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「聖女様ってのはね、イツキの想像通りイアラの事だよ。これがまた【称号】にあったのが只の『聖女』だったなら良かったんだろうけどね。聖女の前に付いた言葉が、凄くて…」
そこまで言うと、アヤさんは口を押さえて俯き、肩を震わせ始めた。
「いいのよ。その話はいいの!言わなくてもいいし、聞かなくてもいいの!」
イアラさんが不貞腐れた顔をしてプイと横を向いた。
余程言われたく無い【称号】なんだろうか…
「ねぇイツキ、『爆嵐の聖女』ってどう思う?
有り得なくない?有り得ないよね?聖女なのに『爆嵐』て!…ぷフッ」
「ンなッ!?
言わなくていいって言ったじゃない!アヤトなんて『蒼氷の勇者』の癖に!」
「…私を勇者と呼ぶな」
「アヤトが先に言ったんじゃない!急に怖い顔して低い声出さないでよ!お互い様でしょ!?」
二人は徐々にエスカレートしていき、今にも互いに掴み掛かりそうな雰囲気になった、その時。
黒銀髪に褐色の肌を持つ豊満なお胸の美人エルフさんがツカツカと近づいて来て、咥えていた煙管の煙を2人に思い切り吹き掛けた。
「一体何をしておるのじゃ、この様な場所で恥ずかしい。連れの者が先刻からお前達を見てオロオロしておるじゃろうが。可哀想に…」
突然のダークエルフさん登場に固まる僕達3人。
と、煙管の煙が僕に当たらないよう気を付けながら、ダークエルフのお姉サマが僕の顔を見て艶然と一笑した。
「初めまして、じゃな。儂の名はクィーリャ・ハーシィじゃ。お前さんの名を教えて貰っても良いかの?」
いきなり話し掛けられた僕は緊張でクィーリャさんの顔に視線を固定したままの状態で止まっていると、我に返ったアヤさんが素早く僕とクィーリャさんの間に立ち塞がってくれた。
「クィーリャ様、この子はとても人見知りなので、申し訳ないがそれ以上は近付かないでやって下さい。硬直して喋れなくなってしまうので」
「何じゃ、難儀なヤツじゃの」
「本当にやめて下さい。本気で怯えますから」
「あい分かった。で、名は何と言うのじゃ?」
立ち塞がるアヤさんをヒョイと押し退け、僕を覗き込んでクィーリャさんが声を掛けてきた。
凄い。
クィーリャさんって、人の話を聞かない人だ…
やめろと言われた事を了承した直後、飄々とやってしまったクィーリャさんという人物に、驚きつつもほんの少しだけ興味を持った僕は、おずおずと頭を下げた。
「イツキ…です。宜しくお願いします」
「ふむ。声は小さいが挨拶はきちんと出来るようじゃな。アヤトよ、お前さん過保護が過ぎるのも良くないぞ?」
そこまで言うと、アヤさんは口を押さえて俯き、肩を震わせ始めた。
「いいのよ。その話はいいの!言わなくてもいいし、聞かなくてもいいの!」
イアラさんが不貞腐れた顔をしてプイと横を向いた。
余程言われたく無い【称号】なんだろうか…
「ねぇイツキ、『爆嵐の聖女』ってどう思う?
有り得なくない?有り得ないよね?聖女なのに『爆嵐』て!…ぷフッ」
「ンなッ!?
言わなくていいって言ったじゃない!アヤトなんて『蒼氷の勇者』の癖に!」
「…私を勇者と呼ぶな」
「アヤトが先に言ったんじゃない!急に怖い顔して低い声出さないでよ!お互い様でしょ!?」
二人は徐々にエスカレートしていき、今にも互いに掴み掛かりそうな雰囲気になった、その時。
黒銀髪に褐色の肌を持つ豊満なお胸の美人エルフさんがツカツカと近づいて来て、咥えていた煙管の煙を2人に思い切り吹き掛けた。
「一体何をしておるのじゃ、この様な場所で恥ずかしい。連れの者が先刻からお前達を見てオロオロしておるじゃろうが。可哀想に…」
突然のダークエルフさん登場に固まる僕達3人。
と、煙管の煙が僕に当たらないよう気を付けながら、ダークエルフのお姉サマが僕の顔を見て艶然と一笑した。
「初めまして、じゃな。儂の名はクィーリャ・ハーシィじゃ。お前さんの名を教えて貰っても良いかの?」
いきなり話し掛けられた僕は緊張でクィーリャさんの顔に視線を固定したままの状態で止まっていると、我に返ったアヤさんが素早く僕とクィーリャさんの間に立ち塞がってくれた。
「クィーリャ様、この子はとても人見知りなので、申し訳ないがそれ以上は近付かないでやって下さい。硬直して喋れなくなってしまうので」
「何じゃ、難儀なヤツじゃの」
「本当にやめて下さい。本気で怯えますから」
「あい分かった。で、名は何と言うのじゃ?」
立ち塞がるアヤさんをヒョイと押し退け、僕を覗き込んでクィーリャさんが声を掛けてきた。
凄い。
クィーリャさんって、人の話を聞かない人だ…
やめろと言われた事を了承した直後、飄々とやってしまったクィーリャさんという人物に、驚きつつもほんの少しだけ興味を持った僕は、おずおずと頭を下げた。
「イツキ…です。宜しくお願いします」
「ふむ。声は小さいが挨拶はきちんと出来るようじゃな。アヤトよ、お前さん過保護が過ぎるのも良くないぞ?」
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