あかね色に染まる校舎に舞い落ちた君は

山井縫

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休日の朝方にモーニングコールで起こしてきたのは

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『そう、だからこそ近づくこともできなくなったし、常に彼女の視線を気にしなければならなくなった訳。端らからみればお互い避ける形になるよね』
 香の言葉を聞いてなるほど上手い手だと想った。
 そもそも日奈達が勝手にエリナの傍に近づいていた。でも、その状態になればエリナの元から勝手に離れて行ってくれる状況が出来る。 しかもそれが続いて行くことによって更に思考や行動が縛られていく。まさしく自縄自縛。ある種の呪いの様なものだ。
『開き直って彼女から嫌われる覚悟を持って堂々とするっていう道は選べなかったのかな』
 そもそもこの時点で教室内、或いは学校内スクールカーストの上位に立ついう目的は果たせない筈だ。ならば、エリナの事など気にせずに普通に振舞うという選択もあったんじゃないか。
 エリナの事だから自分に直接関わって来なければ喧嘩したりすることは無い筈だが。
『無理だよ。嫌われる度胸があればこんなことになってないっしょ』
『って事は、夏休み前からここまで一度も関係修復はしなかった訳ね』
 確かにエリナと日奈達の様子がおかしいというのは傍目で見てもすぐに分かった。
 通常、長い休みが入った後に仲間内の距離感が変わるという事はある。
 休み明けに友達同士旅行にいったりしてより仲良くなることもあれば、その間に確執が起きて仲が悪くなったりと、そういう状況は今まで見てきた。
 でも、彼女等は夏休み前、既に壊れてしまっていた。何かあったのは歴然としていた。
 とはいえ、そういう揉め事に首を突っ込むと碌なことにならない。
 そしてクラス委員長としての私の仕事はその中でも円滑に物事を進める事。
 例えば、クラスの連絡事項。
 次の授業で教室の変更があった時など、口伝えで情報の伝達が必要な場合がある。
 エリナは別にいい。日奈達がいなくても誰かがそれを伝えてくれるのだが、日奈達は休み時間も教室からいなくなってしまうことが多くなった。
 だから何か必要な情報伝達も私がすることになっていたのだ。
 それもクラス委員長の仕事なのかなと割り切ってするようにはしていたが、実際には想像以上に複雑怪奇な人間模様が展開していた訳だ。
「日奈達、どう思ってるかな。今回の事」
 そこは気になる所だった。悲しんでいるのか、それとも……。
『しょう子は少なくともショックを受けてたみたいだよ』
「そのショックっていうのはどういう意味なんだろう」
『あの子はさ、高校デビュー組じゃん。無理に着飾ってメイクして。どうにか日奈達の輪に入れた。でも、エリナは天然素材。そっくり素のままでも超魅力的で誰でも惹きつけちゃう。だからしょう子にしてみれば憧れの対象でもあったのよ』
「じゃあ、実際自分達がエリナと揉めて心穏やかじゃなかったんじゃないか「
『まね、でも、そのエリナに嫌われるって言われちゃった訳だし。もうどうにもならないいでしょ。かと言って他のクラスメイトとも交流なんてほとんどなかったじゃん』
 特にしょう子は元々あまりコミュニケーション能力が乏しい女の子だ。
 どうにかこうにか日奈のグループに入り、エリナと繋がってクラス内の位置を確保し出来ていたのだ。が、それを失った為彼女がやりとりできる相手は仲間内しかいなくなってしまった。
 だからこそ香は出来る限りの事をしようとしているのだろう。
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