転生しました。

さきくさゆり

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第四章

女性の仁王立ちって男より男らしいよね

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「アオ……お前元の姿になってんのに、なんでかすりもしねぇんだよ……」
「師匠こそ……なにワンパンで沈んでんですか……」

 先生にフルボッコにされた俺達は、庭でぶっ倒れてグチグチ文句を言い合った。
 件の先生は庭の真ん中で整理体操をしている。

「あーくそ……。しかもこんだけやられて、外傷は痣と少し切った程度。後はただただ疲れただけとか。ありえねぇよ」
「わたしの父程では無いですが近しいものを感じました」

 それが本当ならほぼ神クラスってことか。
 化物……と言いたいところだが、ぶっちゃけ先生くらいの実力者は探そうと思えば探せる。
 ギルドの連中の中にも結構いるからな。
 ただまあ、あまり話すことはない。
 あいつらは殆ど一人で完結しているから、徒党を組むことが無いし、俺達から関わることもないからだ。
 相互不干渉を暗黙の了解としている。

「情けないなパストは。どれ、私が担いでやろう」
「おわっ?!」

 気がつけば 先生の肩に 米俵

 うん、文字通り担がれた。
 あと、アオも反対側に担がれてる。
 そのまま家の中に連れていかれ、居間の椅子の上に降ろされた。

「よし、水は飲むか?氷もいれてあるから冷たいぞ」

 いつの間にやら目の前にジョッキに入った氷水。
 俺とアオは一気飲み。

「ぶはぁっ!水が美味え!」
「疲れましたぁ!」

 復活した俺達は先生にお礼を言った。

「先生、ありがとうございました」
「クーちゃん、ホント強いですね」
「いやいや、それは私のセリフだ。やはり鬼人族は強いのだなと改めて認識したよ」
「そういえば全然驚いてませんでしたよね。何故なんですか?」
「あーそれはだな。昔、鬼人族の男に会ったことがあるんだ」

 あら、男とは珍しい。

「どこであったんです?」
「とある国の首都の広場でソイツが、「僕は鬼人族です。僕にステゴロの喧嘩で勝てたら金貨百枚差し上げます。さあどんな方でもかかってきなさい」と叫んでいてな。恥ずかしながら私もソイツに挑んだのだ。と言っても実力差がありすぎて喧嘩にもならなかったがね」

 鬼人族ってなんなんだよ……。
 今のところギリギリまともなのグン……そうでもねぇや。

「負けても負けても挑んで挑んで。その内ソイツと会うこと事態が楽しくなっていたんだ。今思うとアレは……」

 恋だったとか言ったら指差して大爆笑してやろ。

「必ず殺すという覚悟が足りなかったんだろうな。まあ結局最後まで勝てずにソイツは国に帰ってしまった……。またいつか再戦したいものだ。今なら悪くない喧嘩が出来る気がするんだ」

 おかしいだろ!
 会うこと事態が楽しくなっていたんなら、せめて親愛とかさぁ、言ってくれよぉ。
 殺意が足りないとかおかしいよぉ。

「そういえば名前はなんだったか……。聞き忘れていたな」

 もう俺は何も言わんぞ!

「わあ、いいですねぇ。私もやりたいです」

 アオは憧れの眼差しでその鬼人族の話を聞いていた。
 本当にやりかねんなコイツ。
 脱走大好きっ子だし。

「アオちゃんはまだ魔力操作と魔力量が少ないのは勿論、やはり格闘技術が足りないな。まあ、その若さでその強さだ。あと十年もすれば喧嘩旅をしても問題ないだろうと思うぞ」
「十年ですか。それだけたてばクーちゃんにも勝てます?」
「どうだろうな。だがいい勝負が出来るだろう」
「まあ十年なんて言わず、すぐにクーちゃんをぶっ飛ばしてやりますけどね!」
「そういうことは、まず一撃でもまともに当てることができてから言うように」
「はい!」

 俺は肉弾馬鹿共の話は聞きたくないので、一足先に風呂に入るため、裏庭に向かった。


「あぁ゛ー……さいこぉー……」

 風呂釜の中で足を伸ばして、顎が湯につくまで身体を沈める。
 これマジ最高。
 あ、温度は高めです。
 しかも足だけ軽く体温上昇をかければ、冷めることもないというね。
 まじ魔法便利。


「ほーお、お前にしては随分と風情のある景色ではないか。星も綺麗だ」

 …………。

 ゆっくーり振り向くと、タオル片手にマッパの先生が仁王立ちしていた。
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