38 / 84
休日の朝方にモーニングコールで起こしてきたのは
5
しおりを挟む「うーん。それで修羅場となったんなら確かに勝手な話だね」
あまりにもシンプルな流れだがちょっと理解が及ばないようにも思える内容だった。
『いや実際はそれだけじゃないんだよ』
私の呆れた様な言葉に香は更なる言葉を続ける。
「なんだ、じゃあまだなんかある訳だ」
『麻衣がさ、エリナに【真田君の事を好きじゃないなら誰の事が好きなの】って言ったらしいの』
「……そりゃまた、でっかいお世話だね」
言いながら私はエリナとの最後の会話を一瞬思い出す。似たような事を私は聞いてしまっていたなと。
『うん、言われたエリナもそういう返事だったみたい。
エリナは言った【それを言う必要はないでしょ】でも、言われた方は更にヒートアップしてしまう。
「それで、エリナもついに堪忍袋の緒が切れたって訳?」
『ううん。違うの。問題はその後に日奈が割って入って言った言葉なんだよ』
秋田日奈はエリナにこう聞いたらしい。
【ひょっとしてエリナが好きな人って熊谷だったりする?】
熊谷優斗君とエリナが幼馴染だという事は日奈も知っていた。それで名前を出したのだろう。
『エリナはそれを否定した。そしたらね。日奈が笑ったらしいのよ』
『笑ったって、何を』
『えっと、私が言ったんじゃないし、想ってる訳じゃないからね』
そう前置いた後、香は日奈がエリナに言った言葉を口に出した。
【そりゃそうだよな。いくら幼馴染だからってあんなヌボッとしてどんくさい奴好きになる訳ないか。もしそうだったら趣味悪すぎだし】
「はあ……ひっでえ言い種だな。どっちの趣味が悪いんだか」
それを聞いた私は他人事ながらむかっ腹が立つ。彼はどちらかというと目立たない方だ。勉強もスポーツも成績として優れている方ではない。これは事実だ。
でも、とても真面目で一生懸命だという事は伝わるし、私も委員長として一緒に仕事をしていて助けられた事は沢山ある。その彼に対してあんまりな物言いじゃないか。
『本当にね。でも日奈にしてみればその場を和ませる為の軽口の意味もあったのかもしれない』
状況から麻衣は本気でヒートしちゃってる。エリナはエリナで取り付く島もない。
そんな状況を何とかするためのコミュニケーション手段として日奈は誰かを腐してそれを共有して笑うという事しか思い浮かばなかった。だからと言って許されることではないと思うが。
『で、エリナはそれで滅茶苦茶怒っちゃったみたいなんだよね』
「へえ。でもそれそれで想像がつかないな」
気持ちは分かる。が、彼女の怒ったり泣いたりする姿を少なくとも私は一度も見ていない。でも、だからと言って勿論怒りの感情が無いわけはないのだ。
『でもそりゃそうだよ。恋愛とか関係なくたってさ、子供の頃からの友達の悪口言われたらさ気持ちいい訳ないじゃん』
とはいえ、彼女は怒鳴ったりはしなかった。ただ、その場で一人一人の顔を見ながら無表情でこういった。
【あなた達四人。二度と私の視界に入らない様にしてちょうだい。もしそうなった時はあなた達全員を嫌いになるからね】
「そりゃなかなかトリッキーなセリフを吐いたもんだね」
『うん。でも、効果てきめんだったみたいよ』
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
部室強制監獄
裕光
BL
夜8時に毎日更新します!
高校2年生サッカー部所属の祐介。
先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。
ある日の夜。
剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう
気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた
現れたのは蓮ともう1人。
1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。
そして大野は裕介に向かって言った。
大野「お前も肉便器に改造してやる」
大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる