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茜色に染まる校舎に舞い落ちたのは
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「ええっと……ああ、そ、それは兎も角。優斗はどうしたの?」
エリナは突然話題を変える様にそういった。何となく取り繕うような空気も感じたがこれ以上突っ込んでも仕方なさそうだ。
「ああ、彼なら文化祭実行委員の方へ行ってるよ」
来月に控えた文化祭に向けてクラスでも出店や出し物をすることになっている。
彼はクラス副委員長で、今は文化祭事前会合に参加している。私はクラス雑務を仰せつかったので、彼だけで行ってもらったのだ。
「ふーん。全くせっかくの機会をこうやって棒に振って運のない奴」
「え? 機会って……な、何が?」
今の今まで喋っていた内容と繋がらない言葉に私は戸惑った。
「べっつに~。えっとやるのクレープ屋だっけ? 楽しみだね」
私達のクラスはクレープ屋をやる事になっていた。実際にやれば楽しいのだろうが、私の立場上、事前準備の為、役割分担を取り決めたりしなきゃならない。結構大変なのだ。
「まあ、ね。みんなに楽しんでもらえれば、あたしゃ本望だよ」
軽く委員長を引き受けたことを後悔しかけていたが、それを吹き飛ばすようにわざとそんな言葉を吐いてみる。
「にゃははははは。そんな言葉使いしているとすぐにお婆ちゃんになっちゃうぞ」
「もう、ワシも若くないわい。エリナさん、昼飯はまだかの」
「にゃははははは。お婆ちゃん、もう食べたでしょ」
そんな他愛ないやり取りをした事で少し気が晴れる。
「お婆ちゃん、お肩を揉みましょうね」
エリナは更にふざけたような口調でありながら、私の肩グッグッと指圧する。意外に程よい力加減で気持ち良かった。
「ありがとうや。エリナさん」
未だふざけてそれに答えた私。しかし、それに対してエリナは突然後ろからがばっと私の両肩を抱く。そして、
「うん。お互いに頑張ろうね」といった。
『頑張ろう』といった言葉の中身。私については委員長としての活動について言ったのだろうが、彼女自身は何を『頑張ろう』と言っていたのか。この時の私には分からなかったが深くは聞かずに「うん、頑張ろう」と答えた。
「さーてと。じゃあ、行こうかな」
言って彼女はスマホを取り出して画面を見ながら言う。ピンク色で中に白地でハート型が付いてスマホケースが目に付いた。
「うん。そうだよ。日が落ちるのも早くなったからね。もうすぐ暗くなっちゃう。危ないよ、気を付けて帰りな」
「それはお互い様じゃない。東雲さんこそ、まだもう少しかかるんでしょ」
「私は家、そんなに遠くないからさ。あなたは自転車でしょ」
「ま、ね。お気遣いありがとう。気を付けて帰ることにするよ。名残惜しいけど。また、来週」
「はいはい。また、来週ね」
今日は金曜日。開けて月曜日も祝日の為に次の登校は火曜日になる。
ドアをガラガラっと開けてエリナが出ていくと、教室の中は静まり返った。
教室内にはまた私一人きりなる。遠くからは吹奏楽部の練習音や、部活動の掛け声が聞こえてくるが、それらになんだか寂しい気持ちが煽られていく。
私は中断していた日誌を一気に書き上げると、それとプリントの束を持って職員室にむかう。
「失礼します」
扉を開けて中を覗き込んだが担任のフル先の姿はなかった。その場合は本人の机の上に置いておけばいい事になっていたので、一式置いた後、教室に戻る。
エリナは突然話題を変える様にそういった。何となく取り繕うような空気も感じたがこれ以上突っ込んでも仕方なさそうだ。
「ああ、彼なら文化祭実行委員の方へ行ってるよ」
来月に控えた文化祭に向けてクラスでも出店や出し物をすることになっている。
彼はクラス副委員長で、今は文化祭事前会合に参加している。私はクラス雑務を仰せつかったので、彼だけで行ってもらったのだ。
「ふーん。全くせっかくの機会をこうやって棒に振って運のない奴」
「え? 機会って……な、何が?」
今の今まで喋っていた内容と繋がらない言葉に私は戸惑った。
「べっつに~。えっとやるのクレープ屋だっけ? 楽しみだね」
私達のクラスはクレープ屋をやる事になっていた。実際にやれば楽しいのだろうが、私の立場上、事前準備の為、役割分担を取り決めたりしなきゃならない。結構大変なのだ。
「まあ、ね。みんなに楽しんでもらえれば、あたしゃ本望だよ」
軽く委員長を引き受けたことを後悔しかけていたが、それを吹き飛ばすようにわざとそんな言葉を吐いてみる。
「にゃははははは。そんな言葉使いしているとすぐにお婆ちゃんになっちゃうぞ」
「もう、ワシも若くないわい。エリナさん、昼飯はまだかの」
「にゃははははは。お婆ちゃん、もう食べたでしょ」
そんな他愛ないやり取りをした事で少し気が晴れる。
「お婆ちゃん、お肩を揉みましょうね」
エリナは更にふざけたような口調でありながら、私の肩グッグッと指圧する。意外に程よい力加減で気持ち良かった。
「ありがとうや。エリナさん」
未だふざけてそれに答えた私。しかし、それに対してエリナは突然後ろからがばっと私の両肩を抱く。そして、
「うん。お互いに頑張ろうね」といった。
『頑張ろう』といった言葉の中身。私については委員長としての活動について言ったのだろうが、彼女自身は何を『頑張ろう』と言っていたのか。この時の私には分からなかったが深くは聞かずに「うん、頑張ろう」と答えた。
「さーてと。じゃあ、行こうかな」
言って彼女はスマホを取り出して画面を見ながら言う。ピンク色で中に白地でハート型が付いてスマホケースが目に付いた。
「うん。そうだよ。日が落ちるのも早くなったからね。もうすぐ暗くなっちゃう。危ないよ、気を付けて帰りな」
「それはお互い様じゃない。東雲さんこそ、まだもう少しかかるんでしょ」
「私は家、そんなに遠くないからさ。あなたは自転車でしょ」
「ま、ね。お気遣いありがとう。気を付けて帰ることにするよ。名残惜しいけど。また、来週」
「はいはい。また、来週ね」
今日は金曜日。開けて月曜日も祝日の為に次の登校は火曜日になる。
ドアをガラガラっと開けてエリナが出ていくと、教室の中は静まり返った。
教室内にはまた私一人きりなる。遠くからは吹奏楽部の練習音や、部活動の掛け声が聞こえてくるが、それらになんだか寂しい気持ちが煽られていく。
私は中断していた日誌を一気に書き上げると、それとプリントの束を持って職員室にむかう。
「失礼します」
扉を開けて中を覗き込んだが担任のフル先の姿はなかった。その場合は本人の机の上に置いておけばいい事になっていたので、一式置いた後、教室に戻る。
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