28 / 84
私から彼女達に話した内容は
10
しおりを挟む
「因みに、降矢先生は十六時から十六時四十五分までの間、職員会議に出ていた事が確認されているわ。それ以降は理科実験準備室にいたみたい」
彼は理科教師なので理科準備室にいること自体は不自然ではない。でも、理科教師は他に彼以外の先生が出入りする可能性だってあるのではないか。
「その間、降矢先生はずっと一人だったんでしょうか?」
「ええ。何でも十七時過ぎ頃から三十分の間に熊谷先生と電話で話をしていたらしいの」
「えっ……でも、しおり先生も学校にいたんですよね。わざわざ電話で話す必要あるんでしょうか」
「熊谷先生の方も十七時から基本的に保健室でこなさなきゃならい仕事があった。だから、降矢先生に電話を掛けたと言っているわ」
「つまり、しおり先生の方からかけてるということですか?」
「ええ。両者の意見は一致してる。一応お互いのスマホの履歴も見せて貰ったんだけど齟齬は無い感じね」
何だか妙な感じだった。二人共同じ学校の中にいながらわざわざ電話で話す必要があるのだろうか。
「しおり先生が保健室にいたのは間違いないんですか」
「少なくとも転落直後遺体を発見した生徒の一人が保健室に駆け込んでるわ。その時に彼女がいた事は間違いないみたい」
転落した直後、熊谷しおり先生は一階の保健室にいた。という事は少なくとも転落時に屋上にいる事は難しいだろう。
「まあ、でも流石に熊谷先生は関係ないですよね」
「どうかな。それはこれから詳しく調べない事には分からないけどね」
「え、でも。えりなは熊谷先生の事慕っていた感じでしたよ。熊谷先生の事を話すときはとても楽しそう……」
言いながら言葉が途切れる。自分で言って気づいたのだ。先ほど話していたエリナの話。
彼女の感情を揺らす人間がいないといった言葉とそれは相反するものだった。
「二見エリナさんと熊谷しおりさんはお互い昔から親しかったのよね」
「はい。そう聞いてます」
「熊谷先生からも少し話を聞いたんだけど、一時期は妹同然に可愛がってたんですってね」
「えりなも姉の様に思ってたと言ってました。」
近所に住んでいたもの同士、年は離れていても親しくしていた幼馴染。それはとても微笑ましく、暖かかみを感じる間柄。だが、
「でも、熊谷先生は降矢先生と婚約した」
「…………」
「二見さん寂しいって思わなかったのかな」
そうだ、この質問は直接エリナに尋ねた。その答え方表情。それが彼女の胸の内を物語っていた。が、それをこの場で答えていいのだろうか。彼女があそこまで自分の感情を表にだした事は今までなかった気がする。
自惚れかもしれないが、彼女は私を信頼してくれていたのではないか。
恐らく、滝田さんは気づいているっぽい。でも、だからといって、彼女が最期に見せた胸の内を成り代わって答える事が許されるのか。躊躇した結果、
「どう、でしょう」
と答えるのが精一杯だった。
彼は理科教師なので理科準備室にいること自体は不自然ではない。でも、理科教師は他に彼以外の先生が出入りする可能性だってあるのではないか。
「その間、降矢先生はずっと一人だったんでしょうか?」
「ええ。何でも十七時過ぎ頃から三十分の間に熊谷先生と電話で話をしていたらしいの」
「えっ……でも、しおり先生も学校にいたんですよね。わざわざ電話で話す必要あるんでしょうか」
「熊谷先生の方も十七時から基本的に保健室でこなさなきゃならい仕事があった。だから、降矢先生に電話を掛けたと言っているわ」
「つまり、しおり先生の方からかけてるということですか?」
「ええ。両者の意見は一致してる。一応お互いのスマホの履歴も見せて貰ったんだけど齟齬は無い感じね」
何だか妙な感じだった。二人共同じ学校の中にいながらわざわざ電話で話す必要があるのだろうか。
「しおり先生が保健室にいたのは間違いないんですか」
「少なくとも転落直後遺体を発見した生徒の一人が保健室に駆け込んでるわ。その時に彼女がいた事は間違いないみたい」
転落した直後、熊谷しおり先生は一階の保健室にいた。という事は少なくとも転落時に屋上にいる事は難しいだろう。
「まあ、でも流石に熊谷先生は関係ないですよね」
「どうかな。それはこれから詳しく調べない事には分からないけどね」
「え、でも。えりなは熊谷先生の事慕っていた感じでしたよ。熊谷先生の事を話すときはとても楽しそう……」
言いながら言葉が途切れる。自分で言って気づいたのだ。先ほど話していたエリナの話。
彼女の感情を揺らす人間がいないといった言葉とそれは相反するものだった。
「二見エリナさんと熊谷しおりさんはお互い昔から親しかったのよね」
「はい。そう聞いてます」
「熊谷先生からも少し話を聞いたんだけど、一時期は妹同然に可愛がってたんですってね」
「えりなも姉の様に思ってたと言ってました。」
近所に住んでいたもの同士、年は離れていても親しくしていた幼馴染。それはとても微笑ましく、暖かかみを感じる間柄。だが、
「でも、熊谷先生は降矢先生と婚約した」
「…………」
「二見さん寂しいって思わなかったのかな」
そうだ、この質問は直接エリナに尋ねた。その答え方表情。それが彼女の胸の内を物語っていた。が、それをこの場で答えていいのだろうか。彼女があそこまで自分の感情を表にだした事は今までなかった気がする。
自惚れかもしれないが、彼女は私を信頼してくれていたのではないか。
恐らく、滝田さんは気づいているっぽい。でも、だからといって、彼女が最期に見せた胸の内を成り代わって答える事が許されるのか。躊躇した結果、
「どう、でしょう」
と答えるのが精一杯だった。
0
ツギクルバナーリンクよろしければお願い致します。
関連作品【東雲塔子シリーズ】
-------------------------------------------------------
【連作短編集】東雲塔子の事件簿
あかね色に染まる校舎に舞い落ちた君は
-------------------------------------------------------
【連作短編集】東雲塔子の事件簿
あかね色に染まる校舎に舞い落ちた君は
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説

聖女の如く、永遠に囚われて
white love it
ミステリー
旧貴族、秦野家の令嬢だった幸子は、すでに百歳という年齢だったが、その外見は若き日に絶世の美女と謳われた頃と、少しも変わっていなかった。
彼女はその不老の美しさから、地元の人間達から今も魔女として恐れられながら、同時に敬われてもいた。
ある日、彼女の世話をする少年、遠山和人のもとに、同級生の島津良子が来る。
良子の実家で、不可解な事件が起こり、その真相を幸子に探ってほしいとのことだった。
実は幸子はその不老の美しさのみならず、もう一つの点で地元の人々から恐れられ、敬われていた。
━━彼女はまぎれもなく、名探偵だった。
登場人物
遠山和人…中学三年生。ミステリー小説が好き。
遠山ゆき…中学一年生。和人の妹。
島津良子…中学三年生。和人の同級生。痩せぎみの美少女。
工藤健… 中学三年生。和人の友人にして、作家志望。
伊藤一正…フリーのプログラマー。ある事件の犯人と疑われている。
島津守… 良子の父親。
島津佐奈…良子の母親。
島津孝之…良子の祖父。守の父親。
島津香菜…良子の祖母。守の母親。
進藤凛… 家を改装した喫茶店の女店主。
桂恵… 整形外科医。伊藤一正の同級生。
秦野幸子…絶世の美女にして名探偵。百歳だが、ほとんど老化しておらず、今も若い頃の美しさを保っている。


サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ビジョンゲーム
戸笠耕一
ミステリー
高校2年生の香西沙良は両親を死に追いやった真犯人JBの正体を掴むため、立てこもり事件を引き起こす。沙良は半年前に父義行と母雪絵をデパートからの帰り道で突っ込んできたトラックに巻き込まれて失っていた。沙良も背中に大きな火傷を負い復讐を決意した。見えない敵JBの正体を掴むため大切な友人を巻き込みながら、犠牲や後悔を背負いながら少女は備わっていた先を見通す力「ビジョン」を武器にJBに迫る。記憶と現実が織り交ざる頭脳ミステリーの行方は! SSシリーズ第一弾!
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
パラダイス・ロスト
真波馨
ミステリー
架空都市K県でスーツケースに詰められた男の遺体が発見される。殺された男は、県警公安課のエスだった――K県警公安第三課に所属する公安警察官・新宮時也を主人公とした警察小説の第一作目。
※旧作『パラダイス・ロスト』を加筆修正した作品です。大幅な内容の変更はなく、一部設定が変更されています。旧作版は〈小説家になろう〉〈カクヨム〉にのみ掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる