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43話 ネルファ王女殿下とルック兄さま 1

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「ルック伯爵令息……お忙しい中、私のわがままに付き合って頂き、感謝いたします」

「いえ、とんでもないことでございます、ネルファ王女殿下。私ども貴族は王家の方がの忠実なるしもべ……王女殿下のご希望がございましたら、なるべく優先するのが当然の判断であると心得ております」

「ルック様……ありがとうございます」


 ええと、何から言えばいいのだろうか? とりあえず、目の前のネルファ王女殿下は完全に恋する乙女状態になっていた。これは一瞬は、ネルファ王女殿下の冗談なのかとも思えたけど、どうやらそうではないらしい。

 ルック兄さまとネルファ王女殿下の関係は怪しい感じだけれど……これは、どうやら恋愛的なカップルというのは間違いなさそうね。

 ルック兄さまの幸せは、妹の私としてはやはり嬉しいものがある。ネルファ王女殿下との仲が、詳細にどの程度の関係性になっているのかは不明だけれど、微笑ましく思える。私は笑顔でネルファ王女殿下とルック兄さまとを、交互に見ながら笑っていた。


「何を笑っているの? レミーラ?」

 しまった……微笑んでいたことを、ネルファ王女殿下に見られてしまったようだ。私は必死に首を左右に振って答える。

「い、いえ……! なんでもありません、王女殿下!」

「そんなに焦っているのに、なんでもありませんなんてことはないでしょ? 何を考えていたの? ハッキリ答えなさい!」

「レミーラ、王女殿下に隠し事は許されないぞ? しっかりと思っていたことを口にするんだ。何なら大声で」

「え、ええ……!? ルック兄さまも何を言っているんですか……!?」


 ネルファ王女殿下はともかくとして、ルック兄さまは私の感じていたことを分かっているようだった。ニヤニヤとした表情で話しているから、ルック兄さまの考えはすぐに分かる。


「え、えっと……お二人は仲が良いんだなぁって思いまして……。妹の私としましては、安心できるというかなんというか……」

「なるほど、そんなことを考えていたのか。と、いうことらしいです、ネルファ王女殿下」

「え、ああ……そうなの。ま、まあ……いいんじゃないかしら……」


 ネルファ王女殿下は物凄くしおらしい態度を見せていた。完全にルック兄さまに惚れている態度と言って問題ないと思う。この短期間で、気難しそうなネルファ王女殿下のハートをゲットするなんて……「賢人」の能力は底知れない。

 とりあえず、このままの雰囲気ではネルファ王女殿下も大変だろうから、話題を変えることにした。ええと、どんな話題が良いかしら……? 確か、マグロ様が王家の管理下に置かれることを不満に思っているという情報を聞いていたから、そのことについての話題を振ろうかしら?

 随分と雰囲気は変わりそうだけれど、ネルファ王女殿下の助けにもなるだろうし、構わないわよね。
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