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未練がましく空になったコップの縁を唇に当てたまま、俯いてそんな事を考えていたら、隣に座っていたアヤトさんが僕の旋毛つむじをツンツンとつついて水筒を差し出してきた。

「おかわり、要る?」

僕は驚いて弾かれたように顔を上げると、アヤトさんからお見通しとばかりに、笑いを含んだ声で言われてしまうのだった。

この人、もしかして心が読めるんじゃないだろうか?
いや、でも、だったら名前とか聞かれたのは変だし…

コップにジュースのおかわりを貰いながら、僕はおずおずアヤトさんを見ていると、彼は笑いながら種明かしをしてくれた。

「イツキは分かりやす過ぎるんだよ。さっきから思ってる事が全部顔や態度に出てるからね」

え?マジで??

僕は思わず左手で自分の顔を撫でてしまう。

するとアヤトさんは我慢出来ないとばかりに吹き出して笑い始めた。

失敬な。
この人、物凄~くイケメンなのに思ったよりずっと、笑い上戸なのかもしれない…
なまじ整った顔立ちのせいか、黙っていると近寄り難い印象すら受けるくらいなのに、さっきから残念イケメンというか何というか。

でも…
以前の僕は周りの人間から「無表情」「無気力」「無口」「何を考えているのか本当に分からない」等々言われ続けていたから、分かりやすいなんて言われたのは実に心外だった。
もちろん悪い意味ではなく、だけれど。

「さてイツキ、少し大事な話をしよう」

急に笑みを消し、アヤトさんが僕の正面に移動してからしゃがみ、俯きがちな僕を見上げるようにして視線を合わせてきた。
とてもとても真剣な、目。
僕は他人と目を合わせるのが、実は物凄く嫌いだ。むしろ恐怖を感じると言ってもいい程だ。
だけど…
思わずゴクリと喉を鳴らして、それでも僕は小さく頷いた。

「イツキは…
この世界の人間ではないよね?どうして、何故あんな場所に居たのか、教えて欲しいんだ」

どうしよう…

ダンプカーに撥ねられて気が付いたら見知らぬ森の中に転がってました。

なんて、こんな怪しい話、本当に言ってしまっても大丈夫なんだろうか。
でも僕はアヤトさんに信じてもらえるような物を何一つ持ってはいない。
学校の鞄も、携帯も、何も…

あ!

僕はポケットに手を突っ込んだ。
勢い良く取り出したのは喫茶店のコーヒーチケットと伝票。
これは流石にナイ、な…

出した物を仕舞おうとして、突然アヤトに手首を掴まれて驚いた。

「これ、【ソレイユ】のコーヒーチケット!?」

アヤトさんから飛び出した言葉に僕は思わず目を剥く。

なんて?なんで?



イマ、コノヒト、ナンテイッタ?
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