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日曜のランチタイムで過ごすひと時は
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ファミレスに入ると四人掛けの席に案内された。お互いに対面の席に座ると滝田さんがメニュー見ながら言う。
「何がいい? 好きな物頼んでいいわよ」
「えっと、私は……どうしようかな」
よくよく考えたら自分だけで身内の大人以外に奢られるという経験がない事に気づく。
何を頼むのが正解なのか少し考えたが、
「遠慮しなくていいわよ。ええと、私はシーフードトマトのパスタと和風ハンバーグにしようかな」
メニュー表を見て急激に空腹感が増して来た。それに迷いすぎて待たせすぎた方が却って悪いだろう。
「じゃあ、ランチセットでナスとひき肉のボロネーゼお願いします」
結局、滝田さんに倣って私もパスタを選ぶことにした。
「おっけー。じゃあ後はドリンクバーにしましょうか」
コップが運ばれてきたのでドリンクを取りに行き、飲みながらとりとめもない話をした。暫くして食事が運ばれてからもポツポツと合間に話が弾む。
「あー。美味しかった。満足満足」
滝田さんが頼んだ物は中々のボリュームだったがそれほど時間をかけずにぺろりとたいらげた。
「ごちそうさまでした。美味しかったです」
ややあって私も自分の分を食べ終える。
「うん、ここ、初めて来たけど良いお店ね」
滝田さんは私が食べ終えたのを見届けると辺りを見回しながら言った。
「私は何度か来た事あるんですけど、好きな味です」
「あら、馴染みのお店だったんだ」
「馴染みって程じゃないんですど、母に何度か連れてきてもらいました」
「ああ、お母さま、そこの看護師さんなのよね」
「はい。仕事終わりに弟とここで待ち合わせして一緒に食べる事もあるんです」
「そうだったのね、看護師さんも大変なお仕事でしょ。夜勤とかもあるのよね」
「はい、昼と夜で家を行ったり来たりですね」
夜勤開けには私達姉弟と入れ違いに帰って来て恐らく昼過ぎまで寝ているのだろう。別に休んでてくれてもいいのだが、私達が家に帰ってる頃には炊事洗濯家事掃除は終えていることが殆んどだった。
「そっか、やっぱ大変ね。まあ警察官も似たようなもんよ。交番勤務は宿直当直当たり前だし。刑事課だって何もなければ休めるけど事件があったらあちこち飛び回らなきゃならない訳だしね」
「今日も、その……お仕事だったんですよね。病院にいたのも捜査ですか」
「うん? うん……。そうよ。シナさんと一緒にいるんだしまあ察せるよね。そう、病院にいたのは捜査の一環だったわ」
「それって、エリナの事件ですか」
滝田さんの返答に対して私は更に深堀して尋ねてみる。
「うーん。そう聞くって事は何か思い当たる節があったりするのかな」
彼女は少し言い渋っているような素振りを見せた。捜査の都合やエリナの個人情報などの問題もあるのだろう。その上で私は正直に答える事にする。
「いえ。ただ、お二人が彼女の事件を担当しているのは知っているので、そうかなって思っただけです」
事件が起きたのはつい二日前。二人は担当の刑事だ。となればエリナの事件である可能性が高いだろうと考えるのは自然じゃないか。
「なるほどね……。まあ、それくらいなら話してもいいかな。ええ、彼女の事件よ」
「何がいい? 好きな物頼んでいいわよ」
「えっと、私は……どうしようかな」
よくよく考えたら自分だけで身内の大人以外に奢られるという経験がない事に気づく。
何を頼むのが正解なのか少し考えたが、
「遠慮しなくていいわよ。ええと、私はシーフードトマトのパスタと和風ハンバーグにしようかな」
メニュー表を見て急激に空腹感が増して来た。それに迷いすぎて待たせすぎた方が却って悪いだろう。
「じゃあ、ランチセットでナスとひき肉のボロネーゼお願いします」
結局、滝田さんに倣って私もパスタを選ぶことにした。
「おっけー。じゃあ後はドリンクバーにしましょうか」
コップが運ばれてきたのでドリンクを取りに行き、飲みながらとりとめもない話をした。暫くして食事が運ばれてからもポツポツと合間に話が弾む。
「あー。美味しかった。満足満足」
滝田さんが頼んだ物は中々のボリュームだったがそれほど時間をかけずにぺろりとたいらげた。
「ごちそうさまでした。美味しかったです」
ややあって私も自分の分を食べ終える。
「うん、ここ、初めて来たけど良いお店ね」
滝田さんは私が食べ終えたのを見届けると辺りを見回しながら言った。
「私は何度か来た事あるんですけど、好きな味です」
「あら、馴染みのお店だったんだ」
「馴染みって程じゃないんですど、母に何度か連れてきてもらいました」
「ああ、お母さま、そこの看護師さんなのよね」
「はい。仕事終わりに弟とここで待ち合わせして一緒に食べる事もあるんです」
「そうだったのね、看護師さんも大変なお仕事でしょ。夜勤とかもあるのよね」
「はい、昼と夜で家を行ったり来たりですね」
夜勤開けには私達姉弟と入れ違いに帰って来て恐らく昼過ぎまで寝ているのだろう。別に休んでてくれてもいいのだが、私達が家に帰ってる頃には炊事洗濯家事掃除は終えていることが殆んどだった。
「そっか、やっぱ大変ね。まあ警察官も似たようなもんよ。交番勤務は宿直当直当たり前だし。刑事課だって何もなければ休めるけど事件があったらあちこち飛び回らなきゃならない訳だしね」
「今日も、その……お仕事だったんですよね。病院にいたのも捜査ですか」
「うん? うん……。そうよ。シナさんと一緒にいるんだしまあ察せるよね。そう、病院にいたのは捜査の一環だったわ」
「それって、エリナの事件ですか」
滝田さんの返答に対して私は更に深堀して尋ねてみる。
「うーん。そう聞くって事は何か思い当たる節があったりするのかな」
彼女は少し言い渋っているような素振りを見せた。捜査の都合やエリナの個人情報などの問題もあるのだろう。その上で私は正直に答える事にする。
「いえ。ただ、お二人が彼女の事件を担当しているのは知っているので、そうかなって思っただけです」
事件が起きたのはつい二日前。二人は担当の刑事だ。となればエリナの事件である可能性が高いだろうと考えるのは自然じゃないか。
「なるほどね……。まあ、それくらいなら話してもいいかな。ええ、彼女の事件よ」
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