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学校で担任と交わした会話は
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「あの……その後、私を見つけて運んでくれたんですよね」
「ああ、落ちたのが二見だとはすぐに気付いたよ。まずは医務室に向かったんだが、既に熊谷先生は現場に向かってた。救急車も呼ばれたという事だった。でまあ、とりあえず校内を見て回ろうと想ったんだよ」
この段階では。いや、現段階でもだが、転落の原因は不明だ。自死であっても大変だが万が一でも人に突き落とされたなどということがあったらただ事ではない。
危険がないかを確認するのは当然と言えば当然の行動かも知れない。
「それでまずは教室に向かった訳ですか?」
「あの段階ではどこから落ちたか見当がつかなかったからな。ひょっとしたら教室からという可能性も無くはない」
彼がエリナを最後に見たという家政科室には既に誰もいなかったという。次にエリナと関わりがある場所と言えば教室となる。
「なるほど」
確かに筋は通っている。
私は教室の窓から転落する所を目撃した。だから転落個所は少なくとも三階以上の上からだという事はわかっていたが、フル先はそれを知らなかったという。
「で、教室に向かっている最中に熊谷とあってな。お前がまだ教室に残っているという言葉を聞いて一緒に入ったんだ。そしたら……」
「私が倒れてたんですね」
「ああ、驚いたよ。一瞬お前も死んでるんじゃないかって想ったしな。二人もオレのクラスから死人がでるなんてたまらんからな」
「そうですか。ご心配かけてすみません。ありがとうございました」
「いや。状況を考えれば仕方ないさ。ショックだっただろう。お前は二見とも親しかったもんな。その彼女があんなことになればな」
陽光が差し込んできているベランダの方を何とも複雑な顔でそういうフル先。
「そう……でしたね」
私も俯いてそう答えるしかない。
すると、ふっと部屋に一瞬影が差したように思えた。驚いて頭をあげる。
「ああ、カラスだよ」
「カラス?」
「うん。ここは丁度西日が差す場所だからな。鳥が通るとああいう風に影ができるんだ」
「……そうなんですね」
言われて何か少し違和感を感じる。が、それが何に起因するのかすぐに思い浮かばない。
「まあ、とりあえずはこんな所か。また、何か聞く事があるかもしれないが、頼む」
「ああ、はい。あの、月曜は別に来なくていいんですよね?」
「大丈夫。もう休みの日に呼び出す様なことはしないよ。帰ってゆっくり休んでくれ」
「わかりました。失礼します。あの、このコーヒー。貰ってっていいですか?」
「ああ、構わんよ。じゃあ、またな」
「はい」
もう一度頭を下げて扉に手を開けた瞬間にガラガラガラと勝手に空いて少し驚く。
「あら。今日は縁があるわね」
あの独特のニヤケ笑いを浮かべて立っていたのは滝田さんだった。後ろには品川刑事も控えている。どうも私を送ってくれた後に合流したらしい。
「あ、どうも。先ほどはありがとうございました」
彼女に車で送って貰ったことについて私がお礼を述べると、
「いえいえこちらこそ。どういたしまして。また、よろしく頼むわ……」と言って手をヒラヒラと動かした。
そして「降矢先生。ちょっとお話を聞かせて貰えますか?」と言った。
どうも、これからフル先が尋問を受ける番になるらしい。
私は品川刑事にも頭を下げると校舎入り口の方へ向かって歩き出した。
「ああ、落ちたのが二見だとはすぐに気付いたよ。まずは医務室に向かったんだが、既に熊谷先生は現場に向かってた。救急車も呼ばれたという事だった。でまあ、とりあえず校内を見て回ろうと想ったんだよ」
この段階では。いや、現段階でもだが、転落の原因は不明だ。自死であっても大変だが万が一でも人に突き落とされたなどということがあったらただ事ではない。
危険がないかを確認するのは当然と言えば当然の行動かも知れない。
「それでまずは教室に向かった訳ですか?」
「あの段階ではどこから落ちたか見当がつかなかったからな。ひょっとしたら教室からという可能性も無くはない」
彼がエリナを最後に見たという家政科室には既に誰もいなかったという。次にエリナと関わりがある場所と言えば教室となる。
「なるほど」
確かに筋は通っている。
私は教室の窓から転落する所を目撃した。だから転落個所は少なくとも三階以上の上からだという事はわかっていたが、フル先はそれを知らなかったという。
「で、教室に向かっている最中に熊谷とあってな。お前がまだ教室に残っているという言葉を聞いて一緒に入ったんだ。そしたら……」
「私が倒れてたんですね」
「ああ、驚いたよ。一瞬お前も死んでるんじゃないかって想ったしな。二人もオレのクラスから死人がでるなんてたまらんからな」
「そうですか。ご心配かけてすみません。ありがとうございました」
「いや。状況を考えれば仕方ないさ。ショックだっただろう。お前は二見とも親しかったもんな。その彼女があんなことになればな」
陽光が差し込んできているベランダの方を何とも複雑な顔でそういうフル先。
「そう……でしたね」
私も俯いてそう答えるしかない。
すると、ふっと部屋に一瞬影が差したように思えた。驚いて頭をあげる。
「ああ、カラスだよ」
「カラス?」
「うん。ここは丁度西日が差す場所だからな。鳥が通るとああいう風に影ができるんだ」
「……そうなんですね」
言われて何か少し違和感を感じる。が、それが何に起因するのかすぐに思い浮かばない。
「まあ、とりあえずはこんな所か。また、何か聞く事があるかもしれないが、頼む」
「ああ、はい。あの、月曜は別に来なくていいんですよね?」
「大丈夫。もう休みの日に呼び出す様なことはしないよ。帰ってゆっくり休んでくれ」
「わかりました。失礼します。あの、このコーヒー。貰ってっていいですか?」
「ああ、構わんよ。じゃあ、またな」
「はい」
もう一度頭を下げて扉に手を開けた瞬間にガラガラガラと勝手に空いて少し驚く。
「あら。今日は縁があるわね」
あの独特のニヤケ笑いを浮かべて立っていたのは滝田さんだった。後ろには品川刑事も控えている。どうも私を送ってくれた後に合流したらしい。
「あ、どうも。先ほどはありがとうございました」
彼女に車で送って貰ったことについて私がお礼を述べると、
「いえいえこちらこそ。どういたしまして。また、よろしく頼むわ……」と言って手をヒラヒラと動かした。
そして「降矢先生。ちょっとお話を聞かせて貰えますか?」と言った。
どうも、これからフル先が尋問を受ける番になるらしい。
私は品川刑事にも頭を下げると校舎入り口の方へ向かって歩き出した。
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