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第4章:ふたりの想い、消えゆく笑顔
141話
しおりを挟む「―――なに?…お前、なにを考えている?――龍司様になにかしてみろ…その時はお前を殺してやる。お前なんか殺すのはいとも簡単な事だ。その気になれば今すぐにでも殺せる事はお前が一番知っているはずだぜ―――…トモヤ。」
「ふふ、知っているよ。俺なんかよりも、君らの戦闘能力は数十倍上だからね。」
「――だったらッ…!!」
「俺がなにかするなんて一言も言ってないけど?……俺は気を付けたほうが良いよって忠告しただけだ。――そう、ただの忠告を、ね…」
笑みを浮かべたままの朋也を、ゼロはその深紅の瞳で睨んだ。
なぜ、今この状況で笑顔を作れるのかが全く理解できない。
面白い事なんてなにもないし、話してもいない。
笑顔というのは人を温かい気持ちにさせてくれて、嬉しい時、幸せな時に表現する表情の1つだ。
なのに、なぜ朋也の笑顔はこんなにも人を嫌な気持ちにさせるのだろう。
不愉快な笑顔から視線を逸らせば、ゼロは再び入り口のパネルの画面へ手を伸ばした。
「トモヤ、1つだけ言っておく。…湊様も龍司様も、絶対に傷つけさせない。俺達が守る。俺達を…社長をあまり甘く見ないほうが良いぜ?気を付けた方がいいのはお前の方だ、月嶋朋也。」
「――――。」
朋也の顔から笑顔が消えた。
無表情のまま、薄暗い牢屋の中からゼロを見つめたまま、朋也は何も話そうとしない。
ゼロがcloseの文字をタップする。
一瞬で特殊パネルが透明から真っ黒に変化し、朋也の姿が目の前から消えた。
「――チッ!…あいつの姿を見る度に反吐が出る!」
Closeボタンをタッチしたままだった手を離せば、その拳を握り歯を食いしばった。
朋也の気味が悪い笑顔が、脳裏に焼き付いて離れない。
孤児院で初めて朋也と会った時から、どうもあの胡散臭い笑顔が好きになれないのだ。
他の人の笑顔と全く違う。
違和感しかないその表情を好きになる事は、成長した今でも変わらずできなかった。
「…それにしてもあいつの言う“忠告”ってどういう意味だ…?わざと俺や社長を惑わすためについた嘘?―――いや、だとしたらなんの為に…」
ゼロは黒くなった特殊パネルを一瞥すると、仕事部屋へと足を進めながら、ふと朋也の言葉を思い出した。
昔から朋也の頭の中は、誰も予想が出来ない事を考え付く事が多い。
全く関係のない赤の他人を拉致し、監禁するほどのキチガイだ。
今言った言葉が嘘なのであれば、なんの為につくのだろうか。
朋也にはなんのメリットも無いはずだし、煽るような事を言った所で地下牢から出してもらえるとでも思っているのか。
そう思っているのだとすれば、昔よりも頭のねじが1本どころか5・6本はとれてる事になる。
――やっぱりあいつは、昔から何も変わっちゃいねぇな…。ここまで来ると哀れだよ、本当に。
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