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第2章:君の笑顔
10話
しおりを挟む「―なと。」
また俺を呼んでいる…
「湊っ!!」
「りゅ…じ…?」
あれ…?
ゆめ…?
机から顔をあげると、龍司を待ちながら眠ってしまったのかと目を擦る。
心配そうに顔を覗き込む龍司にハッとして立ち上がった。
「ごめん、いつの間にか寝ちゃってた。今ご飯温めるね!」
「湊」
「ん?どうしたの?…っ!」
机に並べてある皿を持とうとした所で、龍司が後ろから抱きしめてきた。
「龍司…?」
心臓がまたうるさくなる。
龍司の温もりが、体温が、匂いが、息遣いが服越しに伝わってきた。
「何があった」
「っ…!なに…が?」
龍司は、抱きしめていた体を離すと湊の体を自分の方に向かせた。
鋭く切れ長の龍司の瞳が湊を捕え、真っ直ぐに見つめられれば視線が逸らせなくなった。
「俺に隠し事はしない約束だ、湊」
「…。」
大きい手が湊の頬に添えられた。
冷たいのに暖かい龍司の手が、また湊の心臓をうるさくさせる。
それと同時に分からない不安がこみ上げてくる。
「俺の名前を呼んでいた。何度も、何度も」
心配そうに龍司の瞳が揺れた。
夢の中の映像がフラッシュバックされる。
返り血を浴び、血だらけの少年。
泣きながら苦しそうに龍司に縋りついていたあの少年の姿。
全身に降り注いできた返り血は誰の血なの?
あの少年が小さい時の俺だとしたらなんで龍司といるの?
俺と龍司が出会ったのは父さんに捨てられた10年前のはずなのに。
それよりも前に龍司に会った記憶はない。
でも、あの姿はどう見ても10年前よりも昔の姿だ。
疑問ばかりが頭の中をグルグルと駆け巡る。
「湊!」
「っ…!!」
びくっと体が跳ねた。
「どんな夢を見ていたんだ。」
「…。」
聞かなきゃ。
龍司はきっと知っている…
全部を。
龍司の視線が痛いほど突き刺さってきて、動けなくなった。
龍司に聞かなきゃいけない。
聞きたい。
俺の知らない記憶を。
「あのうなされ方、尋常じゃなかった…っ。どんな夢を見た?」
龍司の様子がおかしい。
心配そうに見ていた表情が変わり、物凄い剣幕で問い詰めてくる。
そんな龍司が少しだけ怖いと感じてしまった。
「昔の夢を見た…」
「昔の?…またあの時の夢か?」
漸く口走った湊に、少しだけ龍司の表情が緩んだ。
「ち、がう。」
「…違う?じゃあどんな夢…」
「龍司!…俺と龍司が出会ったのって10年前だよね!?それより前に…会ってない…よね?」
「!!」
言葉を遮るように言った湊の言葉に、龍司の目が大きく開かれた。
普段大きく感情を表に出す事がない龍司の様子の変わりように、今度は湊が龍司に詰め寄る。
その表情を見て、明らかに動揺していると思った。
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