍司と対面になる形で向かいのソファーへ座った。
「はい。実はさっきトモヤから呼び出しコールが来たんです。あいつは、他の囚人達と違って決められた時間の食事や、風呂に合わせてトイレに行くことが多かったので、呼び出し自体これまで一度もありませんでした」
「…。」
「初めての呼び出しだったからか、朋也の性格をよく知っているからかは分かりませんが、すぐに嫌な予感がしました」
ゼロの言葉に耳を傾け話を聞く龍司の横では、立ったまま話を聞いていたルカがゼロの隣へ腰を下ろした。
「忠告をしようと思って呼び出した――…あいつはそう俺に言ってきました。そして――」
『俺を大事な湊から離した事…ここに閉じ込めた事、君たちはきっと後悔する事になるよ。君たちは、俺が湊や社長に何かすると思っているからここに閉じ込めたんだろうけど……社長や湊を狙うのは、なにも俺だけじゃないって事だ。精々頑張ってお守りする事だね。湊もそうだけど…君らが忠誠を誓う“龍司様”にも…ね』
「そう続けて言ってきたんです」
「それ…どういう事?」
ゼロの言葉に目を見開いたルカが詰め寄るも、顔色を変えずにゼロは首を横に振った。
「あいつの言葉の意味なんて俺が知る訳ねぇだろ。だから社長に報告してんだよ。」
「まぁ、それはそうだけど…」
胸の前で腕を組んだままの龍司が、考えるような仕草をするように顎に手を添える。
そこで、1つの考えが思い浮かんできた。
「――別の人間が俺を狙ってくる…ということか」
独り言のように呟かれた言葉に、ゼロとルカが同時に龍司の方を振り向いた。
「社長!まだそうと決まったわけじゃっ…」
龍司に向けて投げかけた言葉は、目の前に差し出されたゼロの手によって遮られた。
「――ルカ、お前だってトモヤの性格は知ってんだろ。あいつは昔から何を考え付くか分からない奴だ…。あり得ない話じゃない。それに、わざわざそんな事を俺に言う必要はあるか?もし本当ならあいつにとって不利な事しかない。――だが…例えばだが、俺やルカ、みんなが社長や湊様に付けば、地下牢の監視は手薄になる。そうなるとどうなると思う――?」
ゼロの深紅の瞳がゆっくりとルカへ向けられ、大きなエメラルドグリーンの瞳が開かれる。
「…逃げやすくなる…。」
こくり、とゼロが頷き龍司に再び向き直った。
「…まぁ、地下牢はそう簡単に逃げ出せるような場所ではないですが。もし外部の人間と連絡を取り合い、その人間が外から全てのロックを解除すれば逃げられない訳ではないです。――とは言っても、機械に精通したプロの人間じゃなければ解除はまず不可能ですが」
「……。」
黙ったままゼロの話を聞いていた龍司が、大きなため息をつくとジャケットの胸ポケットから煙草を取り出し咥えて火をつけた。
ゼロがすかさず龍司の前に灰皿を置く。
静かに吐き出された白煙が天井へ向かって上がっていった。
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