あかね色に染まる校舎に舞い落ちた君は

山井縫

文字の大きさ
上 下
80 / 84
進路指導室で開かれた捜査会議の内容は

5

しおりを挟む
「え……僕、死んだんですか? 生き返ったんじゃないんですか?」

「誠に残念ですが」

「そんな……」

光村哉太みつむらかなた様、貴方は生き返った訳ではありません。 

「え……それって、どう言う……」

 光村哉太みつむらかなたは、生き返った訳ではない、だが女神セラの、と言う言葉に、困惑していた。

「__じゃあ、ここって、どこなんですか? 天国とか地獄には見えないし、一体ここは」

「ここはガーデン、あの世とこの世の中心点に存在する場所です。 そしてガーデンとは、女神が死んだ人間の魂を導く場所でもあります」

「え……えっとぉ」

「とても困惑されていますね。 無理もありません。  ゆっくりと説明をさせて頂きます」

「は、はい……」

「地球の日本時間で、2027年4月7日 午前8時27分35秒……光村哉太みつむらかなた様は通り魔であり薬物中毒者である林哲夫はやしてつおによって、包丁でお腹を刺され、貴方の意識は、ここガーデンへと導かれました」

「やっぱりあの時、僕は刺されたんだ」

「はい」

「でも、どうしてここに僕の意識が」

「貴方が強くそれを望まれたからでございます」

「僕が?」

「はい、通り魔に刺され、意識が朦朧もうろうとしていた時、私は貴方に問いました。 生きたいかと、そして貴方は強く、生きたいと願った」

「!」

「私はその事を承諾し、貴方の魂をここへ導かせて頂きました」

「そうだ……僕はあの時……! あの!」

「はい……なんでございましょうか」

「佳奈は、佳奈は大丈夫なんですか! 生きてますよね!」

「はい、野村佳奈のむらかな様は、今も生きています。 今は病院で、手術を終え意識が戻らない貴方のすぐ側にいます」

「意識が戻らない?」

「はい」

「それはきっと、僕がここにいるからですよね。 生き返る事ができるなら、僕を現世に戻してもらえませんか! お願いします!」

 哉太は、これでもかと言うぐらい、頭を下げ、女神セラに頼んだ。

「そうする事自体は可能ですが、それはできません」

「え……なんでですか」

「今この状態で意識を戻せば、貴方はそのまま死んでしまうからです」

「え、でも今ここに」

「それは貴方の魂のみをガーデンに置いている為です。 貴方の本物の身体は、本来であれば死んでいる傷です。 手術したものの、身体がとても弱っています。 今このまま戻しても、貴方は生き返る事ができません」

「そんな……じゃあ僕は、二度と佳奈に」

「顔を上げてください……光村哉太様、方法がない訳では無いのです」

「え……」

「貴方が生き返る方法が、私が知る限り1つだけございます。 その1つと言うのは、別の次元の世界へと行き、そこで生命力を高めてもらうのです」

「別の世界?」

「分かりやすく言うのなら、異世界と呼ばれる場所でございます」

「い、異世界!?  それって、アニメとかでよく聞く、あの異世界ですか?」

「はい、その異世界です」

「でも、どうして異世界に?  それに生命力って」

「先程も申し上げた通り、今のあなたの身体は、生命力が0に等しいのです。 生命力を上げるには、どこか別の場所で、身体を動かし、生命力を上げていくのです」

「生命力って、身体を動かすだけで上がるんですか?」

「本来であれば、身体を動かすだけではなんの意味もありません。 ですがそこは、女神の力を使わせて頂きます」

「女神の力……」

「はい。 そして、生命力を上げる手助けとして、貴方に1つ、能力を授けました」

「能力って、一体どんな」

「『オーバー』という能力です。 ある条件を満たした時、貴方は限界を越えた力を得ることができます。 知識、パワー、思考速度、視野の拡大」

「なんか、凄いですね。 それでその、条件と言うのは」

「それは、特定の気持ちが深く高まった時です」

「特定の、気持ち」

「はい、詳しくは、実際使われた方が早いでしょう」

「わ、分かりました」

「それでは、異世界に向かうに辺り、絶対のルールをご説明させて頂きます」

「ルールですか?」

「はい。 異世界に行った際、基本的には、光村哉太様がなにをしても、我々は干渉しませんし、自由です。 ですが度を超えた行為、功績をした場合には、それなりの処罰が下ります。 度合いの大きさは、私女神セラが判断します」

「分かりました」

「世界を救い英雄になったり、困っている人々を助ける、そういった行ないは全然良いのですが、逆に世界を破壊、支配等の行為は処罰の対象になります」

「はい」

「それと、異世界の時間軸と日本の時間軸は全く違い、お互いに関与してません。 ですので異世界でどれだけの時間を過ごそうとも、戻る時には、あの瞬間の時間に戻すことが可能ですので、ご心配なさらなくて大丈夫でございます」

「そうなんですね! それは良かったです」

「他に何かご質問はありますでしょうか」

「異世界で死んでしまった場合って、どうなっちゃうんですか?」

「その時は、特定の回数内では生き返ることが可能です。 異世界では日本と違い魂の他に魔力という力が身体に流れています。 その魔力が尽きていなければ、可能です」

「そうなんですね」

「はい。 ちなみにその特定の回数は、私の力では、6回が限度です」

「6、分かりました。 頑張って生きます」

「はい。  それでは、光村哉太様、貴方を異世界へと転送します。 どうが貴方に、女神の奇跡があらんことを」

女神セラは右手を前に出し、光村哉太に転送魔法をかけ、身体が少しずつ透けていった。 消えた時には異世界に辿り着くと言うものだ。

「___」

光村哉太は、ゆっくりと目を開けた。

「ここが異世界、凄いな。 アニメやゲームで見たのと同じだ」

人生で初めて異世界に行き、ワクワクしていた。

「こういう時は、まずギルド、街の方だよな。 行くか」

光村哉太は、まず戦う職業、冒険者になる為に、ギルドがある街の方へと歩いていった。

~それと同じ頃、ある城にて~

「おい、いたか?」

「いやいない、早く見つけるぞ」

「あぁ、大罪人を処刑しないとなぁ」

「騎士アウラ、必ず見つけ出して、殺す」

「__はぁ……はぁはぁ(私はまだ死ぬ訳にはいかない)」

右腕を斬られ、頭からも血を流していた騎士長アウラという少女は、一般兵を殺した容疑者の汚名をきせられ、国から追われていた。

「(マイ、ごめん)」

ある約束の為、死ぬ訳にはいかない彼女はフードを被り、木を隠すなら森の中ということで、街の方へと逃げた。
しおりを挟む
ツギクルバナーリンクよろしければお願い致します。ツギクルバナー関連作品
東雲塔子シリーズ
-------------------------------------------------------
【連作短編集】東雲塔子の事件簿
あかね色に染まる校舎に舞い落ちた君は
感想 3

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【連作短編集】東雲塔子の事件簿

山井縫
ミステリー
女子校生、東雲塔子が身の回りに起きる謎に挑む連作短編集。 拙作「あかね色に染まる校舎に舞い落ちた君は」と同じ世界観を共有した作品です。

伏線回収の夏

影山姫子
ミステリー
ある年の夏。俺は15年ぶりにT県N市にある古い屋敷を訪れた。大学時代のクラスメイトだった岡滝利奈の招きだった。屋敷で不審な事件が頻発しているのだという。かつての同級生の事故死。密室から消えた犯人。アトリエにナイフで刻まれた無数のX。利奈はそのなぞを、ミステリー作家であるこの俺に推理してほしいというのだ。俺、利奈、桐山優也、十文字省吾、新山亜沙美、須藤真利亜の6人は大学時代、この屋敷でともに芸術の創作に打ち込んだ仲間だった。6人の中に犯人はいるのか? 脳裏によみがえる青春時代の熱気、裏切り、そして別れ。懐かしくも苦い思い出をたどりながら事件の真相に近づく俺に、衝撃のラストが待ち受けていた。 《あなたはすべての伏線を回収することができますか?》

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

泉田高校放課後事件禄

野村だんだら
ミステリー
連作短編形式の長編小説。人の死なないミステリです。 田舎にある泉田高校を舞台に、ちょっとした事件や謎を主人公の稲富くんが解き明かしていきます。 【第32回前期ファンタジア大賞一次選考通過作品を手直しした物になります】

【完結】共生

ひなこ
ミステリー
高校生の少女・三崎有紗(みさき・ありさ)はアナウンサーである母・優子(ゆうこ)が若い頃に歌手だったことを封印し、また歌うことも嫌うのを不審に思っていた。 ある日有紗の歌声のせいで、優子に異変が起こる。 隠された母の過去が、二十年の時を経て明らかになる?

処理中です...