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私から彼女達に話した内容は
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「ど、どういう意味ですか?」
「文字通りの意味よ」
私は思いもよらない言葉に混乱して聞き返した。でも、それに比べて滝田さんの顔は酷薄さすら感じとれるほどの平静なものだった。
「で、でも。転落したのはエリナですよ。それともあれが彼女ではない可能性があるってことですか」
自分で言いながら何だか馬鹿みたいな物言いだなと思う。それが事実であることは私を誰よりも知っている。この目で見たのだから間違いないのだ。
「いいえ。彼女のご遺体は沢山の人が目にしているわ。それに熊谷しおり先生にも確認して頂いたの。間違いないということだったわ」
万が一、見た目がそっくりで別の人間だったとしても、古くからの付き合いがある熊谷姉弟が気づかない訳がない。
「じゃあ、何で彼女が殺したいと思っていた相手がいたかなんて話になるんですか」
「まあ、落ち着いてよ。こちらとしても色々な可能性を考えたいの」
「正直言えば、彼女が自分で飛び降りたということは未だに信じられません」
来月の文化祭に参加したいと言っていた。それにそうだ。彼女は『また、来週ね』とも言って出て行った。という事は来週もまたこの教室に登校するつもりがあったという事だ。その彼女がその直後飛び降りた。そんなの有り得ない。……でも、かといって。
「彼女が誰かを殺そうなんて事を考えていたとはとても思えません」
「それはどうしてそう思うの? 彼女の様な【良い人】が人を殺すなんて信じたくないとかそういう印象の話なのかな」
「いえ、違います」
キッパリと私は首を振る。
彼女が良い人だったか悪い人だったかと言えば私にとっては良い人だったと断言できる。クラスの中でも大多数が彼女を良い人だと思っていただろう。秋田日奈だって入学してすぐに彼女が良い人だと思ったのだろう。
だから彼女を利用してクラスでのし上がろうと画策した。でも、彼女はひなが思う程与しやすい相手じゃなかった。
日奈のグループと揉めた時、日奈達は彼女をハブにしようとしたしていた節もある。それは失敗したがもしそれが成功しても彼女は恐らく気にしなかっただろう。
彼女は周りに流されている様に見せて自分をしっかりと持っていた。彼女の周りには常に人がいた。でも、そんな中で彼女は特定の一人と誰とも仲良くしたりつるんだりはしていなかった。幼馴染の優斗くんとすらフラットに見えた。誰かと接する時にも常に薄皮一枚くらい隙間を常に作って相対していた。
でもそんな独特の空気、絶妙の距離を含めた彼女との関係性が私は好きだったのだ。恐らく秋田日奈の件以来クラスの中で言えば私が一番彼女と近い距離にいたと想う。でもだからこそ、彼女と友達かと聞かれると私はノーと答える。それは彼女が求めている関係性と違うものだと直感するから。
「中々面白いお話ね」
非常に微妙な内容で上手く言葉で説明できてるかも分からない私の話を滝田さんは興味深そうに聞こえた。
「でも、だからこそ想うんです。彼女はこのクラスの誰とでも距離を置いていた。逆に言うと彼女が殺意を抱く程。それだけ感情の揺れを作り出す様な関係性を築ける相手が知っている限りではいません」
「文字通りの意味よ」
私は思いもよらない言葉に混乱して聞き返した。でも、それに比べて滝田さんの顔は酷薄さすら感じとれるほどの平静なものだった。
「で、でも。転落したのはエリナですよ。それともあれが彼女ではない可能性があるってことですか」
自分で言いながら何だか馬鹿みたいな物言いだなと思う。それが事実であることは私を誰よりも知っている。この目で見たのだから間違いないのだ。
「いいえ。彼女のご遺体は沢山の人が目にしているわ。それに熊谷しおり先生にも確認して頂いたの。間違いないということだったわ」
万が一、見た目がそっくりで別の人間だったとしても、古くからの付き合いがある熊谷姉弟が気づかない訳がない。
「じゃあ、何で彼女が殺したいと思っていた相手がいたかなんて話になるんですか」
「まあ、落ち着いてよ。こちらとしても色々な可能性を考えたいの」
「正直言えば、彼女が自分で飛び降りたということは未だに信じられません」
来月の文化祭に参加したいと言っていた。それにそうだ。彼女は『また、来週ね』とも言って出て行った。という事は来週もまたこの教室に登校するつもりがあったという事だ。その彼女がその直後飛び降りた。そんなの有り得ない。……でも、かといって。
「彼女が誰かを殺そうなんて事を考えていたとはとても思えません」
「それはどうしてそう思うの? 彼女の様な【良い人】が人を殺すなんて信じたくないとかそういう印象の話なのかな」
「いえ、違います」
キッパリと私は首を振る。
彼女が良い人だったか悪い人だったかと言えば私にとっては良い人だったと断言できる。クラスの中でも大多数が彼女を良い人だと思っていただろう。秋田日奈だって入学してすぐに彼女が良い人だと思ったのだろう。
だから彼女を利用してクラスでのし上がろうと画策した。でも、彼女はひなが思う程与しやすい相手じゃなかった。
日奈のグループと揉めた時、日奈達は彼女をハブにしようとしたしていた節もある。それは失敗したがもしそれが成功しても彼女は恐らく気にしなかっただろう。
彼女は周りに流されている様に見せて自分をしっかりと持っていた。彼女の周りには常に人がいた。でも、そんな中で彼女は特定の一人と誰とも仲良くしたりつるんだりはしていなかった。幼馴染の優斗くんとすらフラットに見えた。誰かと接する時にも常に薄皮一枚くらい隙間を常に作って相対していた。
でもそんな独特の空気、絶妙の距離を含めた彼女との関係性が私は好きだったのだ。恐らく秋田日奈の件以来クラスの中で言えば私が一番彼女と近い距離にいたと想う。でもだからこそ、彼女と友達かと聞かれると私はノーと答える。それは彼女が求めている関係性と違うものだと直感するから。
「中々面白いお話ね」
非常に微妙な内容で上手く言葉で説明できてるかも分からない私の話を滝田さんは興味深そうに聞こえた。
「でも、だからこそ想うんです。彼女はこのクラスの誰とでも距離を置いていた。逆に言うと彼女が殺意を抱く程。それだけ感情の揺れを作り出す様な関係性を築ける相手が知っている限りではいません」
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