Last Smile

神坂ろん

文字の大きさ
上 下
94 / 196
第3章:歯車は動き出す

92話

しおりを挟む


最近は本当に面白いほど挑発に乗ってきてくれる。
もはや笑いが込上げてくるほどに。


龍司は挑発的な笑みを浮かべながら洸太郎の元に近づく。


龍司が動いた瞬間。
胸元に隠されていたホルダーから、男達が一斉に小型銃を取り出して龍司にその銃口を向けた。



――こんな都会の真ん中で発砲なんかできないはずだ。
どんな権力者でも発砲し人を殺したとなれば、隠し通す事ももみ消す事も不可能だ。


しかもその音の出所は久堂のオフィスビル。
ただじゃあ済まない。


龍司は表情を変えることなく、洸太郎のデスクまで近づいた。


「…残念でしたね、おれを殺す事が出来なくて。…おれにはあなたと違って優秀な部下がいますから」

「部下…だと?学校にも行っていない、まだ子供のお前に?フッ、笑わせるな!今朝お前を殺す事が出来なかったとしても、私はいつでもお前を殺す事が出来ると言うのを忘れるな!」


必死の形相で吐き捨てるようにいった洸太郎の言葉に、龍司の表情から笑顔が消えた。
冷え切った瞳で洸太郎を見つめると、龍司は「おい!だそうだ」と誰もいない背後に向かって叫んだ。

その声を合図に、扉が蹴破られるように開くと、部屋中に銃声が鳴り響く。
身を護るように体勢を低くする洸太郎と男達を見る龍司を、背中に庇うように、2人の少年がショットガンを構えながら立つ。



「一歩でも龍司様に近づいたら…お前の首を吹っ飛ばす。」


暗殺部隊が着るような動きやすい黒のレザージャケットとベストにパンツ、ベルトとスタッズ付のロングブーツ、黒のロングコートを見に纏い口元を特殊マスクで覆った少年達の真ん中に立っていた少年――零が一瞬で洸太郎の背後に立ち、首筋に日本刀を当てながら言った。
洸太郎や周りの殺し屋の男達の左右に立ち、ショットガンを向けた晃と流伽が、トリガーを引く。


「…っ!…なん、だ貴様らは…っ」

「…おれらは龍司様の護衛をしている者であり、部下です。アンタが龍司様の父親でもそんな戸籍上の理由だけでは助ける理由にはならない。今朝の事と言い、これまでの龍司様の辛いお気持ちを考えれば、すぐにその首を跳ねたい位だ!!!おい!!…構えている銃を下ろせ!下ろさなければこいつの首を跳ねる…!」



首筋に当てられた刃先が肌に食い込み、うっすらと血が滲み始める。

殺し屋のリーダーらしき男が、洸太郎の首にあてがわれた日本刀と自分達に向けられた銃を交互に見てから、観念したように構えていた銃を手から離した。
手から滑り落ち、床に転がった銃を確認するとそっと両手を上げる。
リーダーの男に続くように、周りの男達も銃を離すと、両手を上げた。

すぐにショットガンを構えていた晃と琉夏が、床に落ちた銃を足で蹴る。
銃は回転しながら、男達から離れた入り口付近へと滑り転がっていった。

晃と琉夏は、間髪入れずに他に武器を所持していないか男達の体を入念に調べる。



「…他に武器はなさそうですね」

「持っていたのはマグナムだけだったみたい」


定位置に戻ってきた晃と琉夏が零に告げると、零が静かに頷いた。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】俺はずっと、おまえのお嫁さんになりたかったんだ。

ペガサスサクラ
BL
※あらすじ、後半の内容にやや二章のネタバレを含みます。 幼なじみの悠也に、恋心を抱くことに罪悪感を持ち続ける楓。 逃げるように東京の大学に行き、田舎故郷に二度と帰るつもりもなかったが、大学三年の夏休みに母親からの電話をきっかけに帰省することになる。 見慣れた駅のホームには、悠也が待っていた。あの頃と変わらない無邪気な笑顔のままー。 何年もずっと連絡をとらずにいた自分を笑って許す悠也に、楓は戸惑いながらも、そばにいたい、という気持ちを抑えられず一緒に過ごすようになる。もう少し今だけ、この夏が終わったら今度こそ悠也のもとを去るのだと言い聞かせながら。 しかしある夜、悠也が、「ずっと親友だ」と自分に無邪気に伝えてくることに耐えきれなくなった楓は…。 お互いを大切に思いながらも、「すき」の色が違うこととうまく向き合えない、不器用な少年二人の物語。 主人公楓目線の、片思いBL。 プラトニックラブ。 いいね、感想大変励みになっています!読んでくださって本当にありがとうございます。 2024.11.27 無事本編完結しました。感謝。 最終章投稿後、第四章 3.5話を追記しています。 (この回は箸休めのようなものなので、読まなくても次の章に差し支えはないです。) 番外編は、2人の高校時代のお話。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

つまりは相思相愛

nano ひにゃ
BL
ご主人様にイかないように命令された僕はおもちゃの刺激にただ耐えるばかり。 限界まで耐えさせられた後、抱かれるのだが、それもまたしつこく、僕はもう僕でいられない。 とことん甘やかしたいご主人様は目的達成のために僕を追い詰めるだけの短い話です。 最初からR表現です、ご注意ください。

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

悩める文官のひとりごと

きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。 そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。 エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。 ムーンライト様にも掲載しております。 

クズ彼氏にサヨナラして一途な攻めに告白される話

雨宮里玖
BL
密かに好きだった一条と成り行きで恋人同士になった真下。恋人になったはいいが、一条の態度は冷ややかで、真下は耐えきれずにこのことを塔矢に相談する。真下の事を一途に想っていた塔矢は一条に腹を立て、復讐を開始する——。 塔矢(21)攻。大学生&俳優業。一途に真下が好き。 真下(21)受。大学生。一条と恋人同士になるが早くも後悔。 一条廉(21)大学生。モテる。イケメン。真下のクズ彼氏。

処理中です...