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第4章:ふたりの想い、消えゆく笑顔
127話
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「ん…」
体を抱きしめられていた温かさがなくなり、なくなった温もりを探す様に目を開く。
あれから慣れないことをした疲労感からか、すぐに眠気が襲ってきて意識が途切れた。
随分長い時間眠った様な感じがしつつ、起き上がって隣を見れば、精液まみれになっていたはずの体は綺麗になっていて、シーツも汚れたものは全て新しいものに変わっていた事に気づく。
「龍…司…?」
いない…?なんで…?
急に寂しさと空虚感が襲ってきて、龍司が眠っていた方のベッドのシーツを握った時だった。
医務室の扉が開かれた。
「…湊、起きていたのか――――って…どうした?」
「龍司っ」
―――良かった。
いなくなったのかと思った…。
母さんの時みたいに、俺を残していなくなったのかと思った。
父さんの時みたいに、仕事に行くふりをして俺を捨てていなくなったのかと思った。
龍司の姿を見た瞬間安堵に包まれて、ベッドに腰を下ろした龍司に抱きつけば大きな手は優しく湊の頭を撫でた。
「不安になったのか?大丈夫だ、俺はお前の前からいなくなったりしない。」
「龍司…うん…。」
龍司は、龍司だけは俺の前からいなくならないと分かってる。
分かってはいるんだけど、どうしてだろう。
何故か今、すごく不安になった。
言いようのない不安に襲われ、ぎゅっと龍司のシャツを握る。
それに答えるように龍司が優しく抱きしめてきて、少しだけ不安が和らいだ気がした。
あやすように背中を擦る龍司が、静かに口を開く。
「湊、落ち着いたか?」
「…うん。もう大丈夫、いきなりごめんね」
名残惜しそうに龍司から体を離せば、くしゃりとした笑顔を浮かべる。
「気にするな」と小さく呟いて頭を撫でてきた龍司の手が心地よくて、また愛しさが込上げてくる。
いつの間にか、不安は湊の中から消え去っていた。
「湊…本当は毎日でも湊と一緒にいたいんだが、明日からまた仕事に戻らなきゃならない。湊は俺達のマンションに戻って大丈夫…と言いたい所なんだが、またこの前みたいな事になる可能性もある。朋也は会社の地下に閉じ込めていて、常に監視をしている状態だ。だが、だからと言って油断はできない」
「…うん…」
龍司の言葉で一気に現実に戻された気がした。
朋也の事を忘れていた訳ではないが、なるべく考えないようにしていたのだ。
それは、龍司から朋也がやってきた昔の事を聞いてしまったからに他ない。
視線を下げて返事をすれば、近くの掛布団を握る。
「…まぁ会社の方が人の出入りは多いから、ここにいてもあまり関係ないんだがな。…むしろここにいる方が危ないかもしれない。どっちにしろ、湊には護衛をつけるつもりだ、だから…どこにいたいかは湊が決めるといい。」
―――そんなの聞かれなくても、答えは決まってる――…。
「俺、龍司の側にいたい。ここにいる方が龍司と一緒にいるって気がする…。マンションは色々思い出して辛いし、1人だと寂しいから…だから龍司がいるこの会社にいたい!危なくても、龍司がいる空間に一緒にいたい!」
「――…湊…」
湊の言葉に驚いた龍司の目が開かれた。
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