あかね色に染まる校舎に舞い落ちた君は

山井縫

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静寂と狂乱が渦巻く教室では

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 日奈と麻衣の二人はグループ内でも特に密な間柄の様に見えた。
 でも今の二人は異様に静かだった。時々チラチラとお互いに目線は交わす。そしてそれは時折私の方に向けられる。その視線や表情には不安感や不信感。そしてあからさまに物問いた気な気配も混ざっている。
 流石に気になってそちらに目線を送ってしまった。すると、麻衣の方といつの間にやら目線がバッチリあってしまう。
「……あによ」
「へ?」
「何度もこっちみてさ。何か用あるっぽい顔向けてきてんじゃん」
「寧ろあるのはそっちなんじゃないの?」
 正直な所を言えば、彼女等に聞きたいことは色々あった。でも、どれもデリケートな問題。どう切り出したらいいか憚られるから黙っていたのだ。
「べ、別にあんたに用なんか無いし。見てきたから何か言いたい事あんじゃないかって思ったんだけだもん」
 彼女は飽くまで意地を張るような態度を崩さない。そうか。まあ、そちらがそういうなら良いだろう。気になる事を聞いてやることにするか。
「じゃあさ、聞くけどあんたら金曜日の夜、どこに居たの?」
「そ、そんなのあんたには関係ないじゃん」
 彼女は私の問いに分かりやすく動揺を見せる。
 対して私自身も少し気が立ってしまっているのを感じていた。でも、冷静さを失う訳にはいかないので、余裕を見せる為に不敵に笑いながら言った。
「へえ。何か聞いた所によるとカラオケで随分楽しく過ごしてたみたいじゃない」
「やっぱ知っていたんだ。だ、誰にきいたわけ?」
「まあ、誰でもいいじゃん。それよりさ、何か渋いおじ様達と長い事一緒にいたんでしょ。随分、年の離れたお友達がいるのね」
「別に友達じゃないよ。偶々向こうが声かけてきただけだっての」
「制服着てたんでしょ。未成年だって明らかにわかるの声かけてきて、それにホイホイのっちゃったわけ?」
「こっちも人数が多い方が楽しいし、あっちも女の子が居た方が嬉しい。お互いウィンウィンの関係だよ。お金も払ってもらったし文句なしだよ」
 まるでそれが当然の事であるかのように言う彼女。それに対して私は不審気な顔を隠さずに言う。
「お金まで払って貰った訳? 随分気前が良い話だね」
「そだよ。羨ましい?」
「いんや。私なら奢られたりしたら気を使って楽しめないよ」
 しかも、相手は良く知らない中年男性。そもそも一緒に歌おうという気すらおきない筈だ。
「何で? 意味わかんない。タダで遊べるんだから超お得でしかないじゃん」
 まあ、ここは価値観の相違だろう。そこを争っても意味がないので話を進める事にする。
「で、それはただのカラオケで済んだ訳?」
「ど、どういう意味?」
 私の更なる質問に彼女は動揺を見せる。
「その後はどうしたんだって聞いてるの」
「どうって別に~。ひなピん家に泊まりに行っただけだよ。ひなピん家誰もいなくって寂しいっていうからお泊りしたの」
 ここまでは滝田さんから聞いた話だ。
「家族がいないっていう事は二人だけだったっていうことだよね。証明できる人はいない」
「はあ? 意味わかんない。嘘ついてるっていうの? そんな嘘つく意味ないじゃん、ねえ?」
 麻衣の言葉にそれまで黙って聞いていた日奈は余り元気がない様子で口を挟んだ。
「トーコ、嘘じゃないよ。あ、あの日の夜は麻衣と二人で家にいたの。朝、お母さんが帰ってきて会ってるしね」
「朝に二人が家に居たっていう事にしかならなくない?」
「ふん、あんたが言いたいことは分かってるよ。私達がカラオケの後、おじさん二人と一緒にどっかしけこんだって想ってる。もっと言ってあげようか? ホテルにでも消えたんじゃないかって疑ってるんでしょ。でもないよ。あの日に関してはね」
「あの日に関しては? って、どういう意味かな」
 恐らくここからが話の核心だ。既にこの段階で隠し事をしているというより告白して楽になりたいというような気持ちも見え隠れしている気がした。
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