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前編(どんな本を選べば良いのか?)
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読書感想文、皆様お好きでしょうか?
本を読むのがお好きでも読書感想文を書くのもお好きという方は少ないのではないでしょうか?
実際、読書が趣味という方は多くいらっしゃいますが、読書感想文が趣味という方は見たことがございません。
読書感想文、夏休みには付き物でございます。昔は出しても出さなくてもという学校も多くあったようにお聞きしますが、世は多様性の時代。入試も多様化し、絞り出してでも、そしてあわよくば学校の先生に気に入られるような読書感想文を求められる皆様も多いのではないでしょうか?
私、お恥ずかしくも文章を書くことを趣味にしております。そんな私でも学生時代、読書感想文を提出したのは高校三年生の一度きり。それも、先生に言われて泣く泣くというありさまでした。これは本を読み何かを感じることは、非常に内向きな活動であるのに対して、これを言語化し分かりやすく伝えるという活動は非常に外向きの活動であり、高校生の私にはちょっぴり合わなかったのかなと思います。
また、そもそも日本人は義務教育で文章を書くということを深く学びません。そのため私を含めて、文章を書くのが苦手で、社会に出てからも大変苦労をするという人間も多くいらっしゃるのかと思います。
さて、話を本筋に戻しましょう。
このような事情をつらつらと連ねたところで、宿題がなくなることも、親御様のご苦労がなくなることもございません。趣味を物書き(いろんな意味で大変お恥ずかしいですが…)とする私から皆様の夏休みが、そして読書感想文というものが少しでも楽しくなるように、ふつつかなアドバイスをさせて頂ければと思います。もし宜しければ最後までご覧くださいませ。
さて、読書感想文という以上、まず本を読まなければ始まりません。どれぐらいの厚みの本を読むのか、課題図書から選ぶのか、それとも自由に選ぶのか、なかなか本を選ぶこと、そのものの難易度も低くはございません。
しかし、私としては、普段読書に親しんでないお子の場合は特に、本選びは読書感想文の出来の8、9割を決めている大事な工程であるように感じてございます。
さて読書感想文用の本を選ぶにまず、一番大事なこと、それは「お子が読み切れる本を選ぶ」という事でしょう。
これを言っては身も蓋もないかもしれません。しかしまずは本を最後まで読み切らなければ始まりません。それも、小学校高学年であれば原稿用紙3枚分、中高生であれば原稿用紙5枚分の「何か」を感じながら読み切る必要がございます。もしさほど興味もない、長い長い小説を選んでしまった場合、読み切ることも難しく、原稿用紙を埋めることはさらに難しくございます。
お子が読書に慣れていない場合、「2日以内に読める量の本」を選ぶのが良いと思います。2日で読み切り、3日目に感想文を仕上げる。こんなスケジュールがよいでしょう。そんな短くても大丈夫?ご心配には及びません。短くても感想文に向いている、お話はたくさんございます。
例えば教科書にも載っている芥川龍之介の「羅生門」。こちら何を隠そう私が高校3年生の夏休み(正確には夏休みが明けてから)、国語の先生のありがたいご指導を受け、読書感想文を仕上げた題材でございます。あえて物語の内容には触れませんが、このような生と死、善と悪を扱った題材は、ある意味で、特に高校生くらいのお子様には、お勧めの題材ではございます。
一日に読める量がそもそもわからない、そんなお子はまずは1日読んでみて、無理そうならば、別の本に変えましょう。読みきれなかった事を考えて候補を数冊、図書館で借りてくることをお勧めします。そんなことで良いのですかという声が聞こえてきそうですが、良いのです。目標は読書感想文を書くことです。読み切ることではございません。何とかふーふー言いながら、2週間かけて読んでる本を読み切ったとしても、読書感想文書けますか?
冒頭申し上げたように、読書をして何かを感じるということと、それを他の人にわかるように文章化するということはちょっと毛色が異なります。数週間かけてゆっくりと物語を噛み砕き、何か言葉にできないものが残る。それはとても素敵な経験になるかと思いますが、読書感想文を書き上げるという当初の目的からは少し外れているように思います。
さて、読書感想文を書く為に、どんな厚みの本を選べば良いか、それについては先ほど延べさせて頂きました。
ではどんな内容の本を選べば良いのでしょうか?これはある意味簡単です。お子と関係のあるお話を選ぶようにしてください。
ちょっとピンと来ないでしょうか?ではお子の部活から本を選ぶのはどうでしょう?例えば美術部のお子であれば、「地獄変」(芥川龍之介)など良いかと思います。これは地獄の絵を描くために、実際に人が燃えるところを見たいと所望した絵描きのお話です。内容からして高校生くらいのお子でないと辛いかと思いますが、絵を描くという事を突き詰めて言った先の狂気について、自分の経験を含めて考えることで他の人にはない感想文となるかもしれません。
子どもが書く読書感想文というのは、専門家の批評文とは異なります。非常に有名なお話ではありますが、先ほど挙げた「地獄変」、技巧的にも凝った作品であるそうで、そういった文章構成上の技巧について様々な専門家たちの議論があるようです。
一方、お子は専門家ではありません。当たり前かもしれませんが、文章上の技巧云々について、感想を書くことはできません。やはり本を読んで感じる事が少なければ、読書感想文を書くことは非常に難しいように思います。
早い話、まずはお子に刺さる本を探してあげる必要があると思います。どんな本を読むのが良いか、これを機会に親子で話し合われるのも良いかもしれません。どんな本が刺さるのか、それはつまり、お子がどんな生活をしてきか、どんな考えを積み重ねてきたかを改めて明らかにするプロセスのように思います。
部活の他にも、将来なりたい職業などもとっかかりには良いでしょう。幸い日本にはノーベル賞を取った科学者も多くいらっしゃいます。研究者に憧れるお子さんにはそういった科学者が書かれた本も刺さるかもしれません。建築家になりたいなら「建築家になりたい君へ」(隈健吾)なども良いかもしれません。小説家になりたいなら「職業としての小説家」(村上春樹)でしょうか?
また、家庭環境から本を選ぶことも一つかもしれません。例えばクリスチャンの家庭ならば「沈黙」(遠藤周作)、「死海のほとりで」(同じく遠藤周作)なども自らの内面を省みるきっかけを与えてくれるかもしれません。
ただここで一つ、今回紹介したうち「地獄変」以外はそれなりに長いお話なので、本を読むのに慣れたお子でないと二日で読むのは難しいかもしれません…。
なんて事を!!ちゃぶ台返しだわ!!っと言う声が聞こえてきそうです。
でも、仕方がないじゃないですか、「読書」感想文ですよ?読書に慣れたお子が有利に決まってるじゃないですか?。っえ!!つべこべ言わず、短いお話のお薦め本を上げろ!?教師受けも考えろよ!?なんてひどい!!
良いですか?人のお勧めを読んだ所で良いことはありません。その理由は後編でわかります。
それでもどうしてもと言われるのであれば、まずは「羅生門」(芥川龍之介)、「地獄変」(同左)、「枯野妙」(同左)、「駆込み訴え」(太宰治)、「高瀬舟」(森鴎外)などでしょうか…。
*この辺りは教科書にも載っていることも多いかと思いますので、ルール違反になってないか、確認をお願いします。
なお、どうして人のお勧めを読んだ所で良いことがないのか、それは後編をご覧頂ければと思います。
本を読むのがお好きでも読書感想文を書くのもお好きという方は少ないのではないでしょうか?
実際、読書が趣味という方は多くいらっしゃいますが、読書感想文が趣味という方は見たことがございません。
読書感想文、夏休みには付き物でございます。昔は出しても出さなくてもという学校も多くあったようにお聞きしますが、世は多様性の時代。入試も多様化し、絞り出してでも、そしてあわよくば学校の先生に気に入られるような読書感想文を求められる皆様も多いのではないでしょうか?
私、お恥ずかしくも文章を書くことを趣味にしております。そんな私でも学生時代、読書感想文を提出したのは高校三年生の一度きり。それも、先生に言われて泣く泣くというありさまでした。これは本を読み何かを感じることは、非常に内向きな活動であるのに対して、これを言語化し分かりやすく伝えるという活動は非常に外向きの活動であり、高校生の私にはちょっぴり合わなかったのかなと思います。
また、そもそも日本人は義務教育で文章を書くということを深く学びません。そのため私を含めて、文章を書くのが苦手で、社会に出てからも大変苦労をするという人間も多くいらっしゃるのかと思います。
さて、話を本筋に戻しましょう。
このような事情をつらつらと連ねたところで、宿題がなくなることも、親御様のご苦労がなくなることもございません。趣味を物書き(いろんな意味で大変お恥ずかしいですが…)とする私から皆様の夏休みが、そして読書感想文というものが少しでも楽しくなるように、ふつつかなアドバイスをさせて頂ければと思います。もし宜しければ最後までご覧くださいませ。
さて、読書感想文という以上、まず本を読まなければ始まりません。どれぐらいの厚みの本を読むのか、課題図書から選ぶのか、それとも自由に選ぶのか、なかなか本を選ぶこと、そのものの難易度も低くはございません。
しかし、私としては、普段読書に親しんでないお子の場合は特に、本選びは読書感想文の出来の8、9割を決めている大事な工程であるように感じてございます。
さて読書感想文用の本を選ぶにまず、一番大事なこと、それは「お子が読み切れる本を選ぶ」という事でしょう。
これを言っては身も蓋もないかもしれません。しかしまずは本を最後まで読み切らなければ始まりません。それも、小学校高学年であれば原稿用紙3枚分、中高生であれば原稿用紙5枚分の「何か」を感じながら読み切る必要がございます。もしさほど興味もない、長い長い小説を選んでしまった場合、読み切ることも難しく、原稿用紙を埋めることはさらに難しくございます。
お子が読書に慣れていない場合、「2日以内に読める量の本」を選ぶのが良いと思います。2日で読み切り、3日目に感想文を仕上げる。こんなスケジュールがよいでしょう。そんな短くても大丈夫?ご心配には及びません。短くても感想文に向いている、お話はたくさんございます。
例えば教科書にも載っている芥川龍之介の「羅生門」。こちら何を隠そう私が高校3年生の夏休み(正確には夏休みが明けてから)、国語の先生のありがたいご指導を受け、読書感想文を仕上げた題材でございます。あえて物語の内容には触れませんが、このような生と死、善と悪を扱った題材は、ある意味で、特に高校生くらいのお子様には、お勧めの題材ではございます。
一日に読める量がそもそもわからない、そんなお子はまずは1日読んでみて、無理そうならば、別の本に変えましょう。読みきれなかった事を考えて候補を数冊、図書館で借りてくることをお勧めします。そんなことで良いのですかという声が聞こえてきそうですが、良いのです。目標は読書感想文を書くことです。読み切ることではございません。何とかふーふー言いながら、2週間かけて読んでる本を読み切ったとしても、読書感想文書けますか?
冒頭申し上げたように、読書をして何かを感じるということと、それを他の人にわかるように文章化するということはちょっと毛色が異なります。数週間かけてゆっくりと物語を噛み砕き、何か言葉にできないものが残る。それはとても素敵な経験になるかと思いますが、読書感想文を書き上げるという当初の目的からは少し外れているように思います。
さて、読書感想文を書く為に、どんな厚みの本を選べば良いか、それについては先ほど延べさせて頂きました。
ではどんな内容の本を選べば良いのでしょうか?これはある意味簡単です。お子と関係のあるお話を選ぶようにしてください。
ちょっとピンと来ないでしょうか?ではお子の部活から本を選ぶのはどうでしょう?例えば美術部のお子であれば、「地獄変」(芥川龍之介)など良いかと思います。これは地獄の絵を描くために、実際に人が燃えるところを見たいと所望した絵描きのお話です。内容からして高校生くらいのお子でないと辛いかと思いますが、絵を描くという事を突き詰めて言った先の狂気について、自分の経験を含めて考えることで他の人にはない感想文となるかもしれません。
子どもが書く読書感想文というのは、専門家の批評文とは異なります。非常に有名なお話ではありますが、先ほど挙げた「地獄変」、技巧的にも凝った作品であるそうで、そういった文章構成上の技巧について様々な専門家たちの議論があるようです。
一方、お子は専門家ではありません。当たり前かもしれませんが、文章上の技巧云々について、感想を書くことはできません。やはり本を読んで感じる事が少なければ、読書感想文を書くことは非常に難しいように思います。
早い話、まずはお子に刺さる本を探してあげる必要があると思います。どんな本を読むのが良いか、これを機会に親子で話し合われるのも良いかもしれません。どんな本が刺さるのか、それはつまり、お子がどんな生活をしてきか、どんな考えを積み重ねてきたかを改めて明らかにするプロセスのように思います。
部活の他にも、将来なりたい職業などもとっかかりには良いでしょう。幸い日本にはノーベル賞を取った科学者も多くいらっしゃいます。研究者に憧れるお子さんにはそういった科学者が書かれた本も刺さるかもしれません。建築家になりたいなら「建築家になりたい君へ」(隈健吾)なども良いかもしれません。小説家になりたいなら「職業としての小説家」(村上春樹)でしょうか?
また、家庭環境から本を選ぶことも一つかもしれません。例えばクリスチャンの家庭ならば「沈黙」(遠藤周作)、「死海のほとりで」(同じく遠藤周作)なども自らの内面を省みるきっかけを与えてくれるかもしれません。
ただここで一つ、今回紹介したうち「地獄変」以外はそれなりに長いお話なので、本を読むのに慣れたお子でないと二日で読むのは難しいかもしれません…。
なんて事を!!ちゃぶ台返しだわ!!っと言う声が聞こえてきそうです。
でも、仕方がないじゃないですか、「読書」感想文ですよ?読書に慣れたお子が有利に決まってるじゃないですか?。っえ!!つべこべ言わず、短いお話のお薦め本を上げろ!?教師受けも考えろよ!?なんてひどい!!
良いですか?人のお勧めを読んだ所で良いことはありません。その理由は後編でわかります。
それでもどうしてもと言われるのであれば、まずは「羅生門」(芥川龍之介)、「地獄変」(同左)、「枯野妙」(同左)、「駆込み訴え」(太宰治)、「高瀬舟」(森鴎外)などでしょうか…。
*この辺りは教科書にも載っていることも多いかと思いますので、ルール違反になってないか、確認をお願いします。
なお、どうして人のお勧めを読んだ所で良いことがないのか、それは後編をご覧頂ければと思います。
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