上 下
61 / 84
静寂と狂乱が渦巻く教室では

5

しおりを挟む
 日奈と麻衣の二人はグループ内でも特に密な間柄の様に見えた。
 でも今の二人は異様に静かだった。時々チラチラとお互いに目線は交わす。そしてそれは時折私の方に向けられる。その視線や表情には不安感や不信感。そしてあからさまに物問いた気な気配も混ざっている。
 流石に気になってそちらに目線を送ってしまった。すると、麻衣の方といつの間にやら目線がバッチリあってしまう。
「……あによ」
「へ?」
「何度もこっちみてさ。何か用あるっぽい顔向けてきてんじゃん」
「寧ろあるのはそっちなんじゃないの?」
 正直な所を言えば、彼女等に聞きたいことは色々あった。でも、どれもデリケートな問題。どう切り出したらいいか憚られるから黙っていたのだ。
「べ、別にあんたに用なんか無いし。見てきたから何か言いたい事あんじゃないかって思ったんだけだもん」
 彼女は飽くまで意地を張るような態度を崩さない。そうか。まあ、そちらがそういうなら良いだろう。気になる事を聞いてやることにするか。
「じゃあさ、聞くけどあんたら金曜日の夜、どこに居たの?」
「そ、そんなのあんたには関係ないじゃん」
 彼女は私の問いに分かりやすく動揺を見せる。
 対して私自身も少し気が立ってしまっているのを感じていた。でも、冷静さを失う訳にはいかないので、余裕を見せる為に不敵に笑いながら言った。
「へえ。何か聞いた所によるとカラオケで随分楽しく過ごしてたみたいじゃない」
「やっぱ知っていたんだ。だ、誰にきいたわけ?」
「まあ、誰でもいいじゃん。それよりさ、何か渋いおじ様達と長い事一緒にいたんでしょ。随分、年の離れたお友達がいるのね」
「別に友達じゃないよ。偶々向こうが声かけてきただけだっての」
「制服着てたんでしょ。未成年だって明らかにわかるの声かけてきて、それにホイホイのっちゃったわけ?」
「こっちも人数が多い方が楽しいし、あっちも女の子が居た方が嬉しい。お互いウィンウィンの関係だよ。お金も払ってもらったし文句なしだよ」
 まるでそれが当然の事であるかのように言う彼女。それに対して私は不審気な顔を隠さずに言う。
「お金まで払って貰った訳? 随分気前が良い話だね」
「そだよ。羨ましい?」
「いんや。私なら奢られたりしたら気を使って楽しめないよ」
 しかも、相手は良く知らない中年男性。そもそも一緒に歌おうという気すらおきない筈だ。
「何で? 意味わかんない。タダで遊べるんだから超お得でしかないじゃん」
 まあ、ここは価値観の相違だろう。そこを争っても意味がないので話を進める事にする。
「で、それはただのカラオケで済んだ訳?」
「ど、どういう意味?」
 私の更なる質問に彼女は動揺を見せる。
「その後はどうしたんだって聞いてるの」
「どうって別に~。ひなピん家に泊まりに行っただけだよ。ひなピん家誰もいなくって寂しいっていうからお泊りしたの」
 ここまでは滝田さんから聞いた話だ。
「家族がいないっていう事は二人だけだったっていうことだよね。証明できる人はいない」
「はあ? 意味わかんない。嘘ついてるっていうの? そんな嘘つく意味ないじゃん、ねえ?」
 麻衣の言葉にそれまで黙って聞いていた日奈は余り元気がない様子で口を挟んだ。
「トーコ、嘘じゃないよ。あ、あの日の夜は麻衣と二人で家にいたの。朝、お母さんが帰ってきて会ってるしね」
「朝に二人が家に居たっていう事にしかならなくない?」
「ふん、あんたが言いたいことは分かってるよ。私達がカラオケの後、おじさん二人と一緒にどっかしけこんだって想ってる。もっと言ってあげようか? ホテルにでも消えたんじゃないかって疑ってるんでしょ。でもないよ。あの日に関してはね」
「あの日に関しては? って、どういう意味かな」
 恐らくここからが話の核心だ。既にこの段階で隠し事をしているというより告白して楽になりたいというような気持ちも見え隠れしている気がした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

部室強制監獄

裕光
BL
 夜8時に毎日更新します!  高校2年生サッカー部所属の祐介。  先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。  ある日の夜。  剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう  気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた  現れたのは蓮ともう1人。  1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。  そして大野は裕介に向かって言った。  大野「お前も肉便器に改造してやる」  大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…  

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

処理中です...