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恥ずかしいんです
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髪を切ってもらい、髭も剃ってもらった俺は、ミエガさんに頭を洗ってもらっていた。
座ったまま上体を前に倒して桶に向かって頭を垂らしてされるがまま。
たまに目を開けると泡が下の桶に落ちていくのが見える。
「お痒いところはございますか?」
「いえ、気持ちいいです」
「はひっ。そ、それはよかったでごじゃましゅ……」
汲んできた水を何回かかけてもらい泡を流してもらう。
「では拭きますねぇ」
そう言って俺の頭を拭いてくれるミエガさんを眺めていると、ふと思い出したことを聞いてみた。
「そう言えば私が元々着ていた服ってどうしたんですか?」
本当に今更、自分が着ている服がスーツではなくただのシャツと七分丈ほどのズボンだけを着ている事に気がついた。
今更……。
「そちらでしたら保管させていただいておりますよ」
どうやら、スーツをクリーニング屋のようなところに持って行った所、化学繊維の安物であったためか、一度拒否されたらしい。
曰く、見た事がないため下手に触りたくない、という理由だそうだ。
かと言って自分で洗うのもやはり怖いため、ひとまず保管して、定期的に埃などを払うという手入れをしてくれていたそうだ。
「そうだったんですね。ありがとうございます」
「いえいえ」
「まああれ安物なので。後で自分で適当に洗っておきますよ」
「でしたら私が洗います。いえ洗わせてくださいませ!」
鬼気迫る様子で俺に詰め寄るミエガさん。
「お、お願いします」
「はぁい! はっ、申し訳ございません……」
パッと離れてニヤけるのを我慢しているミエガさん。
まあほとんど我慢し切れていない姿は何だか可愛らしかった。
*****
夕食はマッシュポテト、白パンにミートボールだった。
ベリー系のソースがかかったポテトとミートボールは凄く美味しい。
美味しいのだが……。
「はい、どうぞ」
「あむ」
どうにもこの食べさせてもらう行為が恥ずかった。
「お口をお開けください」
「あむ」
昨日は耐えられた。
今日の朝も昼も耐え切った。
だがもう限界なのだ。
なんかもう一ヶ月の記憶が蘇れば蘇るほどに。
かと言っておそらく変に断ってもまた暴走しそうな気がするしなぁ。
「ミエガさん」
「はい」
「お願いがあるのですが……」
「なんでございましょうか?」
そう言うと彼女の翠の眼がキラキラと光り始めた。
「ちょっとお皿を貸してもらえますか? 後フォークも」
「それは出来かねます」
おかしいな。
目の光が消えたような……。
「ミエガさん?」
「ユズル様はご自分で食べなくてよろしいのですよ?」
「いやあの」
「私がいるのですからユズル様は私に全て委ねてくだされば良いのでございます」
ダメだな。
大人しく恥ずかしがるしかなさそうだ。
ん?
恥ずかしがる?
「ミエガさん。やっぱり貸してもらえますか?」
「ダメです」
「いや自分で食べるとかでは無くてですね」
「ダメです」
くっ。
ならば。
「あーん」
口を開けるとミエガさんはまた嬉しそうにフォークに刺したミートボールを俺の口に持ってきた。
その瞬間。
「「あむ」」
俺は皿のミートボールを一つ摘まんで彼女の口に突っ込んだ。
「「ごくん」」
同時に口に入れたミートボールを同時に飲み込む。
「み、ミエガさん?」
ミエガさんは俺に食べさせる時の表情のまま固まってしまった。
「あのー……ミエガさーん……?」
「ユズル様」
「……はい」
全く表情が変わらないんだけど。
「お口を開けてくださいませ」
「ミエガさん?」
「お口を」
「ミエガさん?」
「開けてくださいませ」
「ミエ……あむ」
俺がどれだけ恥ずかしいのかをわかってもらえればもしかしたらと思ったんだけれど、全く意味が無かったな。
「あむ」
「どうぞ」
「あむ」
「お口を」
「あむ」
なんか早くないか?
とか思っている間に全て食べ終えてしまう。
「では片付けて参りますね」
そう言ってミエガさんはすぐに部屋から出て行った。
座ったまま上体を前に倒して桶に向かって頭を垂らしてされるがまま。
たまに目を開けると泡が下の桶に落ちていくのが見える。
「お痒いところはございますか?」
「いえ、気持ちいいです」
「はひっ。そ、それはよかったでごじゃましゅ……」
汲んできた水を何回かかけてもらい泡を流してもらう。
「では拭きますねぇ」
そう言って俺の頭を拭いてくれるミエガさんを眺めていると、ふと思い出したことを聞いてみた。
「そう言えば私が元々着ていた服ってどうしたんですか?」
本当に今更、自分が着ている服がスーツではなくただのシャツと七分丈ほどのズボンだけを着ている事に気がついた。
今更……。
「そちらでしたら保管させていただいておりますよ」
どうやら、スーツをクリーニング屋のようなところに持って行った所、化学繊維の安物であったためか、一度拒否されたらしい。
曰く、見た事がないため下手に触りたくない、という理由だそうだ。
かと言って自分で洗うのもやはり怖いため、ひとまず保管して、定期的に埃などを払うという手入れをしてくれていたそうだ。
「そうだったんですね。ありがとうございます」
「いえいえ」
「まああれ安物なので。後で自分で適当に洗っておきますよ」
「でしたら私が洗います。いえ洗わせてくださいませ!」
鬼気迫る様子で俺に詰め寄るミエガさん。
「お、お願いします」
「はぁい! はっ、申し訳ございません……」
パッと離れてニヤけるのを我慢しているミエガさん。
まあほとんど我慢し切れていない姿は何だか可愛らしかった。
*****
夕食はマッシュポテト、白パンにミートボールだった。
ベリー系のソースがかかったポテトとミートボールは凄く美味しい。
美味しいのだが……。
「はい、どうぞ」
「あむ」
どうにもこの食べさせてもらう行為が恥ずかった。
「お口をお開けください」
「あむ」
昨日は耐えられた。
今日の朝も昼も耐え切った。
だがもう限界なのだ。
なんかもう一ヶ月の記憶が蘇れば蘇るほどに。
かと言っておそらく変に断ってもまた暴走しそうな気がするしなぁ。
「ミエガさん」
「はい」
「お願いがあるのですが……」
「なんでございましょうか?」
そう言うと彼女の翠の眼がキラキラと光り始めた。
「ちょっとお皿を貸してもらえますか? 後フォークも」
「それは出来かねます」
おかしいな。
目の光が消えたような……。
「ミエガさん?」
「ユズル様はご自分で食べなくてよろしいのですよ?」
「いやあの」
「私がいるのですからユズル様は私に全て委ねてくだされば良いのでございます」
ダメだな。
大人しく恥ずかしがるしかなさそうだ。
ん?
恥ずかしがる?
「ミエガさん。やっぱり貸してもらえますか?」
「ダメです」
「いや自分で食べるとかでは無くてですね」
「ダメです」
くっ。
ならば。
「あーん」
口を開けるとミエガさんはまた嬉しそうにフォークに刺したミートボールを俺の口に持ってきた。
その瞬間。
「「あむ」」
俺は皿のミートボールを一つ摘まんで彼女の口に突っ込んだ。
「「ごくん」」
同時に口に入れたミートボールを同時に飲み込む。
「み、ミエガさん?」
ミエガさんは俺に食べさせる時の表情のまま固まってしまった。
「あのー……ミエガさーん……?」
「ユズル様」
「……はい」
全く表情が変わらないんだけど。
「お口を開けてくださいませ」
「ミエガさん?」
「お口を」
「ミエガさん?」
「開けてくださいませ」
「ミエ……あむ」
俺がどれだけ恥ずかしいのかをわかってもらえればもしかしたらと思ったんだけれど、全く意味が無かったな。
「あむ」
「どうぞ」
「あむ」
「お口を」
「あむ」
なんか早くないか?
とか思っている間に全て食べ終えてしまう。
「では片付けて参りますね」
そう言ってミエガさんはすぐに部屋から出て行った。
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