39 / 84
休日の朝方にモーニングコールで起こしてきたのは
6
しおりを挟む
「やっぱり、日奈達にしてもエリナから面と向かって嫌いと言われるのは困るのかね」
『誰だってさ。嫌いだって言われて良い気持ちはしないよね。特に彼女達の間の距離感って微妙だったわけじゃん』
エリナだって馬鹿じゃない。感情を露わにすることはないが、勿論感情が無いわけでもない。
日奈達が何を考えて彼女に近づいているか気づかない筈はなかっただろう。でも、自分に害がない範囲でないなら口出ししないつもりだったということだ。でも、それだけ。
エリナの中での心の距離感は変わらなかった。
「それが露わになった事も日奈達にとってはショックだったっていう事なのかな」
『うん、少なくともしょう子はそう言ってたよ。あの子にしてみればさ、何だかよくわかんない内に麻衣とエリナが言い合いになって、あれよあれよという間に嫌いになるって言われちゃってさ、内心どうしようと想ったって』
聞いている限りではいわゆるその【恋バナ】は予想外に麻衣がヒートアップしてしまったという部分があるのだろう。が、初めはそんなつもりではなかったんじゃないか。
日奈達にとって思春期女子が一番興味を持ち、パーソナルな内面を開かせる話題。
それが【恋バナ】だった。それを明かすことによってえりなとも距離を縮めたい。そう思っていたのではないだろうか。
「実際、彼女等はエリナの事どう思ってたんだろう」
話している内にそもそも論としてそれが気になった。ただ単に人気者にあやかりたい。利用しようとしていただけなのか。
が、香りは私の問い問いで返してきた。
『彼女の事嫌いな人いると想う?』
『そりゃ、分からないよ。人の好き嫌いは様々だからね』
彼女が明るくて人当たりが良い事は事実だ。勿論、それで多くの人が好意を持つことはあるだろう。でも、そういう人間が苦手な人がいる事も事実だからだ。
『それはそうだね。でも、少なくともしょう子含めて四人みんなエリナの事嫌いじゃない筈だよ。利用しようとしていたのも事実だけど、親しくなりたい、仲良くなりたいという気持ちも嘘じゃなかったんじゃないかな』
そういうものかもしれない。が、それなら事は更に複雑だ。
彼女は誰に対しても独特の距離を持つ人だ。それも少し付き合えばわかる。
壁があるとは言わないが、独自のパーソナルスペースがある。それを侵されるのは何より嫌がってた節がある。それも少し付き合えばわかる事だ。
しかし、日奈達は己を彼女の傍に置くことでその距離を物理的に近づけた。そして心の距離もそれによって埋まっていくことを望んだ。
でも、えりなは変わらない。だからそれを求めれば求める程、想い知らされる。そこに不満は生まれる。
「でも、それならさ。普通に友達になろうって言えなかったもんかね」
『うーん。それはそれで難しくない? エリナってそれをストレートに言える雰囲気なかったよ』
確かにそれもそうかもしれない。私自身だって彼女が亡くなった今ですら、彼女を友達だったという事に二の足を踏んでいるのだから。
「それはそうかもしれない。でも、端からみてても分かったよね。無理やり日奈達がエリナを囲い込んでいる形だって、クラスの中で気づいていない人居た?」
そういう私の言葉に香は答える。
『居ないでしょ。でも、ほら、エリナとツーショット撮ったりとかさ、校内で移動する時も一緒にいるのを他のクラスとか学年の人達に見せる事はできる。それで見栄を張れる気になってたんじゃない』
「何だか聞いてたら空しい話だな。ちょっと哀しくすらあるわ」
『そんなの元からでしょ。何にしたって人の人気にあやかってそのおこぼれに預かろうとしてたんだもん。だからいずれ破綻は来ていたんだろうけどね』
つまり纏めるとこういう事だ。
日奈達も初めはそのエリナとの微妙な距離感を感じていた。ただ、自分たちの輪の中に彼女が入っているように見せられればいいと思っていた。でも、それを続けている内に少しでも距離を縮まったと考えた。長く一緒にいる時間に比例することが【仲良く】【親しくなる】ことの基準である。いや、そうであって欲しいと考えたのかもしれない。だから【好きな人の話題】を振り【幼馴染との間】を茶化した。
それが冗談で済むくらいの仲にはなれてると信じて……。
でも、エリナにとってその距離は最初と変わらず一定だったのだ。やっぱりちょっと哀しいなあ。
「しかし視線に入らないようにって言ったってさ。同じ教室内でそんなの無理じゃない?」
彼女の席は教室の奥窓際近く。つまり視線を動かせば一番教室内を見渡せる位置にある。
『誰だってさ。嫌いだって言われて良い気持ちはしないよね。特に彼女達の間の距離感って微妙だったわけじゃん』
エリナだって馬鹿じゃない。感情を露わにすることはないが、勿論感情が無いわけでもない。
日奈達が何を考えて彼女に近づいているか気づかない筈はなかっただろう。でも、自分に害がない範囲でないなら口出ししないつもりだったということだ。でも、それだけ。
エリナの中での心の距離感は変わらなかった。
「それが露わになった事も日奈達にとってはショックだったっていう事なのかな」
『うん、少なくともしょう子はそう言ってたよ。あの子にしてみればさ、何だかよくわかんない内に麻衣とエリナが言い合いになって、あれよあれよという間に嫌いになるって言われちゃってさ、内心どうしようと想ったって』
聞いている限りではいわゆるその【恋バナ】は予想外に麻衣がヒートアップしてしまったという部分があるのだろう。が、初めはそんなつもりではなかったんじゃないか。
日奈達にとって思春期女子が一番興味を持ち、パーソナルな内面を開かせる話題。
それが【恋バナ】だった。それを明かすことによってえりなとも距離を縮めたい。そう思っていたのではないだろうか。
「実際、彼女等はエリナの事どう思ってたんだろう」
話している内にそもそも論としてそれが気になった。ただ単に人気者にあやかりたい。利用しようとしていただけなのか。
が、香りは私の問い問いで返してきた。
『彼女の事嫌いな人いると想う?』
『そりゃ、分からないよ。人の好き嫌いは様々だからね』
彼女が明るくて人当たりが良い事は事実だ。勿論、それで多くの人が好意を持つことはあるだろう。でも、そういう人間が苦手な人がいる事も事実だからだ。
『それはそうだね。でも、少なくともしょう子含めて四人みんなエリナの事嫌いじゃない筈だよ。利用しようとしていたのも事実だけど、親しくなりたい、仲良くなりたいという気持ちも嘘じゃなかったんじゃないかな』
そういうものかもしれない。が、それなら事は更に複雑だ。
彼女は誰に対しても独特の距離を持つ人だ。それも少し付き合えばわかる。
壁があるとは言わないが、独自のパーソナルスペースがある。それを侵されるのは何より嫌がってた節がある。それも少し付き合えばわかる事だ。
しかし、日奈達は己を彼女の傍に置くことでその距離を物理的に近づけた。そして心の距離もそれによって埋まっていくことを望んだ。
でも、えりなは変わらない。だからそれを求めれば求める程、想い知らされる。そこに不満は生まれる。
「でも、それならさ。普通に友達になろうって言えなかったもんかね」
『うーん。それはそれで難しくない? エリナってそれをストレートに言える雰囲気なかったよ』
確かにそれもそうかもしれない。私自身だって彼女が亡くなった今ですら、彼女を友達だったという事に二の足を踏んでいるのだから。
「それはそうかもしれない。でも、端からみてても分かったよね。無理やり日奈達がエリナを囲い込んでいる形だって、クラスの中で気づいていない人居た?」
そういう私の言葉に香は答える。
『居ないでしょ。でも、ほら、エリナとツーショット撮ったりとかさ、校内で移動する時も一緒にいるのを他のクラスとか学年の人達に見せる事はできる。それで見栄を張れる気になってたんじゃない』
「何だか聞いてたら空しい話だな。ちょっと哀しくすらあるわ」
『そんなの元からでしょ。何にしたって人の人気にあやかってそのおこぼれに預かろうとしてたんだもん。だからいずれ破綻は来ていたんだろうけどね』
つまり纏めるとこういう事だ。
日奈達も初めはそのエリナとの微妙な距離感を感じていた。ただ、自分たちの輪の中に彼女が入っているように見せられればいいと思っていた。でも、それを続けている内に少しでも距離を縮まったと考えた。長く一緒にいる時間に比例することが【仲良く】【親しくなる】ことの基準である。いや、そうであって欲しいと考えたのかもしれない。だから【好きな人の話題】を振り【幼馴染との間】を茶化した。
それが冗談で済むくらいの仲にはなれてると信じて……。
でも、エリナにとってその距離は最初と変わらず一定だったのだ。やっぱりちょっと哀しいなあ。
「しかし視線に入らないようにって言ったってさ。同じ教室内でそんなの無理じゃない?」
彼女の席は教室の奥窓際近く。つまり視線を動かせば一番教室内を見渡せる位置にある。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説

【完結】共生
ひなこ
ミステリー
高校生の少女・三崎有紗(みさき・ありさ)はアナウンサーである母・優子(ゆうこ)が若い頃に歌手だったことを封印し、また歌うことも嫌うのを不審に思っていた。
ある日有紗の歌声のせいで、優子に異変が起こる。
隠された母の過去が、二十年の時を経て明らかになる?
俺のタマゴ
さつきのいろどり
ミステリー
朝起きると正体不明の大きなタマゴがあった!主人公、二岾改(ふたやま かい)は、そのタマゴを温めてみる事にしたが、そのタマゴの正体は?!平凡だった改の日常に、タマゴの中身が波乱を呼ぶ!!
※確認してから公開していますが、誤字脱字等、あるかも知れません。発見してもフルスルーでお願いします(汗)
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!
伏線回収の夏
影山姫子
ミステリー
ある年の夏。俺は15年ぶりにT県N市にある古い屋敷を訪れた。大学時代のクラスメイトだった岡滝利奈の招きだった。屋敷で不審な事件が頻発しているのだという。かつての同級生の事故死。密室から消えた犯人。アトリエにナイフで刻まれた無数のX。利奈はそのなぞを、ミステリー作家であるこの俺に推理してほしいというのだ。俺、利奈、桐山優也、十文字省吾、新山亜沙美、須藤真利亜の6人は大学時代、この屋敷でともに芸術の創作に打ち込んだ仲間だった。6人の中に犯人はいるのか? 脳裏によみがえる青春時代の熱気、裏切り、そして別れ。懐かしくも苦い思い出をたどりながら事件の真相に近づく俺に、衝撃のラストが待ち受けていた。
《あなたはすべての伏線を回収することができますか?》

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる