魔導使い(打ち切り)

さきくさゆり

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第一章

プロローグ

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「くだらん。なんだこの酷い論文は。何が新進気鋭の若きエリートだ。くだらなさすぎる」

 そう自室で一人喋っているのは、ひいらぎまこと
 なんてことない中学二年の日本男児……ではない。

 確かに見た目は普通だ。
 毎日欠かさず行っている運動でしまっている身体。
 定期的にカットしている見事なまでのスポーツ刈り。
 平均より少し高めの身長。
 ド近眼なためかけている黒縁メガネ。


 だが、この男。
 父は天才物理学者、母は天才外科医という超絶エリート両親を持つ大天才なのである。
 そのおかげか違うのかは分からないが、幼い頃から相当勉強ができた。
 親は当然喜び、息子の求めるままにあらゆる知識を与えた。

 そして月日は流れ、今では立派な息子にな……ることはなかった。

 凄まじいほどに頭はよくなったが、凄まじいほどに周りを見下すようになったのだ。

 父はそんな息子に色々と手を尽したが、中学生の息子に自身が書いた自信作の論文をこれでもかとこき下ろされ、息子が怖くなり家に帰らなくなった。
 母もやはり色々と手を尽したが、やはり同じくダメ出しをくらい意気消沈……することはなく、むしろ息子を利用することを思いついた。が、それを見抜かれた息子に騙され病院を首にされて、やはり同じく家を出ていった。

 そして誠は、両親が家を出ていったことを機に一人暮らしを始めた。
 だが誠は、父親から毎月生活費が振り込まれてくるのに、それには一切手を付けずに生活している。誠は株で相当儲けていたから、生活費には全く困らなかったのだ。

 そして現在中学二年となった誠は、

「あーー全くもってありえん。このくだらない世界はどうにかならんものか」

 この素晴らしい世界をくだらないと一蹴し、勝手に一人で嘆いている。


 *****


 誠が自室で一人嘆いていると、不意にインターホンが鳴った。
 それを無視して誠は先程くだらないと言い捨てた論文を机にほかり、ベッドに横になろうとした。が、また鳴るインターホン。それも何度も何度も何度も何度も。

 それを聞いた誠は、どこか嬉しそうに見えなくもない表情でドアに向かう。
 除き穴で外の人物を確認し、顔を少し手でグニグニとした後でドアを開けた。

「何度も鳴らすなと何度も言わせるな」
「一回で出てこないマコちゃんが悪いんだよ!」

 誠の肩ぐらいの身長の女の子が腰に手を当てて立っていた。
 ショートカットの茶色がかった髪、健康的に焼けた肌。
 誠が住んでいるアパートの大家の娘で、同じ中学の二年生。
 名前は神崎かんざき美空みく

「というか、今日は私と図書館に行く約束なんだけど?」
「あーうん忘れてないぞ。すぐ着替えるから待っていろ」
「わかったけど早くしてね。あと暑いから中に入れて」

 現在八月二十日。夏真っ只中。しかもこの地域は盆地なため凄まじい暑さになるのだ。
 なんせ、吹いている風が熱風になるくらいなのだから。
 日陰にいても汗が止まらない。

「入ってお茶飲んで待ってろ。すぐ着替える」
「わーい!」

 そして誠は美空を中に入れてドアを閉めた。


 すぐに、お気に入りのジャージに着替える。

「さあ行くぞ」
「なんかえらそー」
「なんだと?!あ、ところで宿題は終わったか?よかったら見てやらんでもないぞ?」
「あー……今年はいいや。うん今年は自力でやる。いつまでもマコちゃんに助けてもらってちゃ駄目だからね」
「なるほど……確かにそうだな。うんそうだ。神崎も将来を見据えて努力しているのだな」
「う、うん!」

 そう言い聞かせるように誠は話を続けたが、内心はかなり落ち込んでいる。
 美空とは小学生の時からの幼馴染で、誠は美空に好意を持っていた。その為、毎年恒例の一緒に宿題をするというのは、誠にとってこのくだらない世界での唯一の癒やしでもあった。それが今年は無いのだ。そりゃあ落ち込むのだが、それを悟られるのはプライドが許さず、つい虚勢を張ってしまっていた。

「まあ何かわからないことがあればなんでも聞いてくれ。なんだって答えてやろう」
「ありがとう!さ、もう行こう!」
「そうだな」

 まだ昼の十二時。

 この時、まだ誠はこのくだらない人生が一生続くのかと思っていた。
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