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「イツキがまた人混みに酔うといけないから、街中ではこっちにしといたからね」
困惑する僕にそう声を掛けると、アヤさんは満足気に僕を抱き締めながらスリスリと頬を身体に擦り寄せ、フワリと笑った。
うっわ、
何だろう。
いつもは頼もしくてカッコいいアヤさんが可愛く見えちゃったんだけど……
何故かちょっと胸がキュンとなって赤面した僕は、アヤさんの首に腕を回してしがみ付き、真っ赤になった顔を隠すようにして首筋に埋めた。
何だか気恥ずかしくて堪らない。
これだからイケメンはタチが悪いなってホントそう思う。
宿ではレオさんもアヤさんの笑顔に赤面して、硬直してたくらいだもんな…
だから僕なんかが赤くなるのも仕方がない事なんだよ。うん。多分そうに違いない。
ところで、さっきからすれ違う街の人達の視線が、物凄い事になってるんだけど……
実は宿を出てからずっと、見世物状態で抱っこされてて、僕としては恥ずかし過ぎてもう、正直ツライ。
これ、手を繋いで歩いてた方がマシだったんじゃないだろうか?
どうなの?
でもどっちが恥ずかしいんだ?って聞かれたら…
どっちも恥ずかしい!が答えだから、僕としては変わらないと言えば変わらない気もするんだけどね。
「イーツーキーー!聞いてる?」
「!?」
どうやら僕はアヤさんに話し掛けられていた事に全く気付いてなかったみたいだ。
何度か瞬きをして顔を上げ、アヤさんを見ると、僕は慌てて頭を下げた。
「ごめんなさい!全然聞いてませんでした…」
「いいよいいよ。気にしないで。じゃあもう一回言うね?」
「………はい、ごめんなさい」
「謝罪の言葉は一度でいいよ。イツキは毎回謝り過ぎだから」
「はい、ごめ…ッ」
「ほらまた」
アヤさんが苦笑いになって僕の頭を撫で回すと、くしゃくしゃになった髪を直すように手櫛で梳きながら口を開いた。
「癖になっちゃってるみたいだから難しいかも知れないけど、少しずつ少しずつ治していこうね。ところでミケの店とゼアラの宿はシーリアの街の西地区、つまり商業区にあって、私達は今、西地区の中央部付近から港のある南東地区に向かっているんだけど、各ギルドが近いから少し走らせて貰おうかと思ってイツキに声を掛けたんだよ」
「走るんですか?」
「うん、面倒事の予感がするから素早く立ち去りたい!ってのが本音だね。じゃ、舌噛まないようにそのまましがみ付いててくれる?」
「【転移】は…しないんですか?」
「目標地点が明確じゃない状態でやると危険なんだよ。以前うっかり街中で【転移】した瞬間に馬車を撥ねちゃった事があってね…」
「え?」
撥ねられた…
じゃなくて、撥ねたの?
アヤさんの方が!?
状況が想像出来ないんだけど、どういう事なの??
困惑する僕にそう声を掛けると、アヤさんは満足気に僕を抱き締めながらスリスリと頬を身体に擦り寄せ、フワリと笑った。
うっわ、
何だろう。
いつもは頼もしくてカッコいいアヤさんが可愛く見えちゃったんだけど……
何故かちょっと胸がキュンとなって赤面した僕は、アヤさんの首に腕を回してしがみ付き、真っ赤になった顔を隠すようにして首筋に埋めた。
何だか気恥ずかしくて堪らない。
これだからイケメンはタチが悪いなってホントそう思う。
宿ではレオさんもアヤさんの笑顔に赤面して、硬直してたくらいだもんな…
だから僕なんかが赤くなるのも仕方がない事なんだよ。うん。多分そうに違いない。
ところで、さっきからすれ違う街の人達の視線が、物凄い事になってるんだけど……
実は宿を出てからずっと、見世物状態で抱っこされてて、僕としては恥ずかし過ぎてもう、正直ツライ。
これ、手を繋いで歩いてた方がマシだったんじゃないだろうか?
どうなの?
でもどっちが恥ずかしいんだ?って聞かれたら…
どっちも恥ずかしい!が答えだから、僕としては変わらないと言えば変わらない気もするんだけどね。
「イーツーキーー!聞いてる?」
「!?」
どうやら僕はアヤさんに話し掛けられていた事に全く気付いてなかったみたいだ。
何度か瞬きをして顔を上げ、アヤさんを見ると、僕は慌てて頭を下げた。
「ごめんなさい!全然聞いてませんでした…」
「いいよいいよ。気にしないで。じゃあもう一回言うね?」
「………はい、ごめんなさい」
「謝罪の言葉は一度でいいよ。イツキは毎回謝り過ぎだから」
「はい、ごめ…ッ」
「ほらまた」
アヤさんが苦笑いになって僕の頭を撫で回すと、くしゃくしゃになった髪を直すように手櫛で梳きながら口を開いた。
「癖になっちゃってるみたいだから難しいかも知れないけど、少しずつ少しずつ治していこうね。ところでミケの店とゼアラの宿はシーリアの街の西地区、つまり商業区にあって、私達は今、西地区の中央部付近から港のある南東地区に向かっているんだけど、各ギルドが近いから少し走らせて貰おうかと思ってイツキに声を掛けたんだよ」
「走るんですか?」
「うん、面倒事の予感がするから素早く立ち去りたい!ってのが本音だね。じゃ、舌噛まないようにそのまましがみ付いててくれる?」
「【転移】は…しないんですか?」
「目標地点が明確じゃない状態でやると危険なんだよ。以前うっかり街中で【転移】した瞬間に馬車を撥ねちゃった事があってね…」
「え?」
撥ねられた…
じゃなくて、撥ねたの?
アヤさんの方が!?
状況が想像出来ないんだけど、どういう事なの??
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