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第三章
油断(クーテ視点)
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一夜明けて今日は延期した迷宮探索だ。
あれからずっとパストのことを考えている。
異様な家庭環境とそれを面白おかしく語ってしまう精神。
実際にパスト本人から聞いたわけではないし、酔った勢いもあってのことかもしれないが、それでもこれはおかしい。
教師として私はどうしたら……。
気が付けばついつい目で追ってしまう。
……チャックのことを言った方がいいのだろうか。
どうも今日のパストは注意力散漫なようだ。
人の話も全く聞いていない……いつものことのような気もするが。
とにかく何かあるといけないしちゃんと見ておかなくては。
そんな風にパストを見続けていたら。
チェニックが罠を踏み、目の前でパストが穴に落ちて、
「パスト!」
私は穴に飛び込んでいた。
*****
「あのクソボケパツキン刈り上げええええ!!!」
「いくらなんでもクラスメートにそれは無いだろ」
「ああ?!」
おお……なんて顔だ……。
「なんで」
「一緒に落ちたんだ」
「あー……」
なんだその顔。
まるで私が罠に嵌って落ちたんだなみたいな顔じゃあないか。
「ハァ……」
さらに溜息だと?
「なぜ私の顔を見て溜息をついた?」
「はぁ……」
「なぜ二回も溜息をついた?」
「俺って運が悪いんですかね」
「態度もな」
「ここどこですかねー」
誤魔化しおって。
全く何を考えてい「まあ死ねば一階に戻れますかね」るの……
「は?」
ナイフ?
「とりあえず自殺してみます」
「お、おい!待て!」
あっぶな!なんて奴だ!
「なにするんですか」
まるで止めるのが悪いみたいに睨みおって!
「当たり前だろ馬鹿者!貴様は自分の命をなんだと思っているんだ!」
大体ここがもしそういったルールの適用されない場所だったら死んでいるんだぞ!
「わかりましたよ……。帰還陣で帰ります」
ああ全く世話の焼ける……。
これだから目が離せないんだこいつは。
それから、とりあえず探索を開始すると、パストが迷いなくたったかたったか歩くので不思議に思い聞いてみると、男の勘とぬかしおった。
どうにも気になるので、あとで締め上げようと固く誓う。
休憩をはさみつつ、一時間ほど歩くと、あと少しで目的地だと言われた。
そこでせっかくの二人きりなので、歩いている時に考えていたいくつかの質問をすることにした。
例えばアイテムバックのこと。
パストが自分で作ったようだが、普通は作れるわけがない。
それを一から自分で作る、しかも市販のものよりはるかに品質のいいものを。
見た目は市販のものとい変わらないため、私たちが口を割らなければ大丈夫だろうが、もしなにかのきっかけで外部に漏れでもしたら……心配だ。
だが、自分では売る気が無いらしく、一応外部対策もしているようだった。
「俺は自分さえ良ければそれでいいんです。死にたくないですし」
するとパストがこんなことを言い出した。
「なんか、この世界って命が軽いんだか重いんだか分からないですわ」
はあ?
「いきなり何を言ってる?重いに決まっているだろ」
「重いのなら、こんなとこできて、流行ると思いますか?」
こんなところ。
魔法のおかげで疑似的とはいえ、死んで生き返る場所。
あまり考えたことは無かったが確かに言われてみれば妙な話だ。
「前から思ってましたけど、この世界って笑えるくらい矛盾してますよねー」
そう言ったパストは、どこか遠い場所を見ているような気がした。
そしてその顔が、あまりにも年齢不相応に見えて、不覚にも少し見とれてしまっていた。
*****
パストの後ろからついて広場に足を踏み入れた。
あれ?なぜ私は先ほどから奴の後ろを歩いている?
途端に私は教師として、大人として恥ずかしくなってしまった。
そんな油断のせいで、パストは腕を切られてしまった。
「人の生徒に……何をしてくれる!!」
完全に私の責任だ!
あれだけ心配だなんだと思っていながら!
だがまずは鎌の魔物を殺してからだ!
パストの左腕は二の腕の真ん中から下が無くなっていた。
回復魔法をかけてやりたいが、その暇がないな。
出血が多くなる前に始末しなければ!
だが、パストはベルトで自分で止血をし、さらに時間を稼げと叫んできたのだ。
意味が分からない。が、とにかく終わらせればいいだけのこと。
とにかく鎌の魔物を早く殺さなくてはと夢中で、気が付けば鎌の魔物は光って消えた。
「お疲れ様でーす。にしても先生強すぎというか容赦が無いというか……うん、怖いですね」
「ああ、ついな。ん?おまえ腕が!」
あれ?!
なぜだ?!
部位欠損はそんな簡単には……。
というかパストは魔法が……。
「先生、なんか出てますよ?」
「……あ、ああ」
絶対に聞き出してやる。
そう固く固く誓い私はパストと共にドロップボックスへと近づいた。
ドロップボックスから出てきたアイテムはどうも眼鏡のようだ。
パストがかけてこちらを見てくる。
ふむ、なかなかこうしてみると賢そうに見えるな。
すると突然、くだらねえもん作んな!と叫んで眼鏡を地面に叩きつけるではないか!
慌てて拾ってみたが破損している様子はない。
相当上部なようだ。
注意すると、ならかけて俺を見ろと言う。
かけてみた。
*****
気が付けば、パストがチェニックを踏みつけていた。ってやめんか!
その後、奴はさりげなくアイテムを持って帰ろうとしていたがしっかり回収した。
あれからずっとパストのことを考えている。
異様な家庭環境とそれを面白おかしく語ってしまう精神。
実際にパスト本人から聞いたわけではないし、酔った勢いもあってのことかもしれないが、それでもこれはおかしい。
教師として私はどうしたら……。
気が付けばついつい目で追ってしまう。
……チャックのことを言った方がいいのだろうか。
どうも今日のパストは注意力散漫なようだ。
人の話も全く聞いていない……いつものことのような気もするが。
とにかく何かあるといけないしちゃんと見ておかなくては。
そんな風にパストを見続けていたら。
チェニックが罠を踏み、目の前でパストが穴に落ちて、
「パスト!」
私は穴に飛び込んでいた。
*****
「あのクソボケパツキン刈り上げええええ!!!」
「いくらなんでもクラスメートにそれは無いだろ」
「ああ?!」
おお……なんて顔だ……。
「なんで」
「一緒に落ちたんだ」
「あー……」
なんだその顔。
まるで私が罠に嵌って落ちたんだなみたいな顔じゃあないか。
「ハァ……」
さらに溜息だと?
「なぜ私の顔を見て溜息をついた?」
「はぁ……」
「なぜ二回も溜息をついた?」
「俺って運が悪いんですかね」
「態度もな」
「ここどこですかねー」
誤魔化しおって。
全く何を考えてい「まあ死ねば一階に戻れますかね」るの……
「は?」
ナイフ?
「とりあえず自殺してみます」
「お、おい!待て!」
あっぶな!なんて奴だ!
「なにするんですか」
まるで止めるのが悪いみたいに睨みおって!
「当たり前だろ馬鹿者!貴様は自分の命をなんだと思っているんだ!」
大体ここがもしそういったルールの適用されない場所だったら死んでいるんだぞ!
「わかりましたよ……。帰還陣で帰ります」
ああ全く世話の焼ける……。
これだから目が離せないんだこいつは。
それから、とりあえず探索を開始すると、パストが迷いなくたったかたったか歩くので不思議に思い聞いてみると、男の勘とぬかしおった。
どうにも気になるので、あとで締め上げようと固く誓う。
休憩をはさみつつ、一時間ほど歩くと、あと少しで目的地だと言われた。
そこでせっかくの二人きりなので、歩いている時に考えていたいくつかの質問をすることにした。
例えばアイテムバックのこと。
パストが自分で作ったようだが、普通は作れるわけがない。
それを一から自分で作る、しかも市販のものよりはるかに品質のいいものを。
見た目は市販のものとい変わらないため、私たちが口を割らなければ大丈夫だろうが、もしなにかのきっかけで外部に漏れでもしたら……心配だ。
だが、自分では売る気が無いらしく、一応外部対策もしているようだった。
「俺は自分さえ良ければそれでいいんです。死にたくないですし」
するとパストがこんなことを言い出した。
「なんか、この世界って命が軽いんだか重いんだか分からないですわ」
はあ?
「いきなり何を言ってる?重いに決まっているだろ」
「重いのなら、こんなとこできて、流行ると思いますか?」
こんなところ。
魔法のおかげで疑似的とはいえ、死んで生き返る場所。
あまり考えたことは無かったが確かに言われてみれば妙な話だ。
「前から思ってましたけど、この世界って笑えるくらい矛盾してますよねー」
そう言ったパストは、どこか遠い場所を見ているような気がした。
そしてその顔が、あまりにも年齢不相応に見えて、不覚にも少し見とれてしまっていた。
*****
パストの後ろからついて広場に足を踏み入れた。
あれ?なぜ私は先ほどから奴の後ろを歩いている?
途端に私は教師として、大人として恥ずかしくなってしまった。
そんな油断のせいで、パストは腕を切られてしまった。
「人の生徒に……何をしてくれる!!」
完全に私の責任だ!
あれだけ心配だなんだと思っていながら!
だがまずは鎌の魔物を殺してからだ!
パストの左腕は二の腕の真ん中から下が無くなっていた。
回復魔法をかけてやりたいが、その暇がないな。
出血が多くなる前に始末しなければ!
だが、パストはベルトで自分で止血をし、さらに時間を稼げと叫んできたのだ。
意味が分からない。が、とにかく終わらせればいいだけのこと。
とにかく鎌の魔物を早く殺さなくてはと夢中で、気が付けば鎌の魔物は光って消えた。
「お疲れ様でーす。にしても先生強すぎというか容赦が無いというか……うん、怖いですね」
「ああ、ついな。ん?おまえ腕が!」
あれ?!
なぜだ?!
部位欠損はそんな簡単には……。
というかパストは魔法が……。
「先生、なんか出てますよ?」
「……あ、ああ」
絶対に聞き出してやる。
そう固く固く誓い私はパストと共にドロップボックスへと近づいた。
ドロップボックスから出てきたアイテムはどうも眼鏡のようだ。
パストがかけてこちらを見てくる。
ふむ、なかなかこうしてみると賢そうに見えるな。
すると突然、くだらねえもん作んな!と叫んで眼鏡を地面に叩きつけるではないか!
慌てて拾ってみたが破損している様子はない。
相当上部なようだ。
注意すると、ならかけて俺を見ろと言う。
かけてみた。
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気が付けば、パストがチェニックを踏みつけていた。ってやめんか!
その後、奴はさりげなくアイテムを持って帰ろうとしていたがしっかり回収した。
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