とよとも

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26)初鑑別所が役立った

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初鑑別所から解放され、のらりくらりと日々を過ごしていた。

解放されたのは8月半ば。学校は夏休みだ。

朝学校へ行く必要もない。

夜な夜な遊びまわり小銭がなくなれば、商店の店先にある公衆電話をもぎ取り小銭を稼ぐ。


原チャや単車のガソリンが無くなれば、軽トラを見つけてガソリンを分けてもらう。

当時は防犯対策なんてあって無いような状態だ。





8月も終わるある日の事

オカンから、地元警察から電話があった。
警察に来てと。

俺は警察に出向く様な事はしていない。

全く心当たりがないが、小学生の頃から知っている刑事からの電話だ。

とりあえず警察に行った。

ま、俺のヤンチャは地元警察では有名だった。

なのでその刑事は俺のヤンチャ行為を良く知り尽くしているはずだ。


「おぅ、来たで!」
「何の用事なん?」
俺が尋ねたら

「こっちこい」そぅ言って別室に連れて行かれた。

え?取り調べ???

「お前の事を見損なった!」
突然、刑事は鬼の形相になった。

俺「は?」

刑事は
「お前は、こんな卑怯な事をしない奴と思っていた!」
「本当にお前を見損なった!」


俺はこの刑事がヤバいと思った。
何を俺に語っているのか?

わざわざ別室。

しかも面通しありの部屋だ。


なかなか本題を言わず、曖昧な会話の刑事。


帰るぞ!って思ったものの

ん?
俺、今、面通し中?
えっ?

1時間半が経過した頃、刑事は
「お前!やったやろ?」

はっ?全く意味不明。
「何をやねん!」

刑事はとにかく俺に見損なった、見損なった。
この言葉を繰り返す。


俺はイライラしながらも、考えてみた。

俺が卑怯な事をやった?
公衆電話のもぎ取り?
番犬めがけてロケット花火?
ヤンキーとのケンカ?
信号無視?
他に何があると考えてもガソリンか?


全くわからない。まじで。


俺は刑事に「何ゃねん!言えょ!」

そう声を荒げたら刑事は

「お前、高齢者からひったくりをしたやろ!」


俺は頭の中で考える事もなく即答で
「アホちゃうか?」「俺、そんな事する?」

刑事は「正直に言え」「お前や!って被害者が言うてる」

あっ、やはり、面通しされていた。

「誰が言うてるのか知らんけど、ひったくりなんかやってないわ!」

刑事は俺の言葉を全く聞こうとしなかった。


俺は刑事にいつの出来事かを聞いた。

刑事は7月30日午後5時頃だと。

ん???
俺、7月?
初鑑別所

刑事に「俺、鑑別所やったけど」

そう言った途端に、刑事の表情が面白いぐらい一変した。

俺はしばらく待っていた。

どうやら鑑別所に入っていた確認が取れた様だ。



刑事は事の詳細を教えてくれた。
被害者がカバンを持って歩いていたら、背後から原チャに乗った二人組が来て、カバンをひったくられた。
被害者は軽症で年齢は70歳を過ぎた女性。

その被害者が犯人の特徴を話した時にお前によく似た人物像を言った。


だからひったくり犯が俺にそっくりだとなり、俺を見て見損なったと言った。

今日警察に来てもらい面通しをしたら、被害者がお前に間違いないと。


しかし、俺は鑑別所に入っていた。


当然だか、人違いとなった。



俺は高齢者にケガを負わせる様な悪さはしない。
ましてや、ひったくりなんて俺の中では最低の行為だ。




俺が鑑別所に入っていなければ、俺は無実を証明しなければ帰れなかっただろう。

ましてや、俺のアリバイを証明するのは簡単じゃない。


しかし、今回は簡単にアリバイが証明された。
鑑別所は退屈だったが、俺の人生に大いに役立った。



帰り際、刑事に言われた。
「俺はお前が犯人じゃないと思っていた。そんな事をする奴じゃない。お前が犯人じゃなくて良かった。」


おぃおぃ、見損なったって散々言ってたのに?
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