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「あ!」
突然ナージャさんが声を上げ、僕を含めた一同がビクッと身体を震わせた。
え?何?何??
みんなが一斉にナージャさんを見れば、口を押さえて慌てふためくナージャさんの姿が目に入った。
「あ、あのッ、ごめんなさい、つい」
「全く…お前って子は、こんなタイミングで一体どうしたって言うのニャ!?」
「お二人が大事なお話をしてる最中だって事は分かってたんだけど、ふとアヤト様達は今日の宿をどうされるのかなって思ったら、つい…」
「「「あ!」」」
瞬間、アヤさんとミケーリュウスさんとルーニンが声を揃えた。
え?何?マジで何??
「不味いな、確かにそれはうっかりしてたよ」
「ええ、これは時間的にギリギリかも知れないですニャ」
僕一人分からない状態で首を傾げると、アヤさんが早口で説明してくれた。
「急がないと宿の受付が終わっちゃうんだ」
え?
エエーーッ!!?
「この街は治安が余り良くないって話をしたよね?だから夜になると大抵の宿屋は防犯の為に人の出入りが出来ないようにしちゃうんだよ」
「いつもアヤト様は『銀龍亭』ですニャよね?あそこの受付は8時半までですニャ!」
「アヤト様がいらしたのが6時半過ぎの7時近くでしたから、本当に不味いです!」
言われてアヤさんは僕を肩に担いで立ち上がった。
「すまないが明日また来る」
「はい、お待ちしておりますニャ」
「「アヤト様、イツキ様、おやすみなさい!」」
その声を聞いた瞬間、身体がフワリと浮いた感じがして視界が切り替わった。
そのままアヤさんは今まさに門が閉じられようとしていた瀟洒な建物に駆け込むと、呆然とアヤさんを見詰める身体の大きな狼の獣人さんに声を掛けた。
「レオ、悪いが『アヤトが来た』とゼオラを呼んで来てくれないか?」
「あ、アヤト様!?はいぃ!かしこまりましたッ!」
榛色の耳と尻尾をなびかせ、慌てて駆けて行く厳つい狼おじさんの背を見送って、待つ事2分程。
その間に僕は定位置であるアヤさんの右腕に座って放心していると、この宿屋の女将らしき妖艶な女性が建物の奥から小走りでやって来て、アヤさんに深々と頭を下げたのだった。
「大変お待たせ致しまして申し訳ございませんでした、アヤト様」
「いや、こんなギリギリの時間にすまない。でも間に合って本当に助かった。いつもの部屋は空いているか?」
「はい、大丈夫でございます。すぐに準備を整えますので中のロビーにて少々お待ち下さいませ」
女将はそう言うと、慌てて狼さんに「レオニード、門と入口扉の施錠を宜しくお願い」と声を掛け、再び小走りで奥へと消えて行った。
僕は余りの展開の早さに付いていけず、アヤさんの右腕に座ったまま固まっていると、悪戯っ子みたいな顔をしてアヤさんがニヤリと笑った。
突然ナージャさんが声を上げ、僕を含めた一同がビクッと身体を震わせた。
え?何?何??
みんなが一斉にナージャさんを見れば、口を押さえて慌てふためくナージャさんの姿が目に入った。
「あ、あのッ、ごめんなさい、つい」
「全く…お前って子は、こんなタイミングで一体どうしたって言うのニャ!?」
「お二人が大事なお話をしてる最中だって事は分かってたんだけど、ふとアヤト様達は今日の宿をどうされるのかなって思ったら、つい…」
「「「あ!」」」
瞬間、アヤさんとミケーリュウスさんとルーニンが声を揃えた。
え?何?マジで何??
「不味いな、確かにそれはうっかりしてたよ」
「ええ、これは時間的にギリギリかも知れないですニャ」
僕一人分からない状態で首を傾げると、アヤさんが早口で説明してくれた。
「急がないと宿の受付が終わっちゃうんだ」
え?
エエーーッ!!?
「この街は治安が余り良くないって話をしたよね?だから夜になると大抵の宿屋は防犯の為に人の出入りが出来ないようにしちゃうんだよ」
「いつもアヤト様は『銀龍亭』ですニャよね?あそこの受付は8時半までですニャ!」
「アヤト様がいらしたのが6時半過ぎの7時近くでしたから、本当に不味いです!」
言われてアヤさんは僕を肩に担いで立ち上がった。
「すまないが明日また来る」
「はい、お待ちしておりますニャ」
「「アヤト様、イツキ様、おやすみなさい!」」
その声を聞いた瞬間、身体がフワリと浮いた感じがして視界が切り替わった。
そのままアヤさんは今まさに門が閉じられようとしていた瀟洒な建物に駆け込むと、呆然とアヤさんを見詰める身体の大きな狼の獣人さんに声を掛けた。
「レオ、悪いが『アヤトが来た』とゼオラを呼んで来てくれないか?」
「あ、アヤト様!?はいぃ!かしこまりましたッ!」
榛色の耳と尻尾をなびかせ、慌てて駆けて行く厳つい狼おじさんの背を見送って、待つ事2分程。
その間に僕は定位置であるアヤさんの右腕に座って放心していると、この宿屋の女将らしき妖艶な女性が建物の奥から小走りでやって来て、アヤさんに深々と頭を下げたのだった。
「大変お待たせ致しまして申し訳ございませんでした、アヤト様」
「いや、こんなギリギリの時間にすまない。でも間に合って本当に助かった。いつもの部屋は空いているか?」
「はい、大丈夫でございます。すぐに準備を整えますので中のロビーにて少々お待ち下さいませ」
女将はそう言うと、慌てて狼さんに「レオニード、門と入口扉の施錠を宜しくお願い」と声を掛け、再び小走りで奥へと消えて行った。
僕は余りの展開の早さに付いていけず、アヤさんの右腕に座ったまま固まっていると、悪戯っ子みたいな顔をしてアヤさんがニヤリと笑った。
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