エリュシオンでささやいて

奏多

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第8章 Loving Voice

 12.

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 須王は、狼狽するあたしの身体を軽々と持ち上げ、彼の膝の上に後ろ向きに強制的に跨がらせた。
 今日はタイトスカートだったから、須王のズボンの上で捲り上がり、パンスト越しのショーツが見えてしまう。

「なっ! ちょっと!!」

 あまりにも恥ずかしい格好に慌ててスカートを両手が下げようとするが、その間に須王の手が器用にブラウスのボタンを外していく。

「須王、誰かくるって」

「なに? 渉に見られたくねぇって?」

「なに……んぅ」

 顎を摘ままれて、唇に噛みつくようなキスをされると同時に、ねっとりとした舌が唇にねじ込まれ、言葉を運んで奪われる。

 同時に須王は、第三ボタンまで開いたブラウスの中に手を忍び込ませ、キャミの上からブラごと、ゆっくりと胸を揉みしだいていく。

 誰が見ているかわからない。
 なにより須王は有名人だから、どんな致命傷になるかわからない。

 そう思ってその手を上から押さえれば、反対の手がさらにスカートを捲り上げて、パンスト越し太股を撫で上げる。

「ちょ……」

 暴れようとすれば須王ま唇が、あたしの耳をくちゃくちゃと音をたてて甘噛みしてくるものだから、ぞくぞくしたあたしの身体から力が抜けてしまう。

「なんであいつの手先になったんだよ」

 低く詰る声もハスキーで、睦言を囁かれているかのように錯覚してしまう。

「違……っ、そんなことはしてない」

「いつから? だから渉のことを訊きたがったのか?」

「だから違うっ、たまたま会ったから……っ、聞いていたでしょう!?」

「ああ、聞いていたさ。お前は俺の女じゃねぇって、俺が聞いているのわかってて、宣言したものな」

 話がすり替わる。
 あたしの中では別の理由があるのに、ひとつの理由にされてしまう。

「そ、それは。あたしはただ……」

「俺よりあいつがいいって?」

「誤解よ、あたしは……」

「誤解? 俺はお前を唯一無二の恋人として愛したつもりだったが、それは誤解だったって?」

「……つ、付き合うと話してなかったから、須王がそう思っていないと思ったから、ごめん……」

「言わなければ自覚がねぇと? じゃあなに、俺が棗や裕貴や三芳や小林の前でお前とは付き合ってねぇって言えばよかった? それとも隆なんてぽっと出の奴とか渉とかに、お前は俺の女じゃねぇからリボンをつけてお前にやるとでも言えばよかったのか?」

「……そ、それは……」

 嫌だ。
 須王があたしを付き合っていないと断言したら、あの愛の告白は、あのセックスはなんだったのかと思ってしまうと思う。

 それをあたしはしたんだ。
 須王に聞かせたんだ。
 
 しゅるりと音がしてネクタイが外されたと思うと、あたしの両手をあたしの後ろでひとまとめにして、ネクタイで拘束してしまう。

「須王……っ、ちょ……っ」

「俺がお前に笑って貰えるまで時間がかかったのに、あいつにはああやって可愛く笑うんだ? それで、たまたま会っただけだって?」

「渉さんは須王の身内だから……」

「名前を呼ぶな!」

 怒りの声に震え上がる。

「俺はあいつが嫌いだと、だから昔の話もしたのに」

「……っ」

「よりによってお前が、俺を裏切るなんて」

「裏切ってないっ、あたしはただ……」

「ただなんだって? そこまで俺が嫌がることをしてぇのか?」

「違……ひゃっ」

 須王がキャミを首元まで捲り上げたため、外気が直接肌にあたる。

「嫌がらせじゃねぇなら、なに、お前俺を妬かせたかったのか? それともあいつの女だと、俺に言いたくて? だから俺の女じゃねぇと、断言していたのか、二度も」

「違うって、須王、話を……ひゃああんっ」

 スカートの中に入っていた手がパンストを下ろし、あたしの内股を絶妙な触れ方で撫で上げてきたから、あたしは甘ったるい声を出してしまう。

 言わなきゃ。
 誤解だって、ちゃんと言わなきゃ。

 あたしはただ、須王が少しでも苦しまなくてすむように、誤解があったのなら解きたいと思っただけで。

「好きなのは……っ」

 須王だという言葉は、噛みつくようなキスに奪われた。
 そして彼は、ブラを前に引っ張りながら、親指の腹を揺らして胸の頂きを刺激してはぎゅっと摘まんでくる。

 びくびくする身体は口から喘ぎだけしか出さない。

「その声や顔、あいつにも見せたわけ?」

「違っ、須王だけ……っ」

 冷たい声に悲しくなるのに、胸の頂きを捏ねる手や、ショーツのクロッチをなぞる指は、とても優しくて。

「だったら戻ってくるかもしれねぇから、柚がどんな状態なのかあいつにも見せねぇとな」

 須王はあたしの足をたてると同時に、お尻からショーツごとパンストを下げた。

「やだ、誰か来たら、やだ!」

 暴れる足は、中途半端な位置で止まっているパンストとショーツが枷となり、無防備になった秘部に須王の手が滑り落ちた。

「や、駄目っ、見られる! ねぇ、須王っ!」

 くちゃくちゃと、恥ずかしい音をたててかき回される。
 
「あいつに見て貰いてぇんだろ? 柚は会社のビルで、付き合ってもねぇ男に濡らしてるんだものな」

「つ、付き合うって話してなかったからっ、だからそうなのかなと思っただけ。ごめんっ」

「別にいいよ。怒ってねぇから。ただ、現実がわかっただけで。お前は考えてもなかったものな、俺の女だということに。俺はただの性処理の男だものな」

「ち、違っ、ねぇ、須王違うのっ」

 胸のぷっくりと膨らんだ頂きは、戯れる須王の指で形を変え、反対の須王の手は、秘部をゆっくりと音をたてて触っている。

 声を押し殺したいのに手が使えない。
 唇を噛みしめても、甘い声は漏れ出てしまう。

 ああ、会社のビルでこんなこと。
 誰か来ちゃったら、あたしのこんな恥ずかしい姿見られて人が集まってしまったら……と思うと、羞恥に緊張する身体は、浅ましくも敏感になって火照り、いつも以上に感じてしまうんだ。

「すげぇぬるぬる。お前、見られると思うと燃えるの?」

「違っ……ぁああっ」

「いい声。それとも、あいつに触られていると思ったから、感じてるわけ?」

 くちゅくちゅとわざと音をたてて花芯を指の腹で擦る須王は、そのまま中指を蜜壷の中に入れ、親指で粒を揺らし始める。

「やっやっ、駄目、須王っ」

 抵抗する声は斜め上から須王の唇に塞がれて。

 いつ誰が来るかわからないこの空間で、器用であたしをよく知る指で胸を弄られ、M字に開いた足の付け根を音をたてて攻められているだけで気が変になりそうなのに、濃厚なキスは余計に身体を火照らせ疼かせてしまうんだ。

 彼の熱さや感触が、彼の声が、聞こえるところと交わえる悦びは、性器を繋げた時のような感覚にも似て、彼が好きだと強く思ってしまうから。

 声と音をたてて舌が絡まりあうだけでも蕩けそうな身体は、須王だから反応するのに、須王は唇を離すと昏い目で言う。

「なんであいつにも尻尾を振る? 顔か、肩書きか?」

 答えようとするする口は塞がれて、くちゅりと音をたてられて離されて。

「なんで俺だけを見てくれねぇんだ?」

 また答えようとすると、くちゅりと口を塞がれる。

「俺が嫌なのか? 最初から?」

 くちゅり。

「やっぱり過去が気持ち悪い?」

 くちゅり。

「やっぱり普通の、表世界で育った奴がいい?」

 くちゅり。

「俺、この先もお前を、俺の女だと言えねぇの?」

 泣き出しそうな声が聞こえて、あたしは彼の胸にゴンと頭突きをした。
 
「お黙り!」

 ……ああ、なんて可愛くない女なんだろう。

 半裸状態で、濡れた秘部も露出させられた状態で。
 いや、そんな状況だからこそ……捨て身になるしかない。

「電話の声を聞いていたのならわかるでしょうが! 専務が切羽詰まった声を出して、須王と話をしたいから間を取り持ってくれと言ってたじゃない! 須王がどうでもいいなら、ふたりにさせたわよ。もしも須王と専務の会話がないことが理由で須王が苦しんでいたのなら、それだけでも解消出来るかなと思ったのよ!」

「……俺のため?」

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「でも仲良く話してたじゃねぇか。俺放置で」

「あなたが乗ってこなかったからよ。専務と会話しようとしていなかったから、少しでも入ってこれるようにしていたんじゃない」

 ……途中から専務の話が面白くて惹き込まれたとは、口が裂けても言えない。

「あたしが好きなのは須王だけなの! あたしが他に奪われる心配なんて無駄にしなくていいから。あたしは須王だけ! だからもう恥ずかしいからやめてよ」

 止まらない。
 須王はあたしの勢いに呆気にとられた顔をしているが、秘部から指は抜かれず、なんだか逆にいやらしい動きをしてくる。まるで踏み絵のように、あたしの揺るぎない気持ちを試しているようだ。
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