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第4章:ふたりの想い、消えゆく笑顔
135話
しおりを挟む「見つけた時は酷く衰弱していて、頭から足の先まで全身が痣だらけ…顔は原形が分からなくなるほど腫れ上がっている状態だった…。全身の痣が元の状態に近い通常の状態に戻るまで2年。そして、腫れていて原形が分かりづらくなっていた顔も治療に3年かかった。そしてその受けていた暴力の後遺症から、話すことはできるが耳は聞こえなくなった。幼少期の体験から、対人恐怖症とパニック障害、不安障害を発症してしまい、完全に人間と言う存在から心を閉ざしていた。誰が優しく話しかけても怯え、俺達に近づくことも、話すこともしなかったが時間をかけて治療を続けた結果、漸く心を開いてくれた。…そして、死ぬ事しか考えていなかった自分を救ってくれ、生きたいと思うまでに変わらせてくれた恩人だからと…彼女は自ら手伝いをさせてくれと申し出て来たんだ」
「そうだったんだ…」
龍司の話に涙が零れてきた。
話を聞いただけで胸が締め付けられる気分になった湊は、止まらない涙を拭う。
壮絶すぎる体験をしてきて、どれだけ辛かっただろうか。
他の人じゃなくて、龍司に助けられたことは本当に不幸中の幸いだったと思った。
まるで自分の事のように、心を痛めている湊の様子を見ていた龍司が優しく微笑んだ。
「まだ会ってもないのに、お前は他人の為に涙を流せるんだな、湊…。―――…やっぱりお前は優しい」
くしゃりと龍司が湊の頭を撫でた。
「そんなこと、ない…。会った事があっても会った事がなくても、こんな酷い話を聞いたら自然と涙が流れてきちゃうよ…。同情って言われたらそう聞こえるかもしれないけど、それでも可哀想だって…心が痛くなっちゃう」
「…湊…。」
龍司を含め、龍司のまわりにいる人は全員辛い過去を持つ人間ばかりだ。
みんなの昔話を聞いたら、多分泣きすぎて涙が枯れてしまうかもしれない…そんな事を思った。
朋也がちゃんとした人間であれば、ルカ達にもまた別の幸せがあったのかもしれない。
人を殺めなくてよかったのかもしれない。
やりたくもないことを、無理矢理やらなくてもよかったのかもしれない。
そんな朋也の血の繋がった子供である湊は、別の考え方をすれば復讐の対象になり得る存在だ。
「……」
果たして自分は、生きていて…ここにいていい人間なのだろうか?
ふいにそんな感情が湧き上がってきてしまう。
―――父さんの子供である俺が…ここにいていいのかな…?
「湊?…どうした?」
急に静かになった湊の様子に、龍司が顔を覗き込んできた。
ハッとして慌てて顔を上げれば、湊は愛想笑いを浮かべて顔を横に振る。
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