Last Smile

第4章：ふたりの想い、消えゆく笑顔

140話

もしかして、また何かを企んでるんじゃ…？そんな考えがどうしても浮かんできてしまう。
昔から朋也の事を知っているからこそ思ってしまう事だった。
ゼロは、武器である日本刀とショットガンを装備すると、朋也の元へと向かった。


薄暗い廊下を進んでいくと、呼び出しのコールと呼応して点滅するライトが見えてくる。
点滅している所が、朋也が収容されている牢屋になる。

入り口に設置されたパネルを弄れば、慣れた手つきで暗証番号を入力していく。
すると、廊下と部屋を隔てていた真っ黒の特殊パネルが透明に変化し、中にいる朋也の姿が見えるようになった。

部屋の前のゼロに気づいた朋也がゆっくりと顔をあげれば、鉛《なまり》と足を繋ぐ鎖が音を立てる。
特殊加工パネルが透明に変化する事で、中の遮断されていた音が聞こえるようになった。


「…お前が呼び出しとは珍しいな…。何を考えてる―――T01」


「酷いね。呼び出しだけでその言われようって…。今まで1回も呼んだ事はなかったのに。それに、今ここに君が居られるのは、俺のおかげだって事…分かっているのかな？」

「お前ッ…！…今の自分の状況が分かっているのか？」

相変わらず何を考えているのか…感情の全く読めない朋也の表情がゼロに向けられた。
朋也ほど気味が悪く、人を不快にさせる笑顔などこの世にあるのか。
ゼロが不快そうに顔を歪めると、パネルの向こう側で座ったまま微動だにしない朋也を睨みつける。

「分かっているよZ2…いや、――零《れい》。」

「ッ！！お前がその名前で呼ぶな！…俺を呼び出しておいて、聞きたくもない昔話でもする気か！？俺はお前と違って暇じゃねぇんだ…無駄な事で呼び出すんじぇねぇよ殺人鬼が」

嫌悪感を前面に出したゼロが朋也を一瞥すると、吐き出すように悪態づき、再びパネルを操作する。
パネル画面に手が触れると、画面に映し出されたのは「close」と言う文字だ。

このボタンを押す事で、特殊加工されたパネルは再度見えない様に真っ暗になるという構造になっているのだ。


「…一応忠告でもしておこうかと思って呼び出したんだよ、ゼロ。」


朋也の言葉にゼロの動きが止まり、朋也に視線を向ける。

「忠告、だぁ…？―――どういう意味だ」

「俺を大事な湊から離した事…ここに閉じ込めた事、君たちはきっと後悔する事になるよ。君たちは、俺が湊や社長に何かすると思ってるからここに閉じ込めたんだろうけど……社長や湊を狙うのは、なにも俺だけじゃないって事だ。精々頑張ってお守りする事だね。湊もそうだけど…君らが忠誠を誓う“龍司様”にも…ね。」



そう言うと朋也がにっこりと不敵な笑みを浮かべた。