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第2章:君の笑顔
8話
しおりを挟む「ん?」
洗い物を終わらせ掃除機をかけていると、ふと窓の外が気になり掃除機をかけている手を動かしたまま外を見た。
しかし、見えるのは公園と慌ただしく歩く人々、そして隙間なく建ち並ぶビルだけで特に変わったものはない。
なんか、今外がすごく気になった…なんでだろ?
「気のせい?」
掃除機を止め、窓にそっと手を触れるときょろきょろと外を見渡す。
しかし、特に気になる様なものはない
「気のせいか。って言うかここ最上階だし、なにもある訳ないよね…」
大きな欠伸をすると、湊は止めていた掃除機を動かした。
***
掃除を終えると、湊は近くのスーパーへ食材の買い出しに行った。
毎回龍司には夜ご飯は何を食べたいかを聞くが、返ってくる返事は変わらず「湊が作るならなんでもいい」で終わるため、龍司が好きな料理ばかりを作る事が多かった。
今日は龍司が好きな食べ物の一つ、ロールキャベツとオニオンスープを作った。
時刻は深夜12時過ぎ。
いつもならとっくに帰ってきている時間帯だけに、不安げに壁掛けの時計を何度も見る。
「龍司今日は遅いなぁ…」
静かな部屋に、カチ、カチと時計の秒針の音だけが響く。
作った料理は綺麗にラップに包まれ、テーブルの上に向き合うように二つ置いてある。
どうしたんだろう。
いつもならとっくに帰ってきているのに…会社でなんかあったのかな?
テーブルに顔を埋めていた俺は顔をあげた。
時計を見ると時刻は12時30分を回ろうとしていた。
「りゅ…じ…」
一日中バタバタと動き回っていた事もあり、睡魔が襲ってくる。
ご飯は龍司がどんなに遅く帰って来ても一緒に食べると決めていたから、自分のご飯もまだ食べてはいない。
龍司は先に食べて休んでいろと何度も言ってくるけど、1人で寂しく食べるくらいなら、遅くなっても龍司と一緒に食べたい。
だから、龍司の帰りがどんなに遅くても必ず一緒に食べる事にしているのだ。
ぼんやりと龍司がいつも座る席を見つめる。
残像の様に、龍司が湊に微笑む姿が見えた気がした。
『――湊。』
暖かくて心地の良い龍司の低い声が聞こえた気がして、徐々に瞼は閉じていった。
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