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休日の朝方にモーニングコールで起こしてきたのは
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「やっぱり、日奈達にしてもエリナから面と向かって嫌いと言われるのは困るのかね」
『誰だってさ。嫌いだって言われて良い気持ちはしないよね。特に彼女達の間の距離感って微妙だったわけじゃん』
エリナだって馬鹿じゃない。感情を露わにすることはないが、勿論感情が無いわけでもない。
日奈達が何を考えて彼女に近づいているか気づかない筈はなかっただろう。でも、自分に害がない範囲でないなら口出ししないつもりだったということだ。でも、それだけ。
エリナの中での心の距離感は変わらなかった。
「それが露わになった事も日奈達にとってはショックだったっていう事なのかな」
『うん、少なくともしょう子はそう言ってたよ。あの子にしてみればさ、何だかよくわかんない内に麻衣とエリナが言い合いになって、あれよあれよという間に嫌いになるって言われちゃってさ、内心どうしようと想ったって』
聞いている限りではいわゆるその【恋バナ】は予想外に麻衣がヒートアップしてしまったという部分があるのだろう。が、初めはそんなつもりではなかったんじゃないか。
日奈達にとって思春期女子が一番興味を持ち、パーソナルな内面を開かせる話題。
それが【恋バナ】だった。それを明かすことによってえりなとも距離を縮めたい。そう思っていたのではないだろうか。
「実際、彼女等はエリナの事どう思ってたんだろう」
話している内にそもそも論としてそれが気になった。ただ単に人気者にあやかりたい。利用しようとしていただけなのか。
が、香りは私の問い問いで返してきた。
『彼女の事嫌いな人いると想う?』
『そりゃ、分からないよ。人の好き嫌いは様々だからね』
彼女が明るくて人当たりが良い事は事実だ。勿論、それで多くの人が好意を持つことはあるだろう。でも、そういう人間が苦手な人がいる事も事実だからだ。
『それはそうだね。でも、少なくともしょう子含めて四人みんなエリナの事嫌いじゃない筈だよ。利用しようとしていたのも事実だけど、親しくなりたい、仲良くなりたいという気持ちも嘘じゃなかったんじゃないかな』
そういうものかもしれない。が、それなら事は更に複雑だ。
彼女は誰に対しても独特の距離を持つ人だ。それも少し付き合えばわかる。
壁があるとは言わないが、独自のパーソナルスペースがある。それを侵されるのは何より嫌がってた節がある。それも少し付き合えばわかる事だ。
しかし、日奈達は己を彼女の傍に置くことでその距離を物理的に近づけた。そして心の距離もそれによって埋まっていくことを望んだ。
でも、えりなは変わらない。だからそれを求めれば求める程、想い知らされる。そこに不満は生まれる。
「でも、それならさ。普通に友達になろうって言えなかったもんかね」
『うーん。それはそれで難しくない? エリナってそれをストレートに言える雰囲気なかったよ』
確かにそれもそうかもしれない。私自身だって彼女が亡くなった今ですら、彼女を友達だったという事に二の足を踏んでいるのだから。
「それはそうかもしれない。でも、端からみてても分かったよね。無理やり日奈達がエリナを囲い込んでいる形だって、クラスの中で気づいていない人居た?」
そういう私の言葉に香は答える。
『居ないでしょ。でも、ほら、エリナとツーショット撮ったりとかさ、校内で移動する時も一緒にいるのを他のクラスとか学年の人達に見せる事はできる。それで見栄を張れる気になってたんじゃない』
「何だか聞いてたら空しい話だな。ちょっと哀しくすらあるわ」
『そんなの元からでしょ。何にしたって人の人気にあやかってそのおこぼれに預かろうとしてたんだもん。だからいずれ破綻は来ていたんだろうけどね』
つまり纏めるとこういう事だ。
日奈達も初めはそのエリナとの微妙な距離感を感じていた。ただ、自分たちの輪の中に彼女が入っているように見せられればいいと思っていた。でも、それを続けている内に少しでも距離を縮まったと考えた。長く一緒にいる時間に比例することが【仲良く】【親しくなる】ことの基準である。いや、そうであって欲しいと考えたのかもしれない。だから【好きな人の話題】を振り【幼馴染との間】を茶化した。
それが冗談で済むくらいの仲にはなれてると信じて……。
でも、エリナにとってその距離は最初と変わらず一定だったのだ。やっぱりちょっと哀しいなあ。
「しかし視線に入らないようにって言ったってさ。同じ教室内でそんなの無理じゃない?」
彼女の席は教室の奥窓際近く。つまり視線を動かせば一番教室内を見渡せる位置にある。
『誰だってさ。嫌いだって言われて良い気持ちはしないよね。特に彼女達の間の距離感って微妙だったわけじゃん』
エリナだって馬鹿じゃない。感情を露わにすることはないが、勿論感情が無いわけでもない。
日奈達が何を考えて彼女に近づいているか気づかない筈はなかっただろう。でも、自分に害がない範囲でないなら口出ししないつもりだったということだ。でも、それだけ。
エリナの中での心の距離感は変わらなかった。
「それが露わになった事も日奈達にとってはショックだったっていう事なのかな」
『うん、少なくともしょう子はそう言ってたよ。あの子にしてみればさ、何だかよくわかんない内に麻衣とエリナが言い合いになって、あれよあれよという間に嫌いになるって言われちゃってさ、内心どうしようと想ったって』
聞いている限りではいわゆるその【恋バナ】は予想外に麻衣がヒートアップしてしまったという部分があるのだろう。が、初めはそんなつもりではなかったんじゃないか。
日奈達にとって思春期女子が一番興味を持ち、パーソナルな内面を開かせる話題。
それが【恋バナ】だった。それを明かすことによってえりなとも距離を縮めたい。そう思っていたのではないだろうか。
「実際、彼女等はエリナの事どう思ってたんだろう」
話している内にそもそも論としてそれが気になった。ただ単に人気者にあやかりたい。利用しようとしていただけなのか。
が、香りは私の問い問いで返してきた。
『彼女の事嫌いな人いると想う?』
『そりゃ、分からないよ。人の好き嫌いは様々だからね』
彼女が明るくて人当たりが良い事は事実だ。勿論、それで多くの人が好意を持つことはあるだろう。でも、そういう人間が苦手な人がいる事も事実だからだ。
『それはそうだね。でも、少なくともしょう子含めて四人みんなエリナの事嫌いじゃない筈だよ。利用しようとしていたのも事実だけど、親しくなりたい、仲良くなりたいという気持ちも嘘じゃなかったんじゃないかな』
そういうものかもしれない。が、それなら事は更に複雑だ。
彼女は誰に対しても独特の距離を持つ人だ。それも少し付き合えばわかる。
壁があるとは言わないが、独自のパーソナルスペースがある。それを侵されるのは何より嫌がってた節がある。それも少し付き合えばわかる事だ。
しかし、日奈達は己を彼女の傍に置くことでその距離を物理的に近づけた。そして心の距離もそれによって埋まっていくことを望んだ。
でも、えりなは変わらない。だからそれを求めれば求める程、想い知らされる。そこに不満は生まれる。
「でも、それならさ。普通に友達になろうって言えなかったもんかね」
『うーん。それはそれで難しくない? エリナってそれをストレートに言える雰囲気なかったよ』
確かにそれもそうかもしれない。私自身だって彼女が亡くなった今ですら、彼女を友達だったという事に二の足を踏んでいるのだから。
「それはそうかもしれない。でも、端からみてても分かったよね。無理やり日奈達がエリナを囲い込んでいる形だって、クラスの中で気づいていない人居た?」
そういう私の言葉に香は答える。
『居ないでしょ。でも、ほら、エリナとツーショット撮ったりとかさ、校内で移動する時も一緒にいるのを他のクラスとか学年の人達に見せる事はできる。それで見栄を張れる気になってたんじゃない』
「何だか聞いてたら空しい話だな。ちょっと哀しくすらあるわ」
『そんなの元からでしょ。何にしたって人の人気にあやかってそのおこぼれに預かろうとしてたんだもん。だからいずれ破綻は来ていたんだろうけどね』
つまり纏めるとこういう事だ。
日奈達も初めはそのエリナとの微妙な距離感を感じていた。ただ、自分たちの輪の中に彼女が入っているように見せられればいいと思っていた。でも、それを続けている内に少しでも距離を縮まったと考えた。長く一緒にいる時間に比例することが【仲良く】【親しくなる】ことの基準である。いや、そうであって欲しいと考えたのかもしれない。だから【好きな人の話題】を振り【幼馴染との間】を茶化した。
それが冗談で済むくらいの仲にはなれてると信じて……。
でも、エリナにとってその距離は最初と変わらず一定だったのだ。やっぱりちょっと哀しいなあ。
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彼女の席は教室の奥窓際近く。つまり視線を動かせば一番教室内を見渡せる位置にある。
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関連作品【東雲塔子シリーズ】
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【連作短編集】東雲塔子の事件簿
あかね色に染まる校舎に舞い落ちた君は
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