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プロローグ
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顔だけはやたらと良い上司にボロカスに言われながら、キーボードの上の手は止めない。
器用と褒めるか、それとも身体がおかしくなっていると病院を勧めるべきか。
そんな気分で俺は俺を見ている。
夢だという事は察している。
俺の記憶では確かこの上司から回されたバグ取りを延々と繰り返していたはずだからだ。
誇張抜きで一睡も出来ず、まともな食事も取れずな一週間だったから、おそらく今俺はキーボードを枕に気絶しているのだろう。
それにしても、夢の中ですら仕事をしているのか俺は。
やめときゃいいのに。
あ、そこ間違っ……まいっか。
夢だし。
気がつけば上司もいなくなり、俺は1人黙々と作業を続けていた。
小汚い髭にギトギトの髪。
隈と真っ赤な目。
欠けた頬。
涎たれかけの半開き口。
ふむ。
映画のゾンビの方がいくらかマシな顔だな。
そろそろ限界だろうかと思った途端、手が止まった。
そして。
俺はキーボードに顔面を叩きつけ……。
目が覚めると、俺はあまりにも謎が多すぎて二度寝した。
いやしようとした。
持ち上げた上半身を戻し、目を閉じ、大きく深呼吸。
さて。
俺は今、やたらとふかふかで良い香りの布団に包まれている。
体感的に高く感じる天井は乳白色。
窓からは陽の光が入ってきていて、庭のような物が見えていた。
そして何より俺を困惑させているのはだ。
「あ! 気がつきましたか!?」
「いえ気がついていません」
「え?」
「あ」
思わず目を閉じたまま返事をする。
「あのー……今、起き上がって……」
「ません。俺はまだ夢の中です」
「そう……ですか……」
そうだ。
俺は今夢の中なんだ。
何も見ていないし聴こえていないんだ。
「あのー……」
「ここには誰もいない俺だけこれから仕事起きなくてはならない仕事起きる俺働く……」
「あの!!」
俺は思わず目を開いてしまった。
「よくわからないのですが……。一度落ち着いてください」
被り物の横から細長い銀の髪を落とし、垂れ気味の目を細めながら、俺の右手を優しく握る女性。
「あ、はい」
これが、シスター『ミエガ・マイグス』との最初の会話だった。
器用と褒めるか、それとも身体がおかしくなっていると病院を勧めるべきか。
そんな気分で俺は俺を見ている。
夢だという事は察している。
俺の記憶では確かこの上司から回されたバグ取りを延々と繰り返していたはずだからだ。
誇張抜きで一睡も出来ず、まともな食事も取れずな一週間だったから、おそらく今俺はキーボードを枕に気絶しているのだろう。
それにしても、夢の中ですら仕事をしているのか俺は。
やめときゃいいのに。
あ、そこ間違っ……まいっか。
夢だし。
気がつけば上司もいなくなり、俺は1人黙々と作業を続けていた。
小汚い髭にギトギトの髪。
隈と真っ赤な目。
欠けた頬。
涎たれかけの半開き口。
ふむ。
映画のゾンビの方がいくらかマシな顔だな。
そろそろ限界だろうかと思った途端、手が止まった。
そして。
俺はキーボードに顔面を叩きつけ……。
目が覚めると、俺はあまりにも謎が多すぎて二度寝した。
いやしようとした。
持ち上げた上半身を戻し、目を閉じ、大きく深呼吸。
さて。
俺は今、やたらとふかふかで良い香りの布団に包まれている。
体感的に高く感じる天井は乳白色。
窓からは陽の光が入ってきていて、庭のような物が見えていた。
そして何より俺を困惑させているのはだ。
「あ! 気がつきましたか!?」
「いえ気がついていません」
「え?」
「あ」
思わず目を閉じたまま返事をする。
「あのー……今、起き上がって……」
「ません。俺はまだ夢の中です」
「そう……ですか……」
そうだ。
俺は今夢の中なんだ。
何も見ていないし聴こえていないんだ。
「あのー……」
「ここには誰もいない俺だけこれから仕事起きなくてはならない仕事起きる俺働く……」
「あの!!」
俺は思わず目を開いてしまった。
「よくわからないのですが……。一度落ち着いてください」
被り物の横から細長い銀の髪を落とし、垂れ気味の目を細めながら、俺の右手を優しく握る女性。
「あ、はい」
これが、シスター『ミエガ・マイグス』との最初の会話だった。
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