Last Smile

第3章：歯車は動き出す

97話

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その後洸太郎は逮捕され、龍司の予想通り月嶋遼も逮捕される結末になった。

朝から夜までテレビやラジオではずっとその話題で持ちきりだ。
インターネットのサイトでは、トップ記事に必ず話題としてピックアップされる。

久堂のオフィスビルで働く社員は、もちろんだが全員解雇となり、ビルも取り壊しの噂までたった程だ。
メディアの力と言うのは、本当に恐ろしいと思う。
一瞬にして輝くきっかけとなる事もあれば、一瞬にして壊されるきっかけともなりえるからだ。


「…いつになったらこの話題がなくなるんだろうな」

龍司はノートパソコンのキーボードを叩きながら、テレビから聞こえてき内容にため息をつく。
同じ内容を話してばかりで、いい加減聞き飽きてしまった。

洸太郎と遼が捕まって一週間が経った。
洸太郎が捕まったという連絡は、すぐに亜矢子の耳にも入ったようで、悪かった亜矢子の体調は更に悪化してしまった。


そして、久堂の自宅も売りに出される事が決まった。

亜矢子は居場所を失ってしまっただけじゃなく、洸太郎の逮捕も併せて精神面にかなり来てしまったようで重度の鬱病になり入院する結果となった。





“久堂のすべてを両親から剥奪しての会社設立”




あの時考えていた結果になったはずなのに、龍司の気持ちは一向に晴れることはなく、むしろもやもやした感情が残ってしまって何とも言えない感情を抱いていた。


なぜだろう…考えなくても理由は分かっている。


最後に言った洸太郎の言葉だ。


あれがこのもやもやの原因を作っている。


龍司は、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべると、パソコンのキーボードを叩いてた手を止めた。


ふいに、扉をノックする音が聞こえ視線を扉に移す。




「…入れ」


「失礼しますっ！！！龍司様！漸く…っ！！漸く見つける事が出来ました！！！」


息を切らして入ってきたのは、初めて会った時と変わらずに白衣を見に纏った金髪の少年・芹名だ。

金髪の長い髪は左側に流す様に結わえられており、唯一変わった所と言えば白衣の中の服装がシャツとパンツスタイルになったという所だろうか。
幼かった容姿は、少しだけ大人びたように成長した気がした。

久堂の家を出た後、龍司は芹名達4人と驫木と暮らすようになった。

前に住んでいた家から、数百キロは離れている地方の街に引越し、一軒家を建てた。
少し離れた所には砂浜もあり、家からでもその澄んだ美しい海を見る事が出来る。


これまでの経験を忘れる事はできないが、少しでも癒される何かが欲しいと思って住むのを決めた場所だ。
今後、会社としての土台を作る場所にはもってこいの場所――そう思った。


龍司は、いつも慌てるような事がない芹名の様子に少し驚きつつも「どうした？」と問いかけた。