公爵様は幼馴染に夢中のようですので別れましょう

カミツドリ

文字の大きさ
上 下
24 / 59

24話 レミーラの誕生日 1

しおりを挟む

「私はどうしてあんなことを……!」

「あんなこと? マグロ様にキッパリと否定の言葉を口にしたことか? それともシエナ令嬢を否定したことか?」


 私はパーティーが終了し、シグレ様とはその場で別れることになった。それから貴族街にある屋敷へと帰還し……悶えている最中だ。その理由は……。

「違いますよ、ルック兄さま。シグレ様とダンスをしてしまったことです」

「そっちのことか」

「はい……」

「ふははは、流石は私の妹だと感心したぞ。周囲の貴族の関心を一気に集めたのだからな!」


 ドレーク兄さまは豪快に笑っているけれど、私は火を吹きそうな程に顔が真っ赤になっていた。なぜあんなことをしたのだろうか? 確かにシグレ様とのダンスは楽しかったし非常に光栄だったけれど……。


「ドレーク兄さま、そんなに笑わないでください!」

「ははは、済まないレミーラ。しかし、恥ずかしがるのは分かるが良かったんじゃないのか? シグレ王子殿下も楽しそうにされていたしな」

「それはそうかもしれませんけど……」



 先ほどのことだけど、はっきりと覚えている。

「本日は楽しかったよ、レミーラ。また一緒に催し物に参加したいものだな」


 と、おっしゃってくれたから……。


「レミーラもダンスはノリノリだったじゃないか。あの様子では、周りの貴族達はレミーラとシグレ王子殿下は婚約するのではないかと考えると思うぞ」

「そ、そこまで目立ってましたか……?」

「うむ、バッチリ目立っていた。これでヒュンケル伯爵家の地位はより盤石になりそうだな」

「こ、婚約……シグレ様と……」


 もちろん嫌な気は一切しないけど、恐れ多いという気持ちが強かった。王家の方と婚約だなんて……マグロ・フォルクス公爵と婚約するだけでも、相当に緊張したというのに。


「婚約については……その、お互いの気持ちもありますので、胸の中に閉まっておきます」

「と、いうことは、シグレ王子殿下がOKを出せば、すぐにでも……ということか」

「それは……分からないですが……」


 婚約に関して前向きな発言をすると、ルック兄さまとドレーク兄さまの二人は含み笑いを見せた。今日だけで何回見ただろう、その笑顔だ。怪しい……。


「そういえば……レミーラの誕生日はもうすぐじゃなかったか?」

「あ、そういえば……」


 婚約解消やマグロ様との一件があったのですっかり忘れていたわ。去年は大きなパーティーの実施はせずに、身内だけでの簡素なものにしたんだっけ。今年はどうなるのかしら?


「去年のレミーラの誕生会はなかったも同然だったからな。今年はすこし盛大に執り行うか」

「兄さま、お気持ちは嬉しいですが……」

「ふふふ、マグロ様やシエナ令嬢も呼んでな」


 あ、これは絶対に良からぬことを考えているわ……何をするつもりなのだろうか? 私の誕生日会となると、今日のパーティーのようにとはいかない。周囲は敵だらけということになる。なんだか、その辺りも含んでいそうね……。
しおりを挟む
感想 270

あなたにおすすめの小説

どーでもいいからさっさと勘当して

恋愛
とある侯爵貴族、三兄妹の真ん中長女のヒルディア。優秀な兄、可憐な妹に囲まれた彼女の人生はある日をきっかけに転機を迎える。 妹に婚約者?あたしの婚約者だった人? 姉だから妹の幸せを祈って身を引け?普通逆じゃないっけ。 うん、まあどーでもいいし、それならこっちも好き勝手にするわ。 ※ザマアに期待しないでください

拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら

みおな
恋愛
 子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。 公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。  クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。  クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。 「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」 「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」 「ファンティーヌが」 「ファンティーヌが」  だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。 「私のことはお気になさらず」

【完結】大好きな貴方、婚約を解消しましょう

凛蓮月
恋愛
大好きな貴方、婚約を解消しましょう。 私は、恋に夢中で何も見えていなかった。 だから、貴方に手を振り払われるまで、嫌われていることさえ気付か なかったの。 ※この作品は「小説家になろう」内の「名も無き恋の物語【短編集】」「君と甘い一日を」より抜粋したものです。 2022/9/5 隣国の王太子の話【王太子は、婚約者の愛を得られるか】完結しました。 お見かけの際はよろしくお願いしますm(_ _ )m

婚約破棄された公爵令嬢は本当はその王国にとってなくてはならない存在でしたけど、もう遅いです

神崎 ルナ
恋愛
ロザンナ・ブリオッシュ公爵令嬢は美形揃いの公爵家の中でも比較的地味な部類に入る。茶色の髪にこげ茶の瞳はおとなしめな外見に拍車をかけて見えた。そのせいか、婚約者のこのトレント王国の王太子クルクスル殿下には最初から塩対応されていた。 そんな折り、王太子に近付く女性がいるという。 アリサ・タンザイト子爵令嬢は、貴族令嬢とは思えないほどその親しみやすさで王太子の心を捕らえてしまったようなのだ。 仲がよさげな二人の様子を見たロザンナは少しばかり不安を感じたが。 (まさか、ね) だが、その不安は的中し、ロザンナは王太子に婚約破棄を告げられてしまう。 ――実は、婚約破棄され追放された地味な令嬢はとても重要な役目をになっていたのに。 (※誤字報告ありがとうございます)

【完結】亡くなった人を愛する貴方を、愛し続ける事はできませんでした

凛蓮月
恋愛
【おかげさまで完全完結致しました。閲覧頂きありがとうございます】 いつか見た、貴方と婚約者の仲睦まじい姿。 婚約者を失い悲しみにくれている貴方と新たに婚約をした私。 貴方は私を愛する事は無いと言ったけれど、私は貴方をお慕いしておりました。 例え貴方が今でも、亡くなった婚約者の女性を愛していても。 私は貴方が生きてさえいれば それで良いと思っていたのです──。 【早速のホトラン入りありがとうございます!】 ※作者の脳内異世界のお話です。 ※小説家になろうにも同時掲載しています。 ※諸事情により感想欄は閉じています。詳しくは近況ボードをご覧下さい。(追記12/31〜1/2迄受付る事に致しました)

本日より他人として生きさせていただきます

ネコ
恋愛
伯爵令嬢のアルマは、愛のない婚約者レオナードに尽くし続けてきた。しかし、彼の隣にはいつも「運命の相手」を自称する美女の姿が。家族も周囲もレオナードの一方的なわがままを容認するばかり。ある夜会で二人の逢瀬を目撃したアルマは、今さら怒る気力も失せてしまう。「それなら私は他人として過ごしましょう」そう告げて婚約破棄に踏み切る。だが、彼女が去った瞬間からレオナードの人生には不穏なほつれが生じ始めるのだった。

【完結】婚約破棄はしたいけれど傍にいてほしいなんて言われましても、私は貴方の母親ではありません

すだもみぢ
恋愛
「彼女は私のことを好きなんだって。だから君とは婚約解消しようと思う」 他の女性に言い寄られて舞い上がり、10年続いた婚約を一方的に解消してきた王太子。 今まで婚約者だと思うからこそ、彼のフォローもアドバイスもしていたけれど、まだそれを当たり前のように求めてくる彼に驚けば。 「君とは結婚しないけれど、ずっと私の側にいて助けてくれるんだろう?」 貴方は私を母親だとでも思っているのでしょうか。正直気持ち悪いんですけれど。 王妃様も「あの子のためを思って我慢して」としか言わないし。 あんな男となんてもう結婚したくないから我慢するのも嫌だし、非難されるのもイヤ。なんとかうまいこと立ち回って幸せになるんだから!

わたしがお屋敷を去った結果

柚木ゆず
恋愛
 両親、妹、婚約者、使用人。ロドレル子爵令嬢カプシーヌは周囲の人々から理不尽に疎まれ酷い扱いを受け続けており、これ以上はこの場所で生きていけないと感じ人知れずお屋敷を去りました。  ――カプシーヌさえいなくなれば、何もかもうまく行く――。  ――カプシーヌがいなくなったおかげで、嬉しいことが起きるようになった――。  関係者たちは大喜びしていましたが、誰もまだ知りません。今まで幸せな日常を過ごせていたのはカプシーヌのおかげで、そんな彼女が居なくなったことで自分達の人生は間もなく180度変わってしまうことを。  体調不良により、現在感想欄を閉じております。

処理中です...