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第3章:歯車は動き出す
92話
しおりを挟む最近は本当に面白いほど挑発に乗ってきてくれる。
もはや笑いが込上げてくるほどに。
龍司は挑発的な笑みを浮かべながら洸太郎の元に近づく。
龍司が動いた瞬間。
胸元に隠されていたホルダーから、男達が一斉に小型銃を取り出して龍司にその銃口を向けた。
――こんな都会の真ん中で発砲なんかできないはずだ。
どんな権力者でも発砲し人を殺したとなれば、隠し通す事ももみ消す事も不可能だ。
しかもその音の出所は久堂のオフィスビル。
ただじゃあ済まない。
龍司は表情を変えることなく、洸太郎のデスクまで近づいた。
「…残念でしたね、おれを殺す事が出来なくて。…おれにはあなたと違って優秀な部下がいますから」
「部下…だと?学校にも行っていない、まだ子供のお前に?フッ、笑わせるな!今朝お前を殺す事が出来なかったとしても、私はいつでもお前を殺す事が出来ると言うのを忘れるな!」
必死の形相で吐き捨てるようにいった洸太郎の言葉に、龍司の表情から笑顔が消えた。
冷え切った瞳で洸太郎を見つめると、龍司は「おい!だそうだ」と誰もいない背後に向かって叫んだ。
その声を合図に、扉が蹴破られるように開くと、部屋中に銃声が鳴り響く。
身を護るように体勢を低くする洸太郎と男達を見る龍司を、背中に庇うように、2人の少年がショットガンを構えながら立つ。
「一歩でも龍司様に近づいたら…お前の首を吹っ飛ばす。」
暗殺部隊が着るような動きやすい黒のレザージャケットとベストにパンツ、ベルトとスタッズ付のロングブーツ、黒のロングコートを見に纏い口元を特殊マスクで覆った少年達の真ん中に立っていた少年――零が一瞬で洸太郎の背後に立ち、首筋に日本刀を当てながら言った。
洸太郎や周りの殺し屋の男達の左右に立ち、ショットガンを向けた晃と流伽が、トリガーを引く。
「…っ!…なん、だ貴様らは…っ」
「…おれらは龍司様の護衛をしている者であり、部下です。アンタが龍司様の父親でもそんな戸籍上の理由だけでは助ける理由にはならない。今朝の事と言い、これまでの龍司様の辛いお気持ちを考えれば、すぐにその首を跳ねたい位だ!!!おい!!…構えている銃を下ろせ!下ろさなければこいつの首を跳ねる…!」
首筋に当てられた刃先が肌に食い込み、うっすらと血が滲み始める。
殺し屋のリーダーらしき男が、洸太郎の首にあてがわれた日本刀と自分達に向けられた銃を交互に見てから、観念したように構えていた銃を手から離した。
手から滑り落ち、床に転がった銃を確認するとそっと両手を上げる。
リーダーの男に続くように、周りの男達も銃を離すと、両手を上げた。
すぐにショットガンを構えていた晃と琉夏が、床に落ちた銃を足で蹴る。
銃は回転しながら、男達から離れた入り口付近へと滑り転がっていった。
晃と琉夏は、間髪入れずに他に武器を所持していないか男達の体を入念に調べる。
「…他に武器はなさそうですね」
「持っていたのはマグナムだけだったみたい」
定位置に戻ってきた晃と琉夏が零に告げると、零が静かに頷いた。
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