上 下
69 / 84
試食会の時に起きた出来事は

しおりを挟む
 そして、私以外誰もいなくなった。静かな教室の中、一人想いにふける。
 とはいえ、何を考えればいいのか。何だかとんでもないことが次々に起こり、とんでもないことを次々聞かされて頭の中情報の渦で脳みそが呑み込まれている様な感覚になる。
 少し考えるべきことを纏めてみよう。
 まずは、先週の金曜日。エリナが屋上から転落した。彼女は許可なく鍵を持ち出して屋上へ立ち入ったとみられる。転落時間は十七時三十分前後。そして私はまさに彼女が落ちる瞬間を目撃して意識を失った。
 彼女の転落原因は今の所不明。但し、転落前におかしな行動をとっている。
 屋上前に靴を脱ぎ靴下で柵までたどり着き転落。しかも、その際には三角巾とゴム手袋を身に付けていた。
 これだけでもいくつかの謎がある。まず、何故彼女は屋上に上がったのか。
 一番シンプルで単純な答えは自ら命を絶つためという事になる。が、だとしても飛び降りる為に屋上へ上がる必要はあったのか。すぐ下の階の四階のどこかからでも十分飛び降りには足りる気がする。自らの意志で落ちたとしたら何故屋上を選んだのかが謎だ。
 では、他の理由はどうだろう。鍵のかかった屋上の特徴として考えられるのは人目に触れないという事じゃないか。ならば考えられる目的は例えば密会。
 密会、それは甘い恋愛絡みのロマンスめいた雰囲気も感じられる言葉だ。となると目的はつまり恋人と待ち合わせする事だったという事になる。しかも、それは不倫などの余り他人に知られたくないもの同士という意味でもある。学校内で考えられるのは、例えば相手が教師だったなどが考えられる。
 でもこれが、宮前麻衣だったら校長や他の教師との間でそういう事があってもまだ想像できるが、エリナに限って流石に無いと想う。
 ならば、他の理由として何が考えられるか。例えば他の人に聞かれたらまずい話をする為に呼び出したとかか。
 そんな事を考えていた時、ガラガラガラと扉の開く音が聞こえた。思考を中断してそちらに目をやると先ほど教室から出て行ったありさが入ってくるのが目に入った。
「お疲れー。終わったの?」
 私は大分憔悴しきった様子の彼女に敢えて軽く声を掛けてみる。
「ああ、うん。私は終わったよ。でも、まさか先週に引き続いて二回も警察に話聞かれるなんてさ」
「そっか。ありさもあの日話聞かれたんだね」
 エリナの転落時、ありさは香やしょう子と校内にまだ居た筈だ。
「うん。エリナの落ちた後も少し目に入っちゃったし、彼女家政科室にも来てたからね」
「そういえばクレープの試食してたんだったね」
 私は香から聞いた話を思い出す。確かその試食会にエリナも少しだけ参加したと言っていた。
「本当はさトーコも誘おうと想ったんだけど見当たらなくって、ごめんね」
「全然それはいいよ。寧ろやっておいてもらってありがたいくらいだよ」
 私がそう返すと彼女は一瞬顔を緩ませた。
「そう? えへへ……。あ、でも、文化祭もどうなるんだろね」
「ああ、そうか、そうだね……」
 文化祭は来月に迫っている。しかし、校内で女子生徒一人、教師二人が亡くなるという異常事態が起きてしまった。この状態で文化祭なんか開けるのだろうか。
「エリナも言ってたよ。【文化祭楽しみだね】ってなのになんで……」
 私に言った言葉をエリナは家政科室で言っていた様だ。ありさはその姿を頭に思い浮かべたのだろう、一瞬言葉を詰まらせる。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

部室強制監獄

裕光
BL
 夜8時に毎日更新します!  高校2年生サッカー部所属の祐介。  先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。  ある日の夜。  剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう  気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた  現れたのは蓮ともう1人。  1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。  そして大野は裕介に向かって言った。  大野「お前も肉便器に改造してやる」  大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…  

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

♡ちょっとエッチなアンソロジー〜舐める編〜♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショートの詰め合わせ♡

処理中です...