あかね色に染まる校舎に舞い落ちた君は

山井縫

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日曜のランチタイムで過ごすひと時は

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「二人以外にそれを証明する人はいないってことですよね。」
「信用するに足りるか疑わしいけど、事件が起きた後の事でしょ。関係があるかは微妙なのよね」
 確かに、今聞いた事実はエリナが転落して以降の話だ。彼女の件とは関係ないかもしれない。が、
「でも、エリナの件とは関係なくても色々問題はありそうですよね」
「私達は飽くまで二見さんの件を調べているの。だから今の所は様子見かな。必要とあらば生活安全課の少年係とかに話を通す事になるかもしれない」
 生活安全課の少年係とは文字通り少年犯罪などを取り締まる所だ。
「因みに、その話って警察から学校の関係者とかには言っているんですか」
「いえ。まだ言ってないわ。下手すれば彼女達の進退にも関わる事でしょ。滅多なことは言えないわよ」
「そうですね、わかりました」
 言いながら私は知らなくてもいい事を知ってしまったかもしれないと想っていた。
「他に何か聞きたいことはある?」
「えっと……。そうですね、結局、エリナの死因は判明したんですか」
 事件から二日が過ぎたている。その後捜査に何か進展はあったのかは気になる所だ。
「ながら、まだ特定は出来てないわね。でも、安心して頂戴。必ず私達が事件を解決してみせるわよ。そうでないと貴方達も不安ですものね」
「まあ、それはそうですね」
 確かに不安要素は沢山あった。事故ならばともかく、自殺や他殺とあらば必ず原因がある筈だ。自殺だとしたらどうだろう。
 それは校内で女が死を選ぶほどのトラブルが起きたという事だろう。だとしたらその火種はくすぶっているかもしれない。
 更に、殺人だったとしたら犯人がいる。それもかなりの確率で学校内の関係者という事だ。
 どちらだったにせよ、彼女を死に追いやった人物がいるという事になってしまう。それはとても憂鬱なことだし又恐ろしい想像でもあった。
「怖い、かな」
 不安げな表情が表に出ていたのだろう。滝田さんは心配顔で聞いてくる。私はそれに対してストレートに返事をした。
「色々と心配事はあるなって考えちゃいますね」
「こちらとしても心配事を少しでも減らすために頑張るわ。だから、また協力して頂戴ね」
 柔らかい笑みを浮かべて言う滝田さん。その内面では(これからも警察の情報源として利用させてね)という意味が含まれているのではないかとの邪推も生まれてしまう。今日のお昼の奢りで借りも出来てしまった。
 でも事ここに至って私の好奇心はパンパンに膨れ上がってしまっている。ここまで来たら、何も知らないままで済ませることはできないじゃないか。利用されるのを承知で警察から情報を知れる立場は悪い物ではないかもしれない。
「わかりました。こちらこそ出来る事はやらせてください」
 と言った所で私のスマホが鳴った。それは電話着信の音声だった。
 いつもは家族や友達とはアプリで連絡を取り合う事が多いので電話がかかってくるのは珍しい。誰だろうと思ってディスプレを見てみると学校からだった。
「すみません電話です」そういうと、
「はいはい。ごゆっくり~」
 滝田さんは私の言葉におどけた様に手をひらひらと動かしながら言った。
【はい……もしもし。あ、降矢先生ですか】
 電話はクラス担任のフル先からのものだった。
「ああ、休みの日にすまんな」
 そういって彼が切りだしてきた内容。それはこれから学校にこれないかというものだった。エリナの件について私が知っている事を詳しく聞きたいという事らしい。
 面倒だったが仕方がない。断れる雰囲気ではないので、今から学校に向かうといって電話をきった。
「学校からでした。担任が事情を聞かせて欲しいって。今から行かなきゃなりません」
「そっか。昨日は貴方、学校側に説明してる時間なかったものね。まあ、そうなるか……。よかったら車で送るわよ」
「え? で、でも。悪いですよ」
「どっちにしても私の方ももう一度学校には行かなきゃならかったの。ついでよついで」
「そうなんですか。じゃあ、お願いします」
「じゃあ、いきましょうか」
 滝田さんがスマホの時計を見ながらそういった姿を見てあの日の晩、しおり先生に車で送ってもらった時の事を何となく思い出した。
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