異世界シスターに癒されています

さきくさゆり

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太陽とミエガさんのお仕事

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 ミエガさんの朝は早い、ということを知った俺は、ミエガさんに頼んで朝起こしてもらうことにした。
 どうしても見たいと頼み込むことで許してもらったのだ。
 がまあ。

「まさか日の出前に起きることになるとなんて」
「ですから朝早いと申し上げましたのに」

 時計を見ると朝五時半ごろのようだ。
 なかなか肌寒く、俺もミエガさんも一緒に毛布に包まっている。

「そう言えば、時間の概念って一緒ですよね」
「そのようでございますね。もしかしたらユズル様の世界とわたくしが住まう世界は並行世界の関係なのかもしれませんよ」
「ああなるほど」

 ってことはここは地球のどこかってことか。
 時代は謎だが少なくとも現代では無いとは言い切っていいだろう。

「あ、そろそろ日の出でございます」

 言われてミエガさんと同じ方向を見ると、薄黒い空が広がっている。
 遠くまで広がる平原とその先の森や小さく見える小山。
 地平線、というには障害物が多い気もするが、とにかくその線が橙色に染まり始めた。

「ミエガさ……」

 横にいたミエガさんは、するりと毛布から抜け出して跪いた。
 被り物から少しはみ出た銀色は、より一層美しく光る。
 微笑を浮かべて目を瞑る姿は、俺の背中にぞくりと何かを走らせた。
 やがて橙が横に広がっていき、黄色になり始め、そしてついに黄色い太陽の先が現れた時には、空が青く染まっていた。

「ぉぉ…………」

 声になる直前見たいな音が喉から落ちる。
 たまに気がつくと会社で見ていた日の出とは全く違う、今日の始まりを教えてくれるそんな朝日。
 それに照らされているシスターは。
 なんだかとても神々しかった。


 *****


 朝のお祈り? が終わると今度は朝食。
 その後、教会内の掃除だ。
 場所は毎日するところと、一週間に一度づつする場所がある。
 今日は床のあと、前面の椅子の拭き掃除だそうだ。
 決して大きい教会では無いが、かと言って一人で大丈夫なのか聞くと、むしろやることが掃除しかないから大変では無いという。
 今日はないが、たまに洗濯もしないといけないのだが、それもやはり問題は無いとのこと。

「十年もやっていれば流石に慣れております」

 と言いきった彼女の掃除は、まあ本当に手際が良く、手伝わないことが手伝いになるレベルだった。


 *****


 昼食も終え、二人でのんびりとお茶を飲む。
 飲ませてもらっているとも言えるのだがね。

「この後は何も無いんですか?」
「ええ。人もいらっしゃらないので、いつもは読書しておりましたが、ここ一ヶ月はユズル様がおられますから」

 俺がいるから本が読めないってことか?

「毎日ユズル様を見ていられて幸せでございます」
「っ……! そ、そういえば朝のお祈りって何か理由があるんですか?」

 ドキッとした事を誤魔化して、俺は話を逸らした。

わたくし達がいるこの国では、昔から太陽を大切にしているのです」

 この国は、冬の日の出から日の入りが極端に短いらしい。
 しかもやたら曇りや雪の日が多く、気が滅入ってしまう人も多いそうだ。
 だからなのか、国民のほとんどが春から夏にかけての太陽がかなり神聖なものだと言う。

「これに関しましては、もはや宗教などは関係なく感謝するものなのです」
「なるほど」
「ちなみに来月は夏至祭があるのですが、その日は一年で最も日の入りから日の出が短い日なのです」
「どのくらいなんですか?」
「十時頃には沈み、日付が変わる直前頃にようやく夜になります。ですが四時間ほどですぐに日が昇り始めるのです」
「はやっ!」

いやまて。
そう言えば日の入り時間で考えていたけど今も結構遅い時間に落ちている気がする。
そう考えると、来月にはそうなってもおかしくないな。

「ですからその日は、その日の出を見るまでは起き続けているのです」
「丸一日ですか?」
「そうなりますね。一年で最も大切な二日間なのでございます」

 日本で言う所の年末年始みたいなものだろうか。
 初日の出を見るため徹夜するみたいな。
 俺にはほとんど関係なかったが。

「それに、その日の太陽は今日とは比較にならないほど美しいのでございますよ」
「それは楽しみです」

 今日のでもかなり綺麗だったわけだし、これ以上と言い切られると凄く興味が出てくる。
 その後も、ミエガさんからこの国の文化などを色々聞く事ができた。
 結婚式を教会では行わない、というかそもそも教会と結婚式になんの関係があるのかと聞かれてしまい困ってしまう、なんて事もあった。
 さらにミエガさんの好きな本の話などは、彼女の翠眼がキラッキラ輝き、非常に饒舌になるのだという事も知った。
 いつかこの世界で仕事を得ることができたら一冊プレゼントしたいと思う。
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