上 下
141 / 165

138.

しおりを挟む
あ、やっぱり?

アヤさんの言葉で『人たらし』が確定したレオさんは「人聞きの悪い事を言わないで下さいよ。タラシだなんて…」と嘆いていたけど、僕はアヤさんと目が合った瞬間に無言で頷き合ってしまった。

何だろう、この心が通じ合った感じ。

「自覚が無いから余計にタチが悪いんだ。全く、これだから天然は…」

アヤさんがボヤきながらも僕を見ると、「他人事みたいな顔してるけど、イツキも結構な天然だからね?」と釘を刺してきた。

エッ!?
僕も天然って…
どういう事?
一体何が?
どこが!?

「ああ、いいよいいよイツキはそのままで。危なくないように私がちゃんと見ててあげるから。だから…」

アヤさんが言葉を切ってフェロモン全開の笑みを浮かべた。

「だからずっと私の側に居てね?」

~~~~~~ッッ!!!

ま、ま、またそんな顔して、僕を揶揄って!もう!!
どうせ僕が真っ赤になって慌てふためくのを楽しんでるんでしょ!?
ホントに、アヤさんの方がタチ悪いよ!

僕は湯気が出そうな真っ赤な顔で固まっていたら、隣でレオさんも赤面して硬直していた。

僕以外の男にも効果は抜群なのか…
アヤさんの魅了は恐ろしいな。
その気になったら、本当の意味でタラシになれるのはアヤさんの方だよね、絶対に。

「言っとくけど【魅了】のスキルは使ってないからね。そんなの使ったら神の如く崇め奉られちゃうし。しかも中途半端に使えば、うっかり強姦未遂事件にまで発展しちゃうからねぇ…全く。その気もないのに男女問わず押し倒されるのはもう・・ごめんだよ」

強姦未遂事件…
何それ怖い。
アヤさんなら難なく返り討ちにしてるんだろうけど、でも、大丈夫だったのかな?

「何?心配してくれたの?」

意外そうな、嬉しそうな顔で聞かれて僕は真顔でコクリと頷いた。
たぶん杞憂に過ぎないんだろうけど、心配なものは心配なんだから仕様がない。

繋いでいた左手を急に引かれ、よろめいた僕がアヤさんの胸に倒れ込むと、アヤさんは僕を抱き締めて、小さな声で「ありがとね」と呟いた。

何だか色んな想いが詰まってる感じの『ありがとう』だったから、僕は頷きながら繋いだ手をギュッと握り締めると、空いていた右手をアヤさんの背中に回した。

いつもとは反対だなって思いながら、アヤさんの背中をポンポンしてあげると、「ありがとうイツキ、大好きだよ」って耳元で囁かれてしまった。

普段だったら真っ赤になって倒れちゃいそうな台詞だったんだけど、どこか心底疲れたような、そんな声音だったから、僕は必死で「僕もアヤさんが大好きです」って何とか声に出して、背中に回した手に力を込めた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】魔法は使えるけど、話が違うんじゃね!?

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
「話が違う!!」  思わず叫んだオレはがくりと膝をついた。頭を抱えて呻く姿に、周囲はドン引きだ。 「確かに! 確かに『魔法』は使える。でもオレが望んだのと全っ然! 違うじゃないか!!」  全力で世界を否定する異世界人に、誰も口を挟めなかった。  異世界転移―――魔法が使え、皇帝や貴族、魔物、獣人もいる中世ヨーロッパ風の世界。簡易説明とカミサマ曰くのチート能力『魔法』『転生先基準の美形』を授かったオレの新たな人生が始まる!  と思ったが、違う! 説明と違う!!! オレが知ってるファンタジーな世界じゃない!?  放り込まれた戦場を絶叫しながら駆け抜けること数十回。  あれ? この話は詐欺じゃないのか? 絶対にオレ、騙されたよな?  これは、間違った意味で想像を超える『ファンタジーな魔法世界』を生き抜く青年の成長物語―――ではなく、苦労しながら足掻く青年の哀れな戦場記録である。 【注意事項】BLっぽい表現が一部ありますが、BLではありません      (ネタバレになるので詳細は伏せます) 【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう 2019年7月 ※エブリスタ「特集 最強無敵の主人公~どんな逆境もイージーモード!~」掲載 2020年6月 ※ノベルアップ+ 第2回小説大賞「異世界ファンタジー」二次選考通過作品(24作品) 2021年5月 ※ノベルバ 第1回ノベルバノベル登竜門コンテスト、最終選考掲載作品 2021年9月 9/26完結、エブリスタ、ファンタジー4位

かわいいは正義(チート)でした!

孤子
ファンタジー
 ある日、親友と浜辺で遊んでからの帰り道。ついていない一日が終わりを告げようとしていたその時に、親友が海へ転落。  手を掴んで助けようとした私も一緒に溺れ、意識を失った私たち。気が付くと、そこは全く見知らぬ浜辺だった。あたりを見渡せど親友は見つからず、不意に自分の姿を見ると、それはまごうことなきスライムだった!  親友とともにスライムとなった私が異世界で生きる物語。ここに開幕!(なんつって)

ゲーム中盤で死ぬ悪役貴族に転生したので、外れスキル【テイム】を駆使して最強を目指してみた

八又ナガト
ファンタジー
名作恋愛アクションRPG『剣と魔法のシンフォニア』 俺はある日突然、ゲームに登場する悪役貴族、レスト・アルビオンとして転生してしまう。 レストはゲーム中盤で主人公たちに倒され、最期は哀れな死に様を遂げることが決まっている悪役だった。 「まさかよりにもよって、死亡フラグしかない悪役キャラに転生するとは……だが、このまま何もできず殺されるのは御免だ!」 レストの持つスキル【テイム】に特別な力が秘められていることを知っていた俺は、その力を使えば死亡フラグを退けられるのではないかと考えた。 それから俺は前世の知識を総動員し、独自の鍛錬法で【テイム】の力を引き出していく。 「こうして着実に力をつけていけば、ゲームで決められた最期は迎えずに済むはず……いや、もしかしたら最強の座だって狙えるんじゃないか?」 狙いは成功し、俺は驚くべき程の速度で力を身に着けていく。 その結果、やがて俺はラスボスをも超える世界最強の力を獲得し、周囲にはなぜかゲームのメインヒロイン達まで集まってきてしまうのだった―― 別サイトでも投稿しております。

おおぅ、神よ……ここからってマジですか?

夢限
ファンタジー
 俺こと高良雄星は39歳の一見すると普通の日本人だったが、実際は違った。  人見知りやトラウマなどが原因で、友人も恋人もいない、孤独だった。  そんな俺は、突如病に倒れ死亡。  次に気が付いたときそこには神様がいた。  どうやら、異世界転生ができるらしい。  よーし、今度こそまっとうに生きてやるぞー。  ……なんて、思っていた時が、ありました。  なんで、奴隷スタートなんだよ。  最底辺過ぎる。  そんな俺の新たな人生が始まったわけだが、問題があった。  それは、新たな俺には名前がない。  そこで、知っている人に聞きに行ったり、復讐したり。  それから、旅に出て生涯の友と出会い、恩を返したりと。  まぁ、いろいろやってみようと思う。  これは、そんな俺の新たな人生の物語だ。

異世界召喚されたのは、『元』勇者です

ユモア
ファンタジー
突如異世界『ルーファス』に召喚された一ノ瀬凍夜ーは、5年と言う年月を経て異世界を救った。そして、平和まで後一歩かと思ったその時、信頼していた仲間たちに裏切られ、深手を負いながらも異世界から強制的に送還された。 それから3年後、凍夜はクラスメイトから虐めを受けていた。しかし、そんな時、再度異世界に召喚された世界は、凍夜が送還されてから10年が経過した異世界『ルーファス』だった。自分を裏切った世界、裏切った仲間たちがいる世界で凍夜はどのように生きて行くのか、それは誰にも分からない。

わたくし、前世では世界を救った♂勇者様なのですが?

自転車和尚
ファンタジー
【タイトル】 わたくし、前世では世界を救った♂勇者様なのですが? 〜魔王を倒し世界を救った最強勇者様だったこの俺が二度目の転生で、超絶美少女貴族に生まれ変わってしまった。一体これからどうなる私のTS貴族令嬢人生!? 【あらすじ】 「どうして俺こんな美少女令嬢に生まれ変わってんの?!」 日本の平凡な男子大学生が転生し、異世界『レーヴェンティオラ』を救う運命の勇者様となったのはもう二〇年も前。 この世界を脅かす魔王との最終決戦、終始圧倒するも相打ちとなった俺は死後の世界で転生させてくれた女神様と邂逅する。 彼女は俺の偉業を讃えるとともに、神界へと至る前に女神が管理する別の異世界『マルヴァース』へと転生するように勧めてきた。 前回の反省点から生まれは貴族、勇者としての能力はそのままにというチート状態での転生を受け入れた俺だが、女神様から一つだけ聞いてなかったことがあるんだ……。 目の前の鏡に映る銀髪、エメラルドグリーンの目を持つ超絶美少女……辺境伯家令嬢「シャルロッタ・インテリペリ」が俺自身? どういうことですか女神様! 美少女転生しても勇者としての能力はそのまま、しかも美少女すぎて国中から讃えられる「辺境の翡翠姫(アルキオネ)」なんて愛称までついてしまって……ちょっとわたくし、こんなこと聞いてないんですけど? そんなシャルロッタが嘆く間も無く、成長するに従ってかけがえの無い仲間との邂逅や、実はこの世界を狙っている邪悪な存在が虎視眈々と世界征服を狙っていることに気がつき勇者としての力を発揮して敵を打ち倒していくけど……こんな化け物じみた力を貴族令嬢が見せたらまずいでしょ!? 一体どうなるの、わたくしのTSご令嬢人生!? 前世は♂勇者様だった最強貴族令嬢の伝説が、今幕を開ける。 ※本作は小説家になろう、カクヨム、アルファポリスに同時掲載を行なっております。

ご期待に沿えず、誠に申し訳ございません

野村にれ
恋愛
人としての限界に達していたヨルレアンは、 婚約者であるエルドール第二王子殿下に理不尽とも思える注意を受け、 話の流れから婚約を解消という話にまでなった。 ヨルレアンは自分の立場のために頑張っていたが、 絶対に婚約を解消しようと拳を上げる。

収容所生まれの転生幼女は、囚人達と楽しく暮らしたい

三園 七詩
ファンタジー
旧題:収容所生まれの転生幼女は囚人達に溺愛されてますので幸せです 無実の罪で幽閉されたメアリーから生まれた子供は不幸な生い立ちにも関わらず囚人達に溺愛されて幸せに過ごしていた…そんなある時ふとした拍子に前世の記憶を思い出す! 無実の罪で不幸な最後を迎えた母の為!優しくしてくれた囚人達の為に自分頑張ります!

処理中です...