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12話 ササリアの本音 1

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 私は考えを巡らせていた……なぜ、妹のササリアはこの段階でもボルドー様に忠実なのか? 先ほどのササリアの表情からも、私の味方でいてくれているのは明白だと思う。違ったら非常にショックだけれど。

 まずは、味方であることを前提で物事を考えると……何が見えてくるだろうか?


「フリージア嬢、大丈夫か? なにやら思い悩んでいるように感じられるが……」

「い、いえ……ジスパ様。私は大丈夫です」

「そうか? それなら良いのだが」


 いけないいけない、ジスパ様に余計な心配を掛けてしまったわ。ササリアの考えについてはもう少し様子を見た方が良いのかもしれないわね。


「兄上……何度も言うようで申し訳ないが、我が婚約者のササリアも婚約に問題はないと言っている。これ以上、詮索する必要があるのでしょうか?」


 ボルドー様がササリアの返答を聞いて自身満々なのが腹立たしかった。まあ、それを表に出すわけにはいかないけれど。ササリアの本音はともかくとして、ボルドー様が私の屋敷に謝罪に来なかったのは事実なのだ。これは王族として許されることではない。

 これを許してしまっていたら、王族の方々に仕える貴族は確実に減ってしまうだろうし。それから、妹に乗り換えただけという理由で、結果的には同じなのだから慰謝料は必要ないと判断したことも許されることではない。私達貴族令嬢は子を産む機械ではないのだから。そこには感情だってある。


「ボルドー、それではフリージア嬢に行った婚約破棄の件はどうするつもりだ? 聞くところによると、かなり罵声を浴びせた上に、慰謝料の支払いも拒否しているそうじゃないか」

「そ、それは……」

「それは……なんだ?」


 ボルドー様は再び、言葉を詰まらせていた。ジスパ様が優勢になった証と言えるかしら。それにしても、ササリアの狙いは一体、なんなのかしら? 私の役目は一早く、彼女の本音に気付くべきなのだと思えて来た。姉なのだから、妹の考えくらい正確に読み取れないといけないわよね。


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【ササリア視点】


 姉さまはおそらく、私がボルドー様に従い続けているから不思議に思っているはず。ジスパ王子殿下が来られているのは予想外だったけれど、そちらの方が都合が良いわ。きっと、フリージア姉さまなら私の真意に気付いてくれるはずだ。

 私の狙いは「身分の低いササリアはボルドー様の前で本音が言えない。本音を言えば後で厳しいお仕置きが待っている」という一点のみなのだから。実際に厳しいお仕置きが待っているわけではないけれど。そのように思わせるのが最大の狙いだ。
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