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私から彼女達に話した内容は
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「まあ、それって結果一番初めに聞いた話に戻っちゃうんだけど、彼女をこの世から消してしまいたい人間。心当たりないかしら」
「少なくとも私の知る範囲で彼女を殺したい程恨んでいた人は思い当たりません」
「秋田日奈さんや宮前麻衣さんと揉めてたのは認めたわよね」
「確かに険悪な雰囲気もありました。でも殺したいって思う程には見えませんでしたよ」
「実際に秋田さんグループが二見エリナさんから離れた直後ってどんな感じだったの」
「どうって……双方が接触を断ったという感じですね」
揉め事が起きる前までは、朝登校すると日奈達が周りを囲むようにエリナの席をグルリと囲むのが日課だった。昼休みには自分たちの椅子まで持ってきていた。なぜそうなったかには理由がある。
まだ入学して直後今と席順が違い、エリナの前が私ではなかった頃。日奈はエリナの前に座っていた女子の椅子を『ちょっと、席借りるわ』と言って強引に座ろうとしたのだ。が、エリナがピリャリと言った。『そういうの止めなよ。恥ずかしい』
日頃の彼女とは違う無表情。でも、その語気は鋭くキーンと教室中に冷え切った空気が流れたように思える瞬間。
その様子に慌てた日奈は『ご、ごめん。ジョーダンジョーダン』と言葉少なに言って立ち上がり気まずそうな顔でそのまま棒立ち。それに対してエリナは顔を向けることなくまっすぐと前を向いて座っていた。
それ以降休み時間に日奈達は椅子を持ち寄ってエリナの傍に座るようになったのだ。そしてこの状況がエリナとひな達の関係を物語っていた。飽くまでエリナはひな達に合わせる事はしない。
「ねえ、本当に秋田さん達と二見さんって仲良かったの?」
「仲が良いという言葉の意味にもよりますね。秋田さん達はそう見せたかったんでしょう」
「……でも、二見エリナさんの方は違った?」
「と想いますよ」
彼女に聞いたわけではない。でも、恐らくそれが真実。
「来るもの拒まず去る者は追わずタイプって事?」
「それとも違うと想いますね。授業中でない場合はその身をどこに置くかは各々生徒の自由。だから、自分の傍に彼女らがいても文句を言う立場にはないっていう感覚だったんじゃないでしょうか」
「じゃあ、逆に誰に対しても壁を作っていたっていう様にも聞こえるけど」
「わかりやすく言うとそうなるんじゃないでしょうか」
滝田さんの言う言葉は半分正しい気がするが半分彼女の本質を捉えていない気がする。
恐らく彼女は誰よりも自由であることを尊重するタイプだったのだろう。それは自分も他人もだ。だから日奈達が傍にいる事は許した。でも、自分は自分。それに影響されることはしない。
「聞けば聞く程、両者が正反対のタイプに聞こえるんだけど」
「ええ、それは間違いないと思いますね」
秋田日奈だって馬鹿じゃない。途中でそれに気が付いた筈だ。それでも自分達の対面を保とうと必死でエリナにしがみついた。
「つまり、いずれ関係は崩壊してたかもしれないのね」
「そうですね。まあ、関係と言えるほどのものがあったのかもわかりませんが」
「そう、分かったわ。ありがとう。後は当人に連絡がとれたら詳しく聞く事にしましょう。で、他にはどうかな」
「彼女を殺す動機を持つ人ですか? 思い当たりませんね」
「因みに彼女、文武両道に長けたタイプだったのよね。成績上のライバルとかはいなかった?」
つまり、テストの結果の事をいっているのだろうか。テストなら中間テストと期末テストを経験はしている。
「はい。出てますよ」
「因みに順位とかわかってるのかしら。彼女は何位だったとか」
「一学期の期末テストは一位でした」
実際彼女は優秀だった。一学期の通知表成績もかなり良かった筈だ。
「へ~。優秀だったのね。因みに答え難い質問かもしれないけど、彼女に迫っていた生徒とかって分からないかしら。彼女をライバル視してたりする生徒とか」
「つまり、成績順位の二位とか三位とか、彼女に迫っている生徒ってことですか。因みにその人って容疑者として疑われたりするんでしょうか」
この話の流れで聞かれているのだから当然そういう意味にしかとれないが、敢えて私は聞いてみる。
「やーね、別にそういう訳じゃないわ。それだけで疑ったりはしないわよ。ちょっとした興味、参考程度に聞いてみるだけ」
滝田さんは勤めて明るい口調になりながら最後にはウインクをしてそれに答える。
「そうですか。それなら安心しました」
まあ、別にここまで来て隠すことではないと想い私も笑顔でそれに答える事にする。
「えっと……それってどういう意味?」
「二位は私でした。因みに彼女と五点差です」
「少なくとも私の知る範囲で彼女を殺したい程恨んでいた人は思い当たりません」
「秋田日奈さんや宮前麻衣さんと揉めてたのは認めたわよね」
「確かに険悪な雰囲気もありました。でも殺したいって思う程には見えませんでしたよ」
「実際に秋田さんグループが二見エリナさんから離れた直後ってどんな感じだったの」
「どうって……双方が接触を断ったという感じですね」
揉め事が起きる前までは、朝登校すると日奈達が周りを囲むようにエリナの席をグルリと囲むのが日課だった。昼休みには自分たちの椅子まで持ってきていた。なぜそうなったかには理由がある。
まだ入学して直後今と席順が違い、エリナの前が私ではなかった頃。日奈はエリナの前に座っていた女子の椅子を『ちょっと、席借りるわ』と言って強引に座ろうとしたのだ。が、エリナがピリャリと言った。『そういうの止めなよ。恥ずかしい』
日頃の彼女とは違う無表情。でも、その語気は鋭くキーンと教室中に冷え切った空気が流れたように思える瞬間。
その様子に慌てた日奈は『ご、ごめん。ジョーダンジョーダン』と言葉少なに言って立ち上がり気まずそうな顔でそのまま棒立ち。それに対してエリナは顔を向けることなくまっすぐと前を向いて座っていた。
それ以降休み時間に日奈達は椅子を持ち寄ってエリナの傍に座るようになったのだ。そしてこの状況がエリナとひな達の関係を物語っていた。飽くまでエリナはひな達に合わせる事はしない。
「ねえ、本当に秋田さん達と二見さんって仲良かったの?」
「仲が良いという言葉の意味にもよりますね。秋田さん達はそう見せたかったんでしょう」
「……でも、二見エリナさんの方は違った?」
「と想いますよ」
彼女に聞いたわけではない。でも、恐らくそれが真実。
「来るもの拒まず去る者は追わずタイプって事?」
「それとも違うと想いますね。授業中でない場合はその身をどこに置くかは各々生徒の自由。だから、自分の傍に彼女らがいても文句を言う立場にはないっていう感覚だったんじゃないでしょうか」
「じゃあ、逆に誰に対しても壁を作っていたっていう様にも聞こえるけど」
「わかりやすく言うとそうなるんじゃないでしょうか」
滝田さんの言う言葉は半分正しい気がするが半分彼女の本質を捉えていない気がする。
恐らく彼女は誰よりも自由であることを尊重するタイプだったのだろう。それは自分も他人もだ。だから日奈達が傍にいる事は許した。でも、自分は自分。それに影響されることはしない。
「聞けば聞く程、両者が正反対のタイプに聞こえるんだけど」
「ええ、それは間違いないと思いますね」
秋田日奈だって馬鹿じゃない。途中でそれに気が付いた筈だ。それでも自分達の対面を保とうと必死でエリナにしがみついた。
「つまり、いずれ関係は崩壊してたかもしれないのね」
「そうですね。まあ、関係と言えるほどのものがあったのかもわかりませんが」
「そう、分かったわ。ありがとう。後は当人に連絡がとれたら詳しく聞く事にしましょう。で、他にはどうかな」
「彼女を殺す動機を持つ人ですか? 思い当たりませんね」
「因みに彼女、文武両道に長けたタイプだったのよね。成績上のライバルとかはいなかった?」
つまり、テストの結果の事をいっているのだろうか。テストなら中間テストと期末テストを経験はしている。
「はい。出てますよ」
「因みに順位とかわかってるのかしら。彼女は何位だったとか」
「一学期の期末テストは一位でした」
実際彼女は優秀だった。一学期の通知表成績もかなり良かった筈だ。
「へ~。優秀だったのね。因みに答え難い質問かもしれないけど、彼女に迫っていた生徒とかって分からないかしら。彼女をライバル視してたりする生徒とか」
「つまり、成績順位の二位とか三位とか、彼女に迫っている生徒ってことですか。因みにその人って容疑者として疑われたりするんでしょうか」
この話の流れで聞かれているのだから当然そういう意味にしかとれないが、敢えて私は聞いてみる。
「やーね、別にそういう訳じゃないわ。それだけで疑ったりはしないわよ。ちょっとした興味、参考程度に聞いてみるだけ」
滝田さんは勤めて明るい口調になりながら最後にはウインクをしてそれに答える。
「そうですか。それなら安心しました」
まあ、別にここまで来て隠すことではないと想い私も笑顔でそれに答える事にする。
「えっと……それってどういう意味?」
「二位は私でした。因みに彼女と五点差です」
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