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休日の朝方にモーニングコールで起こしてきたのは
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しおりを挟む目が覚めたら、午前九時近く。
「あ、学校……」
時計を見て一瞬慌てて身を起しかけるが、すぐに休日だと気づいて又ごろんと布団の中に身を包ませる。
昨日は何時に寝たっけ。寝付けないんじゃないかと少し不安だったが、疲れの方が勝ったのだろう。布団に入って目を閉じたらそのまま意識が途絶え、ぐっすりだった。
今日は何だか頭が重い。もう少し寝てようかなと思っていると、スマホから着信音が鳴った。視ると友人の木島香からの通話だった。
「もしもし」
言った後、私は通話をスピーカーに切り替える。
『あ、トーコ? おはよう……てっまだ眠そうだね?』
キンキンとした甲高い声が頭に響き渡る。
「おはよう、あんたの声を聞いたら目が冴えてきたよ」
彼女、木島香はパッツンヘアにおさげ髪、度が強く大振りなメガネをかけており図書委員を務めている。その見た目からすると大人しくたおやかな女の子だと想いがちだが、見た目と裏腹、声もでかく好奇心が旺盛で話好きだ。
『にゅふふふふ。そりゃあ良かったね。トーコの目覚まし代わりになれるなんてコーエーだよう』
「普段ならそれも結構なんだけどね、今日に関してはもう少し寝てたかったんだよね」
彼女と話している最中にドンドン目が覚めてくる。
『ほえ? 珍しいね。いつもならお休みでももう起きてる時間じゃん。あ……』
それまで朗らかに話していた彼女の口調が一瞬止まる。
「ん? どした?」
『えっと。あの、昨日は大変だったんだよね』
「まあ、ね。大変って言えばそうだった」
『だ、大丈夫? それで遅くまで起きてたとかじゃないよね』
彼女は普段ズケズケと物を言うタイプだ。が、決して無神経ではない。人並みの気遣いは十分出来る娘だ。
「だいじょばない」
私はそれに答える為に少しおどけていった。が、彼女はそれをどう受け取って良いか迷ったようだ。
『へ? だいじょばないん? ごめん、一旦切ろうか』
心配半分、探るような半分の声で言う彼女。それに対して安心させるようにはっきり言葉に出して答えた。
「なーんってね。大丈夫だよ。いつまでも腐ってられないしさ」
『ん……、そうか。で、あの、さ……』
私の言葉に納得した様だった。が、彼女は更にそこからの言葉を濁してしまう。
「リナの事でしょ。実はね私、転落する瞬間をみちゃったんだ」
『やっぱり、そうだったの』
「ああ、知ってたのか」
『熊谷君からトーコが教室で気を失っていたから保健室に運んだっていう話を聞いたの、何かあったんだろうなとはね』
「なるほど。いや、びっくりしたよ。だってさ、窓の外を見たら上から何かが降って来たもんだからさ……」
『うん、いいよ分かってる。私も下で少しその姿見ちゃったもん』
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