あかね色に染まる校舎に舞い落ちた君は

山井縫

文字の大きさ
上 下
49 / 84
日曜のランチタイムで過ごすひと時は

5

しおりを挟む
「いえ、お役に立てたんでしょうか」
「ええ。とても興味深い内容ね」
 満足そうな顔で言う滝田さんだが、こちらはそれほど大した返答をしただろうか。 
 それに、肝心な所が聞けていない。即ち何の為に病院へ捜査に訪れたかだ。でも、これ以上はその件を深く尋ねても返答はしてもらえないだろう。
 ただ、エリナは通院していたことは間違いなさそうだ。確か家に病院のパンフレットがある。見たら何か分かるかもしれない。
「あの、日奈からは話を聞けたんでしょうか」
 私はここで話題を移すことにする。秋田日奈の動向について警察は何か掴めているだろうか。
「ええ。昨日、警察署の方に秋田さん、宮前さん、本宿さんの三人に来て貰って話を聞いたわ」
「そうなんですか。結局、彼女は事件の時にどこにいたんでしょうか」
「授業が終わるのが十五時だったのよね。本宿さんはその後すぐに帰ったみたいね。十五時三十分過ぎには家に帰ってお店の手伝いをしてるのが確認されているわ」
「それは聞いてます。で、日奈達は図書室に行ったんですよね」
「ええ。でもその後移動して上の階段の踊り場にいたみたいね」
「ひな、ゆりな、まいの三人ですよね。そして、階段の踊り場っていうのは……」
「屋上の入り口前。二見エリナさんが出入りした場所ね」
「彼女たちはエリナの姿を見てないんでしょうか」
「見てないそうよ。そして十六時三十分前までいたそうね。だから彼女達の言葉を信じるなら二見さんが屋上に上がったのはそれ以降ということになるわね」
「信じるならという事は嘘を言っている可能性もあるという事ですか」
「んー。どうかしらね。今の所彼女達の証言に矛盾はない様に見える。確かその後、宮前しょう子さんは家政科室で料理に参加したという事も確認んされているしね」
「ああ、そうでしたね」
 しょう子は日奈達と一緒に降りたところを香に捕まった。そしてその後エリナが家政科室にやって来た。という事は少なくともその間まで屋上で何らかのトラブルがあったということはないという事か。
「で、結局ひな達は結局どこで何をしていたんでしょうか」
「一応、学校敷地内にいたそうよ」
「え? そうなんですか?」
「ただ、旧校舎の方にいたみたいね」
「旧校舎にいた?」
 この学校は普通に私達が使う授業が行われている本校舎があり、グラウンドを挟んで正面に体育館、そして北側に旧校舎というのが建っている。
 文字通り昔使われていた校舎で、数年前に建て替えられた後は、文化部の部室や用務員室、事務室などとして使われていた。
 でも、日奈達は部活に参加していた訳ではない。にも関わらず何故そちらに居たのか。
しおりを挟む
ツギクルバナーリンクよろしければお願い致します。ツギクルバナー関連作品
東雲塔子シリーズ
-------------------------------------------------------
【連作短編集】東雲塔子の事件簿
あかね色に染まる校舎に舞い落ちた君は
感想 3

あなたにおすすめの小説

ARIA(アリア)

残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……

幽霊探偵 白峰霊

七鳳
ミステリー
• 目撃情報なし • 連絡手段なし • ただし、依頼すれば必ず事件を解決してくれる 都市伝説のように語られるこの探偵——白峰 霊(しらみね れい)。 依頼人も犯人も、「彼は幽霊である」と信じてしまう。 「証拠? あるよ。僕が幽霊であり、君が僕を生きていると証明できないこと。それこそが証拠だ。」 今日も彼は「幽霊探偵」という看板を掲げながら、巧妙な話術と論理で、人々を“幽霊が事件を解決している”と思い込ませる。

俺が咲良で咲良が俺で

廣瀬純一
ミステリー
高校生の田中健太と隣の席の山本咲良の体が入れ替わる話

言霊の手記

かざみはら まなか
ミステリー
探偵は、中学一年生女子。 依頼人は、こっそりひっそりとSOSを出した女子中学生。 『ある公立中学校の校門前から中学一年生女子が消息をたった。 その中学校では、校門前に監視カメラをつける要望が生徒と保護者から相次いでいたが、周辺住民の反対で頓挫した。』 という旨が書いてある手記は。 私立中学校に通う中学一年生女子の大蔵奈美の手に渡った。 中学一年生の奈美は、同じく中学一年生の少女萃(すい)と透雲(とおも)と一緒に手記の謎を解き明かす。 人目を忍んで発信された、知らない中学校に通う女子中学生からのSOSだ。 奈美、萃、透雲は、助けを求めるSOSを出した女子中学生を助けると決めた。 奈美:私立中学校 萃:私立中学校 透雲:公立中学校 依頼人の女子中学生:公立中学校 中学一年生女子は、依頼人も探偵も、全員、別々の中学校に通っている。 それぞれ、家族関係で問題を抱えている。 手記にまつわる問題と中学一年生女子の家族の問題を軸に展開。

謎があればミステリーです。

桃月熊
ミステリー
謎=ミステリー

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

若月骨董店若旦那の事件簿~満開の櫻の下に立つ~

七瀬京
ミステリー
梅も終わりに近付いたある日、若月骨董店に一人の客が訪れた。 彼女は香住真理。 東京で一人暮らしをして居た娘が遺したアンティークを引き取って欲しいという。 その中の美しい小箱には、謎の物体があり、若月骨董店の若旦那、春宵は調査をすることに。 その夜、春宵の母校、聖ウルスラ女学館の同級生が春宵を訪ねてくる。 「君の悪いノートを手に入れたんだけど、なんだかわかる……?」 同時期に持ち込まれた二件の品物。 その背後におぞましい物語があることなど、この時、誰も知るものはいなかった……。

処理中です...