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第0章 法術概論

法術概論Ⅴ -法術産業、そして現代-

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赤館はふうっと息を吐いてパネルに表示された時計を見る。



話始めて20分が経過していた。



検索した資料を提示しながらラストスパートをかける。



額にはじんわりと汗が滲み始めている。



「私たちの年代は何かと法術産業から発展した出来事やテクノロジーと例えられ、どれそれの時なんて言われますよね。」



赤館が生まれた時代は法術産業時代真っ只中である。



なぜなら、TMOの研究者マナは大気中に存在しており、それがエネルギーとして活用できることを見つけたのだ。



それが法術産業時代突入の狼煙となった。



奇しくも枯渇しかけてきた既存のエネルギー資源にうってかわってしまう画期的な資源を発見した各国は自国のインフラを整備し、特に医業と工業に注力していく。



これまで遠い未来と考えれていた人体及び臓器復元の再生医療、航空機やモノレールなどの無人航行が実現され、死へのリスクが激減した我々人間の寿命はさらに延びることになる。



そして、軍事産業においては如何なる法術技術の利用を禁ずることを安全保障理事会が可決。



以前として法術施行による犯罪やテロは発生していたが、安保理下に各国の非常事態に対応する平和治安維持を目的に【法術特務機構”TTO”】が設立された。



三大法術事件以上のショッキングな事件は現在も起こっていない今日からTMOが開発した最新鋭の設備や装備の試験部隊と揶揄されているTTOの存在という抑止力は絶大なのだろう。











現代に至る2040年。



法術は我々の日常生活には欠かせないものとなってきている。



このフロートパネルやさっき先生が使っていたフロートタブレットも法術工学と電子工学の複合技術だ。



校内には学生と職員のプエナティスをモニタリングすることができ、プエナティスの活性状況からバイタルの変化など感知することで緊急の場合は近隣の医療機関に搬送準備も可能となっている。



さらに現代社会では法術施行の可否が人生のアドバンテージになっていることは否めない。



私を含むこの学生たちは誰しも法術施行ができる人間。



すなわち、政界や多くの大企業より有望されそれぞれの将来は希望に満ち溢れている。



今、この国の政界や経済をリードしている人間はほとんどが法術施行者と言われている。



公言している人間とそうでない人間もいるが、どうやら法術施行者は独自の発想や創造力を持っておりカリスマ性を持つようだ。



法術産業で名を馳せている著名人は、これまでの常識を覆しトップまで上り詰めたことがそれを物語っている。











私たちを”選ばれた人間”なんて言っているばかな奴らもいるけど、私は普通の生活がしたかった。



友達と疲れるまで遊んで、大人になったら好きな仕事をして、好きな人と結婚して、子供を産んで。



法術施行者として生きると決めるまでには相当な時間がかかった。



私に輝かしい未来なんてくるのだろうか。
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