BLを教えてくれ腐男子先生!

響藍

文字の大きさ
上 下
10 / 21

第九話『運命という物』

しおりを挟む
 大地は建物の角から向こうにバレないようにチラチラと様子を伺っていた。何度、目を擦っても変わらない視覚情報に到底理解できないような顔をした大地は優大の肩を大きく揺すった。
「なにがどうなってんだ!?こんなの聞いてないぞ!」


~10分前~
「なあ!弟くんの写真とか無いの?」
お昼休みも後半に差し掛かった頃、最初に食事を終えた大地は目をキラキラさせながら優大に尋ねた。
「え、優大って一人っ子じゃないの?」
と、すかさず智治が会話に入ってくる。
「いや、俺もつい最近知ったばっかなんだけどさ、これがマジなんだよ~!な?トモちゃんも見てみたいでしょ?」
「み、見てみたい...」
「ほら!トモちゃんも見たいって!いいだろ?」
優大は呆れたと言わんばかりにため息をした。
「写真は無いから、後で見に行くか?もうそろそろ寮から帰ってくる頃だろ。」
「お、いいじゃん!行こ行こ!トモちゃんは?」
「んー、やめとく。俺が行くとそれどころじゃなくなりそうだし。後で感想聞かして。」
 智治は、人通りが多くなるこの時間は講義室から出ないように心がけていた。わざわざ昼飯を買ってから登校し、昼になっても寮には戻らないことにしているのだった。
「あー...人気者ってのも色々大変だな。わかった、2人で行ってくる~!」
そう言うと大地は優大の腕を掴み微笑む。
「ちょっと待て、俺はまだデザート食べれてないぞ。ーーおい、引っ張るなって!おい!」
「行ってらっしゃーい、俺が責任もって片付けておくよ~。...ん!うまうま!」


~5分前~
「なあ、やっぱりトモちゃん最近様子が変じゃない?」
さっきの笑みとは一転、真面目な顔をした大地が尋ねる。優大は不満そうな顔をする。
「そんなこと聞くために俺プリン食えなかったの?」
「ちょっ、そんなことじゃないだろ!俺は本気で心配してんの!いつもだったらこう...もっと口数少ないし...わかるでしょ?」
「...まあ、確かにいつもよりテンション高め?みたいな感じするけど、それほどかぁ?イメチェンぐらいしたくなったりもするだろー。」
「それほどなの!トモちゃんがあんなにずっとハイテンションなのはもはやキョーフでしょ!なんか理由があるんだよきっと!」
「恐怖はちょっと可哀想だろ。えー。その理由が気になるって言うんだろ?俺は協力しないからな。ってかお前は気になることが短期間で増えすぎなんだよ。今は俺の弟に集中しろよ俺プリン食ってないんだぞ!ほら、ちょうど来たぞ、2人組の左のヤツだよ弟。」
 そう言って優大は指を指す。大地はそこに目を向けてまじまじと見つめる。

 確かにお世辞にも似てるとは言えないなぁ。もはや他人じゃん。これ、ドッキリでした!とかにならないよね?
 ってかユウちゃんって弟くんのこと好きなんだよね!?2人組で歩いてるけど精神状態ダイジョブなん?なんか右の子がリードして話してるしめっちゃ仲良さそうじゃん。
 ...って、あれ?右の子なんか見覚えあるような......

「ええええええええええええええ!?!?」
秀和の隣にいる人物が誰か気づいた大地は思わず声を上げる。そこには紛れもなく、あの口数が少なくたまに睨みつけてくる隆則の姿があった。『ああいう性格だから』『それも個性だから』で割り切っていたものが崩れさっていった。

 あんな顔、今の今まで一度も見たことないぞ!?


~そして現在~
「なにがどうなってんだ!?こんなの聞いてないぞ!」
「いや、似てないって言ったじゃん。」
優大の返答に大地は口をパクパクとさせた。少しの沈黙の後再び口を開く。
「...違くないけどそうじゃなーい!右!右の子の方!あれ、タカちゃんだよな?双子とかじゃないよな?」
「ん?ああ、田神だろ?何をそんなに驚いてんだ?」
「えっ。あっ、そっかユウちゃんは入部届の時以来話す機会なかったのか!ほぼ顔見知りだもんな!」
「あっ...確かにお前から聞いてた印象とは違うな。」
「そう!それなのに今ほらーー」
「ーーじゃあ、やっぱり嫌われてたってことじゃね?」
 大地はショックを受けたようで口に手を当てた。
「冗談だよ。そんなに気になるなら、直接聞いてみればいいだろ。すぐそこだし。いずれ知ることになる運命だろ?」
「運命なんて知らん!いやだって、それで嫌いですなんて言われてみろ!立ち直れないよ俺は!そう、あれだっ!言わぬが花!うやむやなままでいたいんだよ!」
「...それ、使い方ちょっと違くないないか?」
「と・に・か・く!もうそろそろ講義始まっちゃうから戻ろ!トモちゃんも待ってるって!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「おい、案の定俺のアカウントにアイツからダイレクトメール来てんだけど。ホントにどーゆーつもりなの?これ、ブロックしていい?」
春人は不満気にそう放った。
「2人きりで会いたい、って伝えて。」
「っ!俺も一緒にーー」
「ーー大丈夫。俺はカケルとちゃんと向き合うべきなんだ。逃げるのはもうやめたんだ。だから、な?1人で行かせてよ。」
「...わぁーったよ。でも危ないと感じたらすぐ逃げるんだぞ、わかったな?」
「うん。ありがと。」


 春人は文面をいぶかしげに読み、冷笑する。
「しかしまあ、運命なんて物ホントにあんのかねぇ。結局はただの偶然だろ?」
「ただの偶然を運命って言うのが粋なんだよ。ロマンチックじゃないか。」
 青也の返答が以外だったのか、春人は目を丸くして青也を見つめた。そして不安そうに尋ねた。
「それでいいのか?」
「それでいいんだよ。...ただ、運命の出会いが一度きりしかないなんて、そんなケチくさいことはないってわかっていればね。」

 青也は静かにに笑う。春人には少し悲しそうに見えた。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

催眠アプリ(???)

あずき
BL
俺の性癖を詰め込んだバカみたいな小説です() 暖かい目で見てね☆(((殴殴殴

【完結】催眠なんてかかるはずないと思っていた時が俺にもありました!

隅枝 輝羽
BL
大学の同期生が催眠音声とやらを作っているのを知った。なにそれって思うじゃん。でも、試し聞きしてもこんなもんかーって感じ。催眠なんてそう簡単にかかるわけないよな。って、なんだよこれー!! ムーンさんでも投稿してます。

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

年越しチン玉蕎麦!!

ミクリ21
BL
チン玉……もちろん、ナニのことです。

初恋はおしまい

佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。 高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。 ※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。 今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

処理中です...