53 / 165
52.
しおりを挟む
目を覚ますと、僕は以前と同じ部屋でフカフカのベッドに寝かされていた。
出窓から射し込む光は昨日と同じ朝日のソレで、何度か瞬きをしてから天井を見れば、前に見付けた木目の猫を再び発見して僕はベッドから飛び起きた。
アヤさん!!
慌ててベッドから降りると、立ち眩みでよろめいて膝を床に強打して蹲る。
い、痛いぃ…
って、何やってるんだ僕は!
涙目で立ち上がると、そこにはアヤさんがドアを開けて駆け寄って来る所だった。
「大丈夫!?今ゴンって凄い音がしたけど…」
そう言われて僕はアヤさんに飛び付くようにしてしがみ付いた。
本物だ。
アヤさんだ。
ちゃんとアヤさんが居る…
安心したら膝がジンジンしてきて、僕は思わずアヤさんに抱き付いたまま呻くように呟いてしまった。
「アヤさ……ひざ…」
「あーあ、これ酷い痣になるよ。治しとこうか?」
アヤさんは笑いを含んだ優しい声で僕の背中をポンポンしながら、僕を抱っこして立ち上がると、ベッドに座らせようと腰を屈めた。
だけど僕はベッドに降りたくなくてギュッとしがみ付いて離さずにいると、アヤさんは笑いながら僕を右腕に座らせてくれた。
アヤさんの首筋に顔を埋めて暫くくっ付いていると、漸く落ち着いてきて…
我に返った僕は真っ赤になってから下ろしてくれと暴れ始めた。
うわ、
うわ、
何やってんの僕!!
「こら、危ないから暴れないの!ちょっと落ち着いてジッとしてな」
背中をポンポンされて大人しくすると、アヤさんは左手を緑の光で包んでから僕の膝にそっと手を当てた。
痛みがスゥーっと引いていき、内出血して既に赤黒くなっていた膝はすっかり元通りに治して貰えた。
「…ありがとうございます」
僕が慌ててお礼を言うと、アヤさんは嬉しそうに笑って、僕の頭を撫でてくれた。
「うん、綺麗に治って良かったよ。それより顔を洗ってご飯を食べよう。イツキったら昨日は胃が空っぽの状態で寝ちゃったからね。一応卵雑炊にしといたんだよ。お腹空いただろう?」
言われて僕はコクコクと頷いた。
実は恥ずかしながら、さっきから小さくお腹が鳴っていたのだ。
アヤさんは僕を抱っこしたまま部屋を出ると、階段を降り始めた。
もう下ろして歩かせる気が無いらしく、僕も諦めて抱っこされるがままでいた。
だって、誰も見てないし…
そう思ってから、僕は首を傾げた。
何だろう…
変な感じがする。
妙に背中がゾワゾワして落ち着かない。
僕の異変に気付いたのか、アヤさんは歩みを止めて僕の顔を覗き込んできた。
「どうしたの?」
聞かれても上手く言えそうもなくて、僕は黙って俯くと、アヤさんは困った顔をしてから僕に言った。
「ちゃんとした言葉にしなくてもいいから、思った事を声に出して教えて?」
言われて僕は少し考え込んで、重い口を開いた。
「…背中、ゾワゾワする。変な感じ。分からない。怖い感じが近くに…あるような?…分からない」
思い付いた事を声にすると、アヤさんは難しい顔をしてから僕の頭を撫でた。
出窓から射し込む光は昨日と同じ朝日のソレで、何度か瞬きをしてから天井を見れば、前に見付けた木目の猫を再び発見して僕はベッドから飛び起きた。
アヤさん!!
慌ててベッドから降りると、立ち眩みでよろめいて膝を床に強打して蹲る。
い、痛いぃ…
って、何やってるんだ僕は!
涙目で立ち上がると、そこにはアヤさんがドアを開けて駆け寄って来る所だった。
「大丈夫!?今ゴンって凄い音がしたけど…」
そう言われて僕はアヤさんに飛び付くようにしてしがみ付いた。
本物だ。
アヤさんだ。
ちゃんとアヤさんが居る…
安心したら膝がジンジンしてきて、僕は思わずアヤさんに抱き付いたまま呻くように呟いてしまった。
「アヤさ……ひざ…」
「あーあ、これ酷い痣になるよ。治しとこうか?」
アヤさんは笑いを含んだ優しい声で僕の背中をポンポンしながら、僕を抱っこして立ち上がると、ベッドに座らせようと腰を屈めた。
だけど僕はベッドに降りたくなくてギュッとしがみ付いて離さずにいると、アヤさんは笑いながら僕を右腕に座らせてくれた。
アヤさんの首筋に顔を埋めて暫くくっ付いていると、漸く落ち着いてきて…
我に返った僕は真っ赤になってから下ろしてくれと暴れ始めた。
うわ、
うわ、
何やってんの僕!!
「こら、危ないから暴れないの!ちょっと落ち着いてジッとしてな」
背中をポンポンされて大人しくすると、アヤさんは左手を緑の光で包んでから僕の膝にそっと手を当てた。
痛みがスゥーっと引いていき、内出血して既に赤黒くなっていた膝はすっかり元通りに治して貰えた。
「…ありがとうございます」
僕が慌ててお礼を言うと、アヤさんは嬉しそうに笑って、僕の頭を撫でてくれた。
「うん、綺麗に治って良かったよ。それより顔を洗ってご飯を食べよう。イツキったら昨日は胃が空っぽの状態で寝ちゃったからね。一応卵雑炊にしといたんだよ。お腹空いただろう?」
言われて僕はコクコクと頷いた。
実は恥ずかしながら、さっきから小さくお腹が鳴っていたのだ。
アヤさんは僕を抱っこしたまま部屋を出ると、階段を降り始めた。
もう下ろして歩かせる気が無いらしく、僕も諦めて抱っこされるがままでいた。
だって、誰も見てないし…
そう思ってから、僕は首を傾げた。
何だろう…
変な感じがする。
妙に背中がゾワゾワして落ち着かない。
僕の異変に気付いたのか、アヤさんは歩みを止めて僕の顔を覗き込んできた。
「どうしたの?」
聞かれても上手く言えそうもなくて、僕は黙って俯くと、アヤさんは困った顔をしてから僕に言った。
「ちゃんとした言葉にしなくてもいいから、思った事を声に出して教えて?」
言われて僕は少し考え込んで、重い口を開いた。
「…背中、ゾワゾワする。変な感じ。分からない。怖い感じが近くに…あるような?…分からない」
思い付いた事を声にすると、アヤさんは難しい顔をしてから僕の頭を撫でた。
0
お気に入りに追加
200
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。
辺境に住む元Cランク冒険者である俺の義理の娘達は、剣聖、大魔導師、聖女という特別な称号を持っているのに何歳になっても甘えてくる
マーラッシュ
ファンタジー
俺はユクト29歳元Cランクの冒険者だ。
魔物によって滅ぼされた村から拾い育てた娘達は15歳になり女神様から剣聖、大魔導師、聖女という特別な称号を頂いたが⋯⋯しかしどこを間違えたのか皆父親の俺を溺愛するようになり好きあらばスキンシップを取ってくる。
どうしてこうなった?
朝食時三女トアの場合
「今日もパパの為に愛情を込めてご飯を作ったから⋯⋯ダメダメ自分で食べないで。トアが食べさせてあげるね⋯⋯あ~ん」
浴室にて次女ミリアの場合
「今日もお仕事お疲れ様。 別に娘なんだから一緒にお風呂に入るのおかしくないよね? ボクがパパの背中を流してあげるよ」
就寝時ベットにて長女セレナの場合
「パパ⋯⋯今日一緒に寝てもいい? 嫌だなんて言わないですよね⋯⋯パパと寝るのは娘の特権ですから。これからもよろしくお願いします」
何故こうなってしまったのか!?
これは15歳のユクトが3人の乳幼児を拾い育て、大きくなっても娘達から甘えられ、戸惑いながらも暮らしていく物語です。
☆第15回ファンタジー小説大賞に参加しています!【投票する】から応援いただけると更新の励みになります。
*他サイトにも掲載しています。
最強勇者に転生したオレと、悪役令嬢に転生した私が異世界ですれ違う
遊野 優矢
ファンタジー
両思いなのに、何も進展しないまま社会人になってしまった幼なじみのケンとマリ。
彼らはとある事故で、剣と魔法の世界に転生してしまう。
ケンはモンスターを倒すほど青天井に能力が上がる勇者に、そしてマリは住民を震え上がらせる悪役令嬢に。
しかし、お互いまさか異世界転生したとは気付けない。
このままではいつ暗殺されてもおかしくないと危機感を募らせるマリは、勇者(ケン)に自分の評判を上げる手伝いを頼む。
善行を重ねようと奮闘するマリだが、転生元となった侯爵令嬢の悪行がひどすぎて、全てが裏目に出てしまう。
マリは無事に悪評を覆せるのか!?
悪役令嬢に目をつけられたとしか思っていないケンの運命は!?
はたして、2人が結ばれる日は来るのか!?
新感覚空回りすれ違いバトルラブコメ開幕です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる