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第4章:ふたりの想い、消えゆく笑顔
143話
しおりを挟む「――すみません。久堂龍司様の紹介で来させていただきました。ご挨拶したいので開けて頂いてもよろしいでしょうか?」
――龍司の紹介…?
あ!もしかして、オムライスを作ってくれたシェフの人かな?
時間を見つけて紹介してくれるって言っていたし!
あれ…?
でも、さっきの龍司の話だと、出かけるとか言ってなかったっけ…?
…まぁいいや!
「あ、はい!わざわざすみませ――…!?」
この医務室に入る時は、顔認証センサーによってクリアしなければ入る事は出来ない。
今現在で、顔認証をクリアする事が出来るのは、龍司とセリやルカなど龍司が絶対的な信頼をおいている人達だけ。
しかし、登録をしてない人間が部屋に入る場合は、中からのロック解除で入れることが出来るのだ。
ちなみに、中から開ける方法は『指紋認証』のみ。
湊の指紋は、龍司がいつの間にかとっていたみたいで、部屋を出る前に思い出したように言ってきた。
ドアノブのすぐ横にあるセンサーの所に人差し指をかざすと、ガチャンと鍵の解除音が聞こえた。
扉を開け、立っていた女性を見て驚く。
艶やかな黒のロングストレートと、黒色のつり目がちな大きな瞳。
色白の綺麗な女性が、そこには立っていた。
この人は、本当に龍司から紹介を受けた人のだろうか?
そんな疑問を思ってしまった。
だって
目の前に立っている女性は、扉越しに聞いた優しい声とは裏腹に、
今にも人を殺してしまいそうなほどの形相で湊を睨んでいたのだから。
えっ…
なんで俺、睨まれているの…?
一度も会った事も無ければ、話した事もない初対面の人に睨まれるような事をした覚えも当然ない。
あまりの冷たくて恐ろしい表情に、彼女から目を逸らす事が出来なかった。
「――…貴方が、月嶋湊?」
女性は湊を上から下まで、何度も見ながら気が強そうな黒目を向けると、刺々しい物言いで聞いて来た。
「えっ…あ、はいっ…」
赤の肩出しのワンピースに、真っ白のコートを羽織った女性は、まるで日本人形の様に美しく、これまで会った事のない雰囲気を醸し出してる人だと思った。
人を見下したような視線から逃げたくて、問いかけに返事をすると視線を逸らした。
そんな態度が気に入らなかったのか、先程よりも視線が痛く感じるのは気のせいではないと思う。
視線を逸らしても感じる痛いほどの視線に、湊はおずおずと顔をあげる。
だが、今度は甘くとろけるような笑みを浮かべていた。
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